Vol13-4
4/20
4産総研TODAY 2013-04関口 和一 委員 (株式会社日本経済新聞社 論説委員兼産業部編集委員)庄田 隆 委員 (第一三共株式会社 代表取締役会長)が書けない研究はなかなか継続しにくいと思いますが、日本の産業競争力という観点からは非常に憂慮すべき事態だと考えております。そこで、産総研においては、日本の産業の育成あるいは競争力強化、それから中小企業の支援を含めて、アカデミアでは取り上げなくても産業界が必要とする分野、例えば化学工学、高分子、金属、繊維などをしっかりと担うことによって日本の産業競争力強化に努めていただきたいと思います。産総研が大学・産業界とも一緒になるという意味でとても感銘を受けたのは、「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーションズ(TPEC)」の共同プロジェクトが量産化を視野に入れたロードマップを作って研究を進めているという点です。引き続き、こうした“場づくり”としての産総研の活動に大いに期待しています。また、ライフサイエンス分野でも、ぜひとも産総研に同じ趣旨の役割を果たしていただきたいと思います。例えばiPS細胞研究も、産業界も一緒になって、産総研中心で、ロードマップのようなものを作るような形で産業につなげていくことが大事ではないかと思います。もう1つの産総研への期待は、人材育成の側面です。今、ライフイノベーション分野では、“ビッグデータ”から何を読み取るのかという意味で、“バイオインフォマティクス”の重要性がとても強く言われております。しかし、バイオインフォマティクス分野には、なかなか高度人材がいないというのが現状です。この分野の高度人材育成という側面でも、産総研が果たしていく役割への期待は大きいと思います。最後に、今まで日本のライフサイエンス分野はどうしても高齢者向けという概念が強かったのですが、これからは次世代という視点も極めて重要です。新生児、小児期からの健康データをしっかり押さえていくという意味では、産総研がもっているライフサイエンス分野以外の分野の技術が重要になってくると考えます。例えば、計測機器などを活用して健康データを追跡することにより、予防医療、先制医療につなげていくことができます。ここで申し上げたことを含め、研究開発の分野が広いという産総研の強みをぜひとも活かしていただきたいと考えます。日本の産業競争力が落ちた理由について、特に研究開発に関連して申し上げると、2つあると思います。1つは、デジタル化対応の遅れです。90年代後半から、インターネットを中心に情報通信分野で大きな技術のパラダイムシフトが起き、さまざまな研究開発や製造業にも影響を与えていますが、それに日本が乗り遅れたという点です。もう1つは、日本は基礎研究や要素技術開発を重視し、それで成果を上げてきたと思うのですが、今抱えている問題は、そうした技術を実際に商品化して市場に出す能力が落ちてしまっている、という点です。それに対しては、3つやらなければいけないことがあると思います。1つはダイバーシティの問題です。日本の研究開発の現場は、理科系男子のカルチャーです。理科系男子は、物事をリニアに発想し、1つの流れができたら、それをよりよくしていこうという形の研究開発が多いと思います。そうすると、デジタル化のようなパラダイムシフトが起きたときに、ついていけないという問題が起きます。変化に早く気づくためには、もっと外国人や女性の研究者を入れていくことが必要でしょう。違った角度から物を見ることで新しい情報や気づきが入り、新しいイノベーションや技術革新が起きると思うのです。そのためには、多様性をどうやって取り入れていくか、というのが1つ目です。2つ目は、もっている技術を商品化していくプロジェクトマネジメントの力です。研究開発とは少し違うと思いますが、それができる人材を日本として育てていくことが大きな課題だと考えます。場合によっては、産総研が、民間企業や大学を巻き込んで、プロジェクトにまとめていく必要があるのではないかと思います。3つ目が、ソフトウエア人材です。日本はハードウエアで成功しましたが、アップルの成功を見ると、これまでハードウエアで提供してきたものをソフトウエアで提供し、成功しているわけです。日本は、機械、精密、自動車などパラダイムが変わっていない産業はいまだに強いですが、家電やITのようにパラダイムが変わったところは競争力を落としていると思います。つまり、日本で今必要なのはソフトウエア人材をもっと育てていくことです。その点で、日本の大学の工学部系は非常に弱いと思います。もっとソフトウエアに取り組むという意味で、産総研もソフト分野をより強化していく必要があると思います。それから日本の研究開発のテーマ選びは、論文作成を第1に考え、どちらかと言うと、ほかの人が関心をもたないような個別のニッチな研究に入ってしまいがちです。そうではなく、市場全体に目配りをして、どこに本当の需要があるかをとらえ、それを実際にお客さんが欲しい形にまとめ上げていくことが大切です。そうした力をつけるための役割を産総研には期待したいと考えます。ベーションのニーズが高まってきているという点です。ところがこれらの分野では、大学を中心としたアカデミアの基礎研究が以前よりも弱くなってきております。アカデミアは、主に論文で研究者の業績を評価するため、論文
元のページ