産総研レポート 2015
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06組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告組織統治んじてTIAの場で体現したものと言えるでしょう。今後、国家プロジェクトで最高性能を狙い、その成果をTPECに橋渡しして生産技術として仕上げ、企業での量産による事業化につなげるという戦略を描いています」社会実装が進む高耐圧インバータ ワイドギャップ半導体を用いたパワエレ研究ロードマップには、第1世代として中耐圧(1kV級)、第2世代として高耐圧(5kV級)、第3世代として超高耐圧(10kV級)の開発トレンドが盛り込まれています。いま実際に、どのような分野で実用化が進んでいるのでしょう。 第1世代の1kV領域は、家電、照明、IT機器などマーケットのかなりの部分を占めるボリュームゾーンです。ここ数年で家電用インバータをはじめ、IT機器電源、太陽光発電用パワーコンディショナなど、さまざまな製品に実装されて社会に送り出されています。 第2世代の5kV領域は、鉄道や産業機器などのインフラに使われます。すでに鉄道車両用のインバータについては、2012年に東京メトロ銀座線、2014年に小田急電鉄やJR山手線、そして2015年にはJR東海の新幹線に実装されました。また、自動車用インバータも2020年頃の普及を目指して開発が進んでいます。 「鉄道で画期的だったのは、東京メトロ銀座線の事例です。通常、デバイスの段階で電力ロス削減効果が大きくても、インバータ、電車システムへと段階が進むにつれて削減効果は小さくなっていきます。しかし銀座線の場合、最終の車輌システム段階でも約30%もの電力ロス削減を達成しました。それは、高耐圧かつ高速スイッチングを可能とした半導体デバイス搭載により、回生ブレーキシステムが発電した電気をフル活用できるようになったためです。つまり優れたパーツができたことで、電車のシステム設計まで変えることができたのです」 第3世代の10kV領域は、電力ネットワークへの実用が期待されますが、まだ開発すべき技術要素が多く残されています。「送配電系の遮断器にインテリジェント半導体素子を使えば、遠隔操作が可能になり、電力ネットワークの効率的な運用においても大きなメリットが得られるでしょう。もし架線切断事故が起きても、大停電に至らずにすむかもしれません。将来的なビジョンとしては、次世代スマートグリッドに活用できる技術開発を目指していきます」基礎研究を蓄積する重要性 工業技術院の基礎研究から始まり、いわゆる研究開発の“死の谷”を乗り越えて実用化を成し遂げた背景には、重要なポイントが2つあります。 1つ目は、基礎研究の蓄積です。「大学は基礎研究、産総研は橋渡しというように、画一的に役割分担することはできません。事実、私達が約40年近く続けてきたワイドギャップ半導体とそのパワエレ応用研究において、工業技術院の基礎的な材料研究の蓄積が極めて有効に働いています。それがあったからこそ、企業も産総研を信頼してくれたのだと思います。もし基礎研究の蓄積がなければ、実用化への道は拓けなかったでしょう」 そう語る奥村は、実用化と並行して“基礎研究の種まき”もしてきたと言います。「たとえば、ウェハの量産技術につながる基礎研究です。現在、SiC粉末からウェハを作る際、昇華法により高温下で結晶成長させていますが、これをSiと同じ溶液法(チョクラルスキー法)を使ってできないか研究を進めています。溶液法では、低コスト化の可能性が高いうえ、ドーピングがしやすい、結晶欠陥が極めて少ないなどのメリットがあり、大きな期待が寄せられています。」上流と下流をつなぐ技術の蓄積 死の谷を乗り越えた2つ目のポイントは、上流から下流まで日本発の技術を積み上げていったことです。パワーエレクトロニクス研究は、材料から始まり、ウェハ作成、ウェハ表面の薄膜成長、デバイス加工、回路のモジュール化、機器への応用など何段階もの積み重ねが必要となります。まず上流で安定したSiCウェハの供給がなされなければ、次の段階の素子開巻頭特集

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