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2産総研TODAY 2013-02http://unit.aist.go.jp/nri/index_j.html このページの記事に関する問い合わせ:ナノシステム研究部門2012年はアラン・チューリングの生誕100年にあたり、国内外で多くの記念行事が開催されました。チューリングは英国が生んだ天才的な数学者で、計算機科学分野のノーベル賞と言われるチューリング賞にその名を残しています。今日のコンピューターの原型となるチューリング・マシンの考案から生物の形づくりを解き明かすチューリング構造の発見に至るまで、その業績は多岐にわたっています。チューリングが活躍した時代の計算機は甚はなはだお粗末なものでしたが、計算速度はその後指数関数的に増大し、2012年には1京回/秒に達して、科学技術はビッグデータの時代へと突入しました。飛躍的に進歩したシミュレーションによって科学技術の質そのものがいま大きく変わろうとしています。分子・原子やその集団を対象とするナノテクノロジーは、計算科学や理論シミュレーションの恩恵を享受できる分野の一つです。理論シミュレーションと実験・開発現場との協働は、今世紀に入ってますます重要性を帯びるようになりました。このトレンドを受けて2010年に設立されたナノシステム研究部門は、計算科学とナノテクノロジーの融合をミッションとして、さまざまな分野の研究開発に取り組んでいます。この特集では、材料開発における理論シミュレーションの最新成果をご紹介します。言うまでもないことですが、理論シミュレーションにおいては、プログラムや計算アルゴリズムの開発のみならず、物理モデルの精緻化やパラメータ値の設定、計算結果の評価なども不可欠です。また、高分子や液晶に代表されるソフトマターでは、大胆な粗視化を行ってその本質に迫らねばなりません。これらはいずれも研究者の創意と協働の見せ所でもありますので、成果とあわせてご高読いただければ幸いです。コモディティ化(汎用品化)の影響を受けにくい部素材開発分野の重要性が増すにつれ、材料探索指針の導出を理論シミュレーションに期待する傾向が産業界でも大きくなっています。産業競争力懇談会(COCN)の2012年度のテーマの一つとして「材料シミュレーション」が大きく取り上げられていることもその一例でしょう。一方で、この分野の理論シミュレーションは定型化しておらず、基礎的な課題を解決しながら、同時に産業普及を図らなければいけないという状況にあります。計算シミュレーションの理論手法はこれまで、大学・研究機関を中心に発展してきましたので、企業事業部の現場でのリアルな問題との乖かいり離が時として問題になります。そこで、企業との共同研究の経験を豊富にもつと同時に、基礎研究にも大きなポテンシャルをもつ産総研にノウハウを集積すると同時に、現実の産業ニーズなどを踏まえた“泥臭い”問題に真面目に取り組む産総研をハブとして計算シミュレーションの産業普及を行っていく必要があります。さらに、スーパーコンピューター(スパコン)“京”に係る文科省プロジェクト“HPCI戦略分野2「新物質・エネルギー創成」~基礎科学の源流から物質機能とエネルギー変換を操る奔流へ~”の協力機関として同プロジェクトの産官学連携推進を担い、同時に多くの課題研究を支えていることから、産総研が果たすべき役割は非常に大きいと考えております。*産総研は以下の課題を担当している;①電子相関の強い現実物質の新機構解明と制御法開拓に関する研究 (三宅・分担)②新材料探索 (石橋、土田・分担)③ポリモルフから生起する分子集団機能(篠田・分担) ④太陽電池における光電変換の基礎過程の研究と変換効率最適化・長寿命化にむけた大規模数値計算 (宮本・分担)⑤高性能リチウムイオン電池の開発に向けた基礎的研究(大谷・代表)⑥ナノ構造体材料における高効率非平衡エネルギー変換過程とナノ構造創製の理論シミュレーション(浅井・代表、中村・分担)。産総研は産官学連携小委員会の委員長機関でもある。計算シミュレーションの産業普及とスパコン「京」の活用ナノシステム研究部門における理論シミュレーションと実験との協働ナノシステム研究部門研究部門長山やまぐち口 智ともひこ彦ナノシステム研究部門副研究部門長浅あさい井 美よしひろ博
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