産総研レポート
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豊富な色、光沢、手触りといった美しさはそのままに、環境に優しい新しい塗装技術が開発されました。今後、多様な製品へ利用されていくこと、そして医薬・食品などの他分野へ応用されることが期待されます。新しい塗装技術 私たちの身の回りにある工業製品であるパソコン、携帯電話、テレビ、冷蔵庫、車などは、すべて表面に塗装がなされています。従来の塗装法では、固形のポリマーを有機溶剤に溶かし塗料としたものを、さらに揮発性有機化合物(VOC)で希釈してスプレー塗装していました。この塗料をスプレーのノズルから噴射するときにVOCが拡散して大気や水に混ざり、人体に影響を及ぼすことが大きな問題になってきました。環境省から出されたVOC排出抑制制度では、平成22年度までにVOCを平成12年度比で3割程度削減する目標が示されています。全産業におけるVOC発生量のうち最多である33%を占めるのは塗装業界であり、なんとしてもVOCに代わる希釈溶剤で塗装を行う新技術の開発が求められていたのです。二酸化炭素で新しい塗装を目指す 多くの塗装業者が、VOCに代わる希釈溶剤としてまず注目したのは、環境を汚染しない「水」でした。しかし、塗装されるプラスチック製品は水をはじいてしまうので、塗装の前処理を施さなければなりません。宮城県内のある塗装会社でも、水による塗装を行うことになりましたが、2段階もある前処理が二酸化炭素(CO2)の使用により改善できるのではないかと、産業技術総合研究所に相談を持ちかけたのです。相澤主任研究員はこの話を受け、共同開発を開始しました。さらに、水性塗装の前処理に使うだけでなく、CO2そのもので塗装をしたらどうだろうかという革新的な提案をしました。液体塗料にCO2を高圧で溶かし込むことで、CO2で希釈してスプレー塗装するというのです。「塗料の多くは油からできています。通常は気体のCO2ですが、圧力を上げていくと意外とたくさん油に溶けるのです」。CO2はさらさらですので、CO2が溶け込むことでどろどろだった塗料の粘度が下がり、スプレー塗装することが可能になるはずと考えました。 はじめの頃は、様々な塗料について試してみるものの、スプレーすることすらできない日々が続きました。原因を分析し、条件検討をくり返すうち、とうとうCO2でスプレーすることが可能な塗料やその条件を見つけることができました。実験室レベルでは、この方法で5gまでスプレー塗装ができるようになったのです。実用化へのステップ 実用化のためには、装置の大容量化を行わなくてはなりません。そこで、エンジニアリングのプロフェッショナルである鈴木主幹研究員と川﨑研究員が開発チームに加わり、まずはCO2を溶かし込む方法を変更することにしました。これまでは、圧力容器の中で塗料とCO2の混合を行っていましたが、塗料とCO2を別々のポンプで供給し、装置の中で連続的に混ぜ合わせるようにしたのです。CO2と混合する際の最適条件は塗料ごとに異なりますが、配管内で混合することで条件制御の幅が大きく広がりました。また、大きな圧力容器を用意するのにかかるコストは決して低くはなく、この方法なら大きな容器を設置しなくても大量の塗料に対応できます。 CO2を塗料に溶かし混んだときに塗料の固形分であるポリマーが析出したり、CO2がうまく溶解せずに粘度が下がらなかったりすることがありました。これは、溶かす速度がゆっくりだったことで、塗料ポリマーを溶かしていた有機溶剤がCO2に溶け出してしまったことが原因でした。部分的にポリマー濃10環境にやさしい塗装技術産総研とは巻頭特集組織概要トップメッセージ概要・特集Interview巻頭特集:産総研の研究❸
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