Vol13-2
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18産総研TODAY 2013-02東北産学官連携センターイノベーションコーディネータ 南なんじょう條 弘ひろしイノベーションコーディネータへの道小さいころから研究者になることが夢でした。念願がかなってからは大きなインパクトを目指し、着実に論文を発表してきました[1][2]が、後進に道を、との話から連携の仕事を始めました。生涯一研究者を目指していましたから当初はがっかりしましたが、連携の仕事の中にはプロジェクトマネージャーになれる産総研の内部制度「戦略予算」や産学官連携が優遇される「イノベーション拠点立地推進事業」など、コーディネータがその能力を発揮することにより、良い提案・強い提案が可能な制度が次々と制定されるようになってきました。実際に自分が手を動かせないもどかしさはありますが、東北の企業と全産総研をつなぐ「東北コラボ100」連携事業での企業訪問や学会参加などから得られるアイデアやコーディネータならではの俯ふかん瞰的知見を選りすぐりの研究者に紹介することができます。言いかえれば、実際に手を動かさないだけで、研究者とほとんど同様のことができる時代がやってきました。さらに価値創造に向けて全産総研の研究者2,300名の中から、あるいは企業・大学から必要な研究者を集めて産学官連携の先導プロジェクトを立案することが研究者よりもやりやすくなっています。コーディネーション活動の基盤上記の考えに至った最初の大仕事は、分野研究戦略に従ってコーディネータらが技術研究組合TASCグラフェン事業部を分野研究企画室とともに立ち上げたことでした。レアメタルを使わない透明導電膜として世界中が開発競争にしのぎを削っているグラフェンを日本においても大規模プロジェクトとして推進することになりました。それに応募すべく、コーディネータが多くの企業の方々と面談し、分野研究企画室や研究ユニットと討議しながら、特に高い開発ポテンシャルをもち、グラフェンを低温で大量合成する技術を開発する志の高い企業と組合を作り上げました。その後はプロジェクトの方向性を討議し、参画組合員の持ち寄り研究ではなく、一本の太い幹を打ち出した提案骨子をまとめ上げることに成功しました。現在は二つのNEDOプロジェクトで図1に示すマネージャーと運営委員長・研究委員・発明委員として、世界に先駆けてグラフェンの実用化を目指しています。更なる飛躍に向けてコーディネートの基本はお見合いのセッティングですが、仲人と違うのは両者の特長技術をコーディネータ独自の視点で吟味し、一段と高い共同研究を企画することにあります。図2に示すように研究者は実験結果と理論に基づきボトムアップで研究を積み上げていくのに対し、企業は製品化や社会ニーズからのトップダウンに基づき開発を掘り下げていきます。方向が180度異なるベクトルの終点を一致させる提案は目利きコーディネータの腕の見せどころです。研究者上がりが、研究者魂を維持しながら、研究開発者とともに研究を推進することは研究者と全く同じ面白さを含んでいます。時には自分だけでは不可能な研究でさえ、精鋭を結集させて先頭を切って推進することも可能です。そんなコーディネータを大学も産総研も待ち望んでおり、研究者も効果的に研究に専念するために活用の価値を見いだし始めています。彼らの期待に応えるべく一層腕を磨いていきたいと思っています。このページの記事に関する問い合わせ:産業技術総合研究所東北センターhttp://unit.aist.go.jp/tohoku/liason/図1 技術研究組合TASCグラフェン事業部のプロジェクトマネジメント体制図2 シフト・ジャンプ終点の合致図3 グラフェン事業部研究委員会を終えて右から2人目が筆者テーマ①フレキシブルグラフェン透明導電フィルムの開発グループリーダーテーマ②高熱伝導性多層グラフェン放熱材の開発グループリーダーテーマ③グラフェン高品質化のための評価技術の開発グループリーダー参照http://www.tasc‐nt.or.jp/project/system.htmlプロジェクト本部本部長長谷川雅考副本部長佐々木毅、他○スーパーバイザー飯島澄男産総研ナノチューブ応用研究センター長○マネージャー南條弘産総研イノベーションコーディネータ技術研究組合TASCグラフェン事業部事業部長津下和永発明委員会運営委員会2012年12月現在の基盤研究テーマのみ記載研究委員会グラフェンの構造を示した拡大イメージ図連携提案ボトムアップトップダウン製品化シフトジャンプ参考文献[1] H. Nanjo et al.: Nature, 320, 516 (1986).[2] H. Nanjo et al.: J. Electrochem. Soc., 158, C379 (2011).
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