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4産総研TODAY 2013-02http://unit.aist.go.jp/nri/index_j.html このページの記事に関する問い合わせ:ナノシステム研究部門未利用排熱の活用技術の現状省エネ技術を駆使しても不可避的に発生してしまう排熱を有効利用することにより、エネルギー利用効率をさらにあげることが期待できます。そのような未利用排熱の活用技術として重要なものは、断熱技術や蓄熱技術、ヒートポンプ、熱電変換技術などです。これらの多くの技術では部材性能がシステム性能の律速となっていて、革新的な部材の開発が成されればこれら技術の飛躍的向上が予想されます。候補部材の探索において理論・シミュレーションを有効に活用することが大いに期待されています。フレキシブル熱電材料最近、産総研では有機材料を用いたフレキシブルな有機熱電シートを開発しました[1] 。これらの有機熱電シートには、発熱体との接触面の大面積化によるモジュール全体としての性能向上や、手に入れ易い材料を用いているために大量生産が容易であるといった利点があります。モジュールを高温と低温領域で挟んだ時、熱が電力に変換されますが、その変換効率は、熱電変換性能指数ZTという物質材料固有の量で特徴づけられます。Tは高温と低温領域の平均温度です。具体的には、電子からの寄与(電気伝導度G、ゼーベック係数 S、電子熱伝導度κe)と、分子・格子振動からの寄与(フォノン熱伝導度κph)を用いてZT = S2G/(κe+κph)と表されます。大きなZTを得るためには①フォノン熱伝導度κphを小さくし、②残りの電子からの寄与を最大化することが必要です。有機材料の場合、分子は金属電極の格子振動と比べて、分子振動の振動数が高く、両者の振動数に大きな差が生じます。振動数の観点からは材料と電極との接触が悪く(電極効果)①を満たしやすいという利点があります。近年、量子輸送理論に基づいてゼーベック係数、電気伝導度、電子熱伝導度、さらにはフォノン熱伝導度を第一原理的に計算することが可能となっています。最初の3つは、まず、2電極間に挟まれた試料を電子が透過する確率τを電子のエネルギーEの関数として求め、これからそれぞれの量を計算します。同様にフォノン透過確率Tphを用いてフォノン熱伝導度を計算することができます。現状の計算機性能とソフトウェア性能では計算サイズは数十ナノメートル程度の薄膜に限定されます。バルク体の性質は膜厚依存性を外挿して厚膜体の性質から推定します。従来の計算では、バンド計算からS、古典ボルツマン方程式からGとκe、古典分子動力学計算からκphというように、ばらばらな理論適用による近似量を集めてZTを求めていましたが、量子輸送理論による第一原理計算では、一貫した理論と近似を用いてZTを評価できます。最近の理論計算から、透過確率のエネルギー依存性カーブの急峻な肩の位置に電極のフェルミ準位が位置する時にZTが最大化するということがわかりました(図1)。これはゼーベック係数が、透過確率の未利用熱の活用を目指したフレキシブル熱電材料と蓄熱・断熱材料の理論・シミュレーション設計図1 電子透過確率τとゼーベック係数Sの2乗の電子エネルギー依存性。電極フェルミ準位が透過係数が平坦な領域(点線)から肩の急激な変化領域(破線)にシフトしたとき、ゼーベック係数の増大によりZTが増加することがわかる。S2(EF)(E)電子のエネルギー

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