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6産総研TODAY 2013-02http://unit.aist.go.jp/nri/index_j.html このページの記事に関する問い合わせ:ナノシステム研究部門固体高分子形燃料電池(PEFC)についてPEFCは燃料電池の一つであり、さまざまな燃料電池の中でも小型化が可能であること、起動がスムースであることなどの理由により、自動車や携帯端末、家庭用の電源としての応用が期待されています。PEFCでは燃料である水素ガス(H2)が燃料極でプロトン(H+)と電子に分かれ電子が電流として移動します。またプロトンは高分子電解質膜を通って空気極に移動し、ここで酸素と反応し最終的には水が生成されます。現在PEFCはクリーンな動力源として注目されていますが、いまだ高価であり、さらなる開発が必要です。ナフィオン®のシミュレーションPEFCに用いられる高分子電解質膜としては、デュポン社の製品であるナフィオンが有名です。ナフィオンは化学的、機械的安定性が高く、優れたプロトン伝導特性を示しPEFC用の電解質膜に適しています。PEFCの性能に影響を及ぼすナフィオン中でのプロトン伝導機構に関してはさまざまな研究が行われてきており、いくつかのモデルが提案されていますが、その分子レベルでの詳細なプロトン伝導機構は明らかではありません。それらの詳細を調べるため、ナノシステム研究部門で開発したFEMTECKというプログラムを用いてシミュレーションを行いました[1][2]。図1はシミュレーション結果を可視化したものです。丸一つ一つは原子を表しており、シミュレーションの結果から電解質膜中の水分子やプロトンの様子を“直接”見ることができます。実験結果からプロトンの伝導にはグロータス機構*が提案されていました。私たちのシミュレーションの結果もこれをサポートするもので、実際にプロトンがジャンプして動くことをシミュレーションでも確認できました。一方、膜が低含水率の時はビークル機構**が提案されていました。私たちのシミュレーション結果ではビークル機構のような単純な形でプロトンが移動しないことがわかり、これがこれまでのプロトン伝導モデルではいくつかの実験結果を説明できなかった原因であることを明らかにしました。さらに、シミュレーションの結果から一次元の水のネットワークを作ると少ない水の量で高いプロトン伝導を達成できるとの知見を見いだすことができ、このような知見は今後新しい膜の設計に有益になると考えられます。アルカリ電解質形燃料電池(AMFC)用電解質膜のシミュレーションPEFCの開発が行われる一方で、イオン伝導体がプロトンでなく水酸化物イオン(OH−)であるAMFCの開発も現在活発に行われています。AMFCのメリットとしては高価な白金触媒を用いなくてもよいので、白金触媒を多用するPEFCに比べ低コスト化が原理的に簡単である点が挙げられます。しかし、AMFCではナフィオンのよう燃料電池用高分子材料のシミュレーション図1 ナフィオン膜中での水分子およびプロトンの様子。左側は低含水率、右は高含水率の時原子の色は、赤:酸素、白:水素、緑:フッ素、黒:炭素、黄:イオウ。ナフィオンの骨格の部分は薄く表示してある。四角い箱は計算の時に設定したユニットセル。プロトンが移動している所

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