
小さいころ、イベントか何かで風船をもらったことはありませんか?
もらったその日はパンパンに膨れていて、どこかに糸をくくりつけていないとすぐに天井まで上がってしまっていたものが、何日かたつと小さくしぼんで、いつの間にか床に転がっていたりしていませんでしたか?
これはもちろん、中に入っていたヘリウムが少しずつ漏れていったためです。結び目から漏れただけではありません。実は、風船の表面からも、わずかではありますが、ヘリウムは漏れていたのです。
ヘリウムや空気などの気体が漏れないように遮断する性質を、ガスに対するバリアという意味で、ガスバリア性といいます。風船の場合、ヘリウムが漏れてしまっていたのは、ガスバリア性が低かったためです。
ガスバリア材料として広く使われているものに、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものがあります。必要に応じて他の材料を混ぜたり、重ね合わせて多層化したり、表面を加工したりして、さまざまな用途に対応できるプラスチックです。
しかし、ものがプラスチックだけに、高い温度は苦手としています。室温では十分でも、温度が高くなるとガスバリア性が劣ってきて、最終的には溶けたり燃えたりしてしまうのです。
耐熱性を上げようとすると、高価なプラスチック原料を用いなければなりません。耐熱温度を100℃上げようとするなら、コストは10倍に跳ね上がる、と言われているほどです。それほどコストをかけても、エンジニアリングプラスチックで作られたガスバリア膜の常用温度は、350℃が限界でした。
産業技術総合研究所(産総研)の蛯名さんが開発した耐熱性ガスバリア膜「クレースト」は、そんな常識を軽々と打ち破ったガスバリア膜です。
従来の材料よりもはるかにガスバリア性が高く、そのガスバリア性は、350℃どころか、600℃でもまったく衰えません。
ひょっとしたら世の中を変えてしまうかもしれない発明なのですが、その材料は、実はきわめてありふれたものなのです。
詳しくご紹介していきましょう。
