皆さん、ダイヤモンドは何で出来ているかご存じですか? 実はダイヤモンドと、バーベキューで使う木炭とは、構造がほんの少し違うだけで、両方共に同じ炭素で出来た炭素材料なのです。炭素材料にはダイヤモンドのほかに非晶質、グラファイトと呼ばれる物質が知られていましたが、昭和60年(1985)に4番目の炭素材料が発見され、フラーレンと名付けられました。
フラーレンは“カゴ”のような構造を持つ分子で、構成する炭素原子の数により、C60、C70、C82などと呼ばれます。中でもサッカーボールと同じ構造を持つC60は、優れたデバイスの材料として注目の的でした。
平成3年(1991)、世間はフラーレンの大量合成法の発見に沸き立っていました…。
同じ頃、フラーレンの構造を調べるために電子顕微鏡を毎日のぞき続ける研究者が日本にいました。ある日その研究者は、生まれて初めて見る美しい構造の物質を発見しました。その物質は、サッカーボールのような形をしたフラーレンとは明らかに異なっていました。電子顕微鏡下にはさまざまな形をした物質が姿を現します。でも、そのほとんどが役にたたない“ガラクタ”なのです。ところがその物質は、“ガラクタ”の中に埋もれた宝物に見えたのです。「これは本物だ!」、研究者は直感的にそう思いました。
それは、直径0.4〜50nm(ナノメートル)、長さはおよそ数µm(マイクロメートル)のトンネル状の物質でした。ナノとはミリの百万分の1の単位ですから、いかにこのトンネルが小さいかが分かります。
小さなトンネルの発見はすぐにイギリスの学術誌「ネイチャー」に発表され、世界のメディアに取り上げられました。ところがその後、学会からはほとんど無視されてしまいます。しかし、この小さなトンネルに世界中が注目する日がやがて訪れたのです…。
炭素の同素体とその次元性