1.目的と効果
ディスプレーや電子デバイスなどに利用される酸化物材料の多くは薄膜の形態で利用されています。結晶の成長方向が一方向に揃った“高配向性”は、導電性、発光性、磁性などの材料特性の向上に極めて重要な要素です。さまざまな用途に対応するために、高品質な配向膜が得られ、低コストで汎用性の高いプロセスの確立が必要とされてきました。そこで新たに化学溶液法とレーザー照射を組み合わせた光MOD法により、ガラスやセラミックス多結晶基材などに、シード層を簡便に形成する手法を開発しました[1]。得られるシード層の上部にはさまざまな酸化物薄膜の高配向成長が可能です(図1)。この手法は大気中で少ない工程数で作製可能であるため、とても簡便で汎用性の高い製膜手法になっています。
[適用分野]
● 誘電体材料
● 導電体材料
● エレクトロニクス素子
![]() |
| 図1 光MOD法で作製するRbLaNb2O7シード層と上部に形成するLaNiO3ペロブスカイト酸化物薄膜の模式図(左)、および実際に無配向ガラス基板上に配向成長させたシード層の断面透過電子顕微鏡写真(右)。 |
2.技術の概要
配向成長の対象材料は、特性がバラエティに富むペロブスカイト酸化物薄膜(たとえばLaNiO3)です。ペロブスカイト構造を高配向成長させるために、シード層材料としてDion-Jacobson型構造を有する酸化物(たとえばRbLaNb2O7)を利用しました。シード層材料が持つ結晶構造の強い2次元性とレーザー照射時に発生する傾斜光加熱効果によって、無配向のガラス基板上でもこのシード材料を100 %の配向度で一軸配向膜として成長させることができます。この配向膜をシード層として用いれば、図2に示すように、シード層の上部に種々のペロブスカイト酸化物薄膜を一軸配向成長させることが可能です。またこのシード層の形成プロセスは原料溶液の塗布、仮焼、レーザー照射のみの工程で、かつすべて大気中で行うことができます。
3.発明者からのメッセージ
この発明はペロブスカイト酸化物配向薄膜を利用する上でとても効果的な製膜手法になると考えられます。前駆溶液塗布膜の形成に化学溶液法を利用した大面積製膜やインクジェット法などを利用したオンデマンド製膜も可能です。大気中でレーザー光を照射しますので真空チャンバーなどを必要とせず、さまざまな材料の製作工程にフレキシブルに組み込むことが期待されます。
![]() |
| 図2 ガラス基板上に光MOD法で作製したRbLaNb2O7シード層と上部に形成したLaNiO3酸化物薄膜、およびガラス基板上に直接製膜したLaNiO3薄膜のX線回折図 R、LはそれぞれRbLaNb2O7、LaNiO3を示す。 |


