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3産総研TODAY 2013-02http://unit.aist.go.jp/nri/index_j.html このページの記事に関する問い合わせ:ナノシステム研究部門新規磁性材料開発へ向けた第一原理電子状態計算プログラムQMAS背景国内総電力の50 %以上はモーターによって消費されており[1]、高性能磁石の開発は低消費電力社会の実現のための重要課題に位置づけられます。また近年ハイブリッドカーや電気自動車に用いる磁石材料の需要が急速に伸びています。しかし最強磁石のネオジム(Nd)磁石は温度特性が悪く、自動車での使用温度(200 ℃程度)では必要な保磁力が得られません。耐熱性を改善するためにジスプロシウム(Dy)を添加しますが、これにも問題があります。希土類の中で比較的豊富なNdと比べてDyは産出量が1桁小さい希少金属で、産出国が偏在しているため元素戦略上の問題も抱えています。また耐熱性が改善される一方で、性能指数は悪化してしまいます。磁石材料の量子シミュレーション磁石特性を特徴づける物性値として、磁化、磁気異方性、キュリー温度が挙げられます。ネオジム磁石の主役は鉄(Fe)とNdの電子です。前者が大きな磁化の主因で、後者が強い磁気異方性の源泉です。キュリー温度はFe-Fe間、Fe-Nd間の交換結合により決定づけられます。これらの物性パラメータに加えて、磁石の性能を決定する保磁力は材料パラメータで、粒界の構造・磁気特性によって支配されています。産総研で開発してきたQMAS(Quantum MAterials Simulator, http://qmas.jp/)は密度汎関数理論に基づいた第一原理計算プログラムで、遷移金属化合物の磁気パターンと磁気異方性、酸化物界面の構造と電子状態など、これまで多くの物質系に適用されてきました。平面波基底とPAW法を採用しており、数値的に高精度であること、構造最適化に適していること、磁気異方性の起源であるスピン軌道相互作用が扱えること、など種々の特長を備えています。ナノシステム研究部門は、経済産業省「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」プロジェクトに参画し、計算科学研究を担当しています。文部科学省・元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>磁石領域では電子論研究の中核拠点に選定されています。希土類磁石の磁気物性値の第一原理計算、特にその界面系の磁気異方性を基に保磁力の温度依存性の支配要因を解明し、自動車で使用可能な脱/省Dy 希土類磁石の開発を目指します。ナノシステム研究部門ダイナミックスプロセスシミュレーショングループ兼エレクトロニクス材料シミュレーショングループ三みやけ宅 隆たかしエレクトロニクス材料シミュレーショングループ石いしばし橋 章しょうじ司エネルギー材料シミュレーショングループ手てづか塚 明あきのり則密度汎関数理論に基づいた第一原理計算によるネオジム磁石の電子スピン密度赤と青がスピン密度の等高面で、色は符号の違いを表す。黄色、灰色、黒の玉は、それぞれネオジム、鉄、ホウ素である。ネオジムと鉄の周囲でスピンが逆向きである様子が確認できる。関連情報[1] 新機能素子研究開発協会のデータでは、2005年の総電力使用量の57.3 %がモーターに消費されている。(日経エレクトロニクス2011年6月23日)
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