1.目的と効果
近年、がん患者数が増大しており、2005年から2015年までに罹患(りかん)数が68 %増加する(89万人)と予測されています。その一方で、がんの確定検査を担う病理診断医の数は人口10万人あたり約1人(米国7.9人)と少なく、診断の高度化や診療業務負担の増大に伴って、見落としや誤診の可能性が高まることが懸念されています。これに対し、この発明では、領域分割手法と特徴抽出システムを用いた画像認識技術によって、がん組織の自動判別が可能で、病理医の負担軽減と診断の質や効率の向上を同時に実現する、がん検出支援システムの確立が期待できます。
[適用分野]
● 診断支援技術
● 病理組織診断
● 医用画像処理
2.技術の概要
この発明では、医師が病理組織診断時に着目する核・細胞質の領域を強調するため、色空間変換と統計解析処理をベースとした新しい画像処理手法により領域分割を行っています。具体的には、原画像(図1a)から、国際照明委員会の標準色空間(CIELuv)を主成分分析処理した細胞質領域の抽出(図1b)や赤緑青の色空間(RGB)のR成分の2値化処理をベースとした核領域の抽出(図1c)などを行っています。加えて、高次局所自己相関特徴を拡張した特徴抽出システムにより、領域分割した病理組織画像の特性に適応した特徴抽出を行い、正常組織とがん組織の自動判別を実現しました。これによりがんの見落としを0 %、過検出を4 %に抑えることに成功しました(図2)。
3.発明者からのメッセージ
がん患者の増大や医師不足といった現状に対し、IT技術を活用し、診断に貢献するためにこの技術を開発しました。近年、病理組織画像のデジタル化が進み、さまざまな活用方法が提案されていますが、この技術のような自動診断技術は成熟しておらず、本格的な普及には至っておりません。この発明がブレイクスルーとなり、医師の負担が軽減するとともに、診断の質や効率の向上に貢献できる支援技術が普及することを期待します。
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図1 胃生検病理組織画像の領域分割処理画像
(a)原画像、(b)細胞質領域抽出例、(c)核領域抽出例。原画像(a)から、(b)は細胞質領域(黒)が抽出され、(c)は細胞核領域(黒)が抽出されている。 |
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| 図2 正常画像50枚とがん画像24枚をこの発明技術にて自動診断した結果 |


