Vol13-4
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11産総研TODAY 2013-04Research Hotline微量軽元素のナノ構造XAFS解析超伝導検出器で明らかにする半導体SiCのナノ微細構造大久保 雅隆おおくぼ まさたか計測フロンティア研究部門研究部門長(つくばセンター)計測技術を分析技術に仕上げて普及させることをミッションとしています。開発した計測装置を公開して、研究開発における計測ニーズに対応します。成功事例を蓄積して、課題解決方法を提示できる分析技術として仕上げます。超伝導検出器をX線分析や、質量分析に応用し、普及のために、超伝導センサIEC国際標準化を進めています。ドーパント計測の課題炭化ケイ素(SiC)は、一般的な半導体よりバンドギャップが広く、化学的安定性、硬度、耐熱性などに優れているため、高温動作可能な次世代の省エネルギー半導体として期待されています。しかし、ドーパント*である軽元素がSiC結晶中のシリコン(Si)サイト、あるいは炭素(C)サイトをどのように占めているかを計測する手段がありませんでした。ドーパントの格子位置を決定するには、X線吸収微細構造(XAFS)分光法が有用ですが、大量に存在するSi、Cと微量軽元素のドーパントの特性X線を識別することはできませんでした。窒素ドーパントの微細構造解析私たちは、超伝導計測技術を活用したX線吸収微細構造分光装置(SC-XAFS)の開発に取り組み、2011年に装置を完成させました。この装置で用いられている超伝導X線検出器は、半導体X線検出器の理論限界を超える分解能をもち、SiC中の窒素(N)ドーパントのXAFSスペクトルを測定できます。今回、SC-XAFSによる微量NドーパントのXAFSスペクトルと第一原理計算との比較から、Nの格子位置を決定しました。図(a)は、超伝導アレイ検出器の各素子のエネルギー分解能値をヒストグラムにしたものです。この検出器は半導体の50 eVという限界を超える最高10 eVの分解能をもち、大量にあるCと微量のNを識別し(図(b))、第一原理計算**との比較が可能な精度のXAFSスペクトルを取得することができました。詳細は、参考文献を参照下さい。また、500 ℃の温度でNドーパントをイオン注入したSiCウエハー、およびイオン注入後に1,400 ℃と1,800 ℃で熱処理したウエハーのXAFSスペクトルを測定しました。実験結果は、NがCサイトを占めていると仮定した第一原理計算結果と一致しており、Nは、イオン注入された直後から、ほぼ完全にCサイトを占めていることがはじめて確認されました。SiCへのドーピングでは500 ℃という高温でのイオン注入が必要であるという経験的事実は知られていましたが、その理由は、高温での熱処理前に、NがCサイトを占めておくことと、イオン注入直後の欠陥密度を低く抑える必要があることだと明らかになりました。今後の予定今後はSiCに加えて微量軽元素が機能発現を担っているほかのワイドギャップ半導体や、磁性材料などの微細構造解析に応用していきます。さらに、SC-XAFSがカバーできる不純物濃度領域を拡大していく予定です。関連情報:● 共同研究者志岐 成友、浮辺 雅宏、松林 信行(産総研)、北島 義典(KEK物質構造科学研究所)、長町 信治(イオンテクノセンター)● 参考文献[1] M. Ohkubo et al.: Sci. Rep. 2, 831 (2012): doi:10.1038/srep00831.[2] 志岐 成友: 産総研TODAY, 12(3), 14 (2012).● 用語説明*ドーパント:デバイスの動作に必要な電気特性を発現させるために導入される微量不純物元素。**第一原理計算:計算対象となる物質系を構成する元素の原子番号と系の構造を入力パラメータとし、実験結果を参照しないで系の電子状態を求める計算手法。● プレス発表2012年11月15日「半導体炭化ケイ素(SiC)に微量添加された窒素ドーパントの格子位置を決定」●この研究開発は、原子力試験研究費の支援を受けて進めてきました。SC-XAFSは、高エネルギー加速器研究機構 放射光科学研究施設(KEK PF)に設置され、ナノテクノロジープラットフォーム事業でユーザーに公開されています。図(a)酸素の特性X線に対する超伝導X線検出器のエネルギー分解能図(b)SiC中の微量ドーパントであるNを検出した例大量に存在するSiC中のCのピーク(C)と微量なNのピーク(N)を識別することができる。図(b)の挿入図は縦軸がリニアスケールとなっており、Nは微量であることがわかる。写真 3.8×3.4 cm超伝導アレイ検出器内のピクセル数エネルギー分解能[eV]005101520102030図(a)蛍光X線収量[カウント]1061051041031021020040060002004006008001000蛍光X線のエネルギー[eV]CNCNO図(b)
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