Vol13-4
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5産総研TODAY 2013-04馬田 一 委員 (JFEホールディングス株式会社 代表取締役社長)山田 英委員 (アンジェスMG株式会社 代表取締役社長)Alain Fuchs 委員 (国立科学研究センター 会長、フランス)まず、専門家からみても価値の高い産総研の仕事が果たしてどれだけ伝達されているかという点です。公的な研究機関ですので、一般の方にもわかってもらうことが、とても大事だと思います。特にアメリカの社会を見ますと、インタープリターという、要するにマスコミでもない、でも本の執筆や宣伝により啓発をする文化があります。しかし、そういう機能が日本にはありません。ですので、いかにしてPRするかということが重要だと思います。2つ目ですが、ヘルスケア領域というのは厚生労働省という極めて規制に強い規制当局が厳然としてある中で、厚生労働省がヘルスケア産業の活性化などプロモーション役を演じることは制度上難し自国で私たちがどういう期待を受けているか、日本との比較などについて申し上げます。「産業を元気にする」というトピックはわが国でも同じ言葉で語られています。フランスでは科学技術の移転の力強さ、速さが十分とは言えません。私たちは産業界と共同の研究拠点を築くことについて多く議論しています。今日話し合われたような、オープンイノベーションハブ、融合研究、大規模な連携研究拠点などに近いものです。そして私たちは、克服すべき障壁を見定めることに努力しています。例えばアカデミアから応用研究、産業界への研究者の循環などです。これが難しいのいと感じています。また、厚生労働省には、年金という大事な課題をかかえ、研究開発に余力をもって投じるような余裕はないというのも現実です。そうしますと、経済産業省所管の産総研がヘルスケア領域の産業育成に関わることを本格的に考えていくことが、これからますます重要と思っております。アメリカには国立衛生研究所(NIH)という大きな研究所があり、2万人規模の研究者がいて多くの予算を使っていますが、それを見るたびにいつも日本はこれでいいのだろうかと思います。産総研の人員、予算は少ないと思っています。資源のない日本ですので、研究開発をさらに強化するという何らかの、もちろん根拠をもって取り組んでいくことが必要ではないかと感じまは、研究者の意識の問題でもあるためです。さまざまなインセンティブを用意しても、研究者はなかなか乗り気にならない。これがフランスの現状です。日本でもこれに近いのではないかと思います。日本政府もそうかと思いますが、フランス政府は、研究開発への投資がGDP成長、経済成長、雇用創出などに結びつく投資につながることを期待し、一方、温暖化問題などのグローバルな課題解決について科学技術へ期待を寄せています。これら2種類の期待は必ずしも常に整合するわけでありません。温暖化問題について研究することが、研究をしている国での雇用創出に直結するとは限りません。 す。それから、人材ですが、女性の登用、海外の人材の活用に関して、例えば発生学の領域では女性の研究者が世界的にも大活躍しているということもあり、そういった観点から研究者の人材の登用というのも考える時期に来ているのではないかと思います。成果を出すためにどういう人材を登用するか、この仕事を任せたら絶対成功するという人材を的確に適時に見つけるような形で、これからは人材の登用を多角的に見ていかなければならないと考えます。産総研が来年設置予定の福島再生可能エネルギー研究開発拠点についてとても興味深く伺いました。同拠点では、21世紀のエネルギー課題と、雇用創出、GDP成長といった社会的な期待が整合されています。この事例は、本日提案されたオープンイノベーションハブとなる非常に貴重なものです。最後に、もう1つ重要な点を指摘します。科学技術の進歩には、社会への波及効果があるということです。また科学技術上の成果をあげても産業競争力などに結びつかない、逆効果になることもあり第4期科学技術基本計画では、平成23年度から5年間のわが国の科学技術の方針が策定され、科学技術イノベーションにより経済成長を目指すことが謳うたわれています。また、この計画と表裏一体をなす、わが国の経済成長戦略は軸足が定まらず、進捗が遅れています。産総研が関与している研究開発テーマを、リーダーシップをもって牽けん引し、計画を達成していただきたいと思います。日本の産業を元気にするには、現在世界のトップランナーである分野の技術をさらに磨き、トップを維持することとイノベーションによる経済成長を長期にわたって実現することが必要です。産総研の役目は研究開発の成果を社会に還元することです。この3年間で方針が浸透し、成果も出だしたのでさらにレベルアップしてください。わが国の公的研究開発資金や人材は、他の先進国と比べて少なくなっています。オープンイノベーションの活性化を図り、もっと民間、海外の資金と人材を活用することを考えてください。また、産総研ではさまざまな国内外の基準作りに取り組んでいます。新しいビジネスで障害になるのはさまざまな規制です。科学技術に関する誤った規制は論証した上で正しく見直し、より早くビジネスが立ち上がるための貢献を期待します。
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