地質標本館では、「地球観の変遷 −プレートテクトニクスを中心として−」という課題を掲げ、本人の希望に即して19名の研修生を受け入れました。研修生の出身は北海道から沖縄県にわたります。高等学校で地学の授業を受けていない人が8割強、一年生が6割強に達します。大部分の研修生は予備知識をほとんど持たないと見て良いでしょう。 |
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プレートテクトニクス理論は、大陸の移動、地震と火山の分布、海底の地形、岩石残留磁気の縞など、生きている地球の謎を統一的に説明する地球観です。 地質標本館の展示物、たとえば、宇宙から見た全地球のレリーフマップ、地下1,000kmの深度から見上げた日本列島の震源分布、海水を全部抜き去って見た太平洋の立体地形、日本と世界の火山分布などには、プレートの運動を示唆する情報がぎっしり詰まっています。これらは、人間が普通に持っている時空感覚でとらえることは困難なのですが、科学的に厳密に作られた展示物のおかげで、研修生たちは大変効率よく地球を観測出来ることになります。その“観測”に基づいて、プレートテクトニクス理論の強力さを感じ取り、また同時にその限界も考えて頂こうというのが研修の趣旨です。まず、森尻理恵、下司信夫(地球科学情報研究部門)、酒井彰、兼子尚知、青木正博(地質標本館)の5名が講義を行い、引き続き研修生は3つのサブグループ毎に自主的に問題を設定し、その解決に取り組みました。各グループとも、その日は夜遅くまでパワーポイントファイルを作成し、翌日の発表会を迎えました。発表内容はそれぞれ創意に満ち、発表態度も立派であり、研修生の優秀さが際だちました。 3日の期間中、初日はオリエンテーション、最終日はプレゼンテーションや他の行事に割り当てられ、研究機関での実質的な研修は1日です。受け入れ研究機関としては、時間が短すぎてサイエンスの研修にならないのではないかと、当初大いに危惧しました。その思いは、研修の終わった今も変わりません。一方、“初対面の人間が協働して、限られた時間のうちに課題を分析し、論理的なストーリーを構成し、第三者に働きかけてゆく”訓練としては、生徒たちにとって貴重な体験だったはずです。 今後の、研修生の順調な成長と、高等学校理科教育プログラムの充実を見守りたいと思います。 (文責 地質標本館長:青木正博)
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