1.目的と効果
現在、高周波電気凝固装置などの止血機器は、消化管手術など、多くの外科的処置で用いられています。しかし、止血処置に伴う生体組織への損傷が原因となって術後障害を生じることがあるため、改良の必要性が指摘されてきました。このような医療現場のニーズに基づいて、処置に伴う侵襲性を改善する、すなわち、生体組織への損傷を軽減するために、低温プラズマ発生技術を活用した止血機器を開発しました。この機器により、止血効果を損なうことなく生体組織への損傷を低減できるため、術後障害の発生リスクを大幅に軽減できます。
[適用分野]
● 医療(止血、製薬)
● 工業、畜産業、農業(低温物質合成、表面改質、微細加工)
2.技術の概要
発明した止血機器は、マイルドなプラズマを発生させ、ノズルから噴き出させて(プラズマジェット、図1)大気圧環境下で生体組織に照射して止血処置を行います。この機器には次のような特徴があります。①マイルドなプラズマによって止血処置を行うため、十分な止血効果を発揮しながらも、過度の温度上昇はなく、生体組織の損傷が生じることはありません。②プラズマ発生開始時やプラズマ照射処置中に、プラズマを発生させるための電極から被照射体(この場合は止血処置される生体組織)に放電が起こる危険性がありません。③これまで困難であったマイルドなプラズマの発生開始を容易にかつ確実に行うことができます。一旦発生させるとマイルドなプラズマジェットの状態は、安定的に維持されます。止血機器自体も小型・軽量で操作性に優れ、プラズマジェットを、長さが約10 mm以上、直径を約1 mm以下の細い形状に制御できます。そのため、細かくスポット的にプラズマ照射止血処置を施すことが可能です。
図2に、この機器を用いて、マウスの足部大腿動脈出血部位にプラズマ照射処置を施して止血した後の病理組織像を示します。マイルドなプラズマジェットの照射によって、血液が凝固していますが、生体組織に損傷が生じていないことがわかります。
3.発明者からのメッセージ
医療現場における低侵襲医療機器の一つとして、早期の実用化を目指しています。また、この発明の技術を適用できる分野は幅広く、外科手術のスタイルを変えるのみならず、マイルドなプラズマによる低温での物質合成、物質分解、表面改質、微細加工、光源など、さまざまな用途で実用化が図れると考えています。
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| 図1 大気圧環境下で発生させたマイルドなプラズマジェット(直径約1 mm) |
図2 マウスの足部大腿動脈出血部位にプラズマ照射処置を施して止血した後の被処置部の病理組織像
プラズマ照射による血液凝固部が確認され、脂肪組織には損傷が生じていない。 |


