現在位置研究成果 > 特許紹介 > 高圧水素ガス用ゴムシールの非破壊検査技術

高圧水素ガス用ゴムシールの非破壊検査技術

 − 内部き裂の早期検知を可能にする定量的評価方法を確立 −

国際公開番号 WO2011/115261(国際公開日:2011.9.22)

1.目的と効果

 日本のエネルギー自給率は約4 %と低いことに加え、CO2削減や原発事故後の電力供給不足が叫ばれる中、いっそうの水素エネルギー利用の実現が期待されています。水素機器に利用する水素ガス圧力容器や配管にはゴムシールが利用されていますが、水素ガスの高圧化によりゴムシールに内部き裂が生じ、ガス漏洩をきたすことがあります。この発明の技術は、アコースティックエミッション(AE)法を用いて、ゴムシールの内部き裂をあらかじめ測定したデータと比較し、き裂進展を把握することで、内部き裂によるガス漏洩を非破壊で見つけだすものです。

[適用分野]
 ● 水素エネルギー
 ● ゴム製品
 ● 非破壊検査

2.技術の概要

 AE法とは、き裂や塑性変形が生じたときに発生する弾性波(AE波)を電気信号に変換して解析する非破壊検査法です。プラスチックやゴムなどの有機高分子材料のき裂検知にAE法を適用することで、ゴムのき裂進展を把握するものです。図1は圧力サイクル試験とガス漏洩量の比較例です。図2は、高圧水素ガス中に曝露して内部き裂が発生した透明なゴムOリング(線径3.53 mm×内径11.9 mm)のAE信号の事象数(N)と振幅(V)の関係を示しています。AE信号のNV関係は、べき乗で近似でき、内部き裂損傷が激しいほど右上にシフトしています。このようなAE信号のNV関係の変化を捉えることによって、ゴムの内部き裂損傷を定量的に評価できました。

3.発明者からのメッセージ

 ゴムシール内部で発生したき裂が進展して表面に達すると、著しいガス漏洩が生じます。安全性の面から、内部き裂の早期検知は不可欠です。ゴム中を伝播するAE波の減衰は金属材料と比べて大きいですが、図2のようにAE信号を計測し、NV関係からゴムの内部き裂損傷を定量的に評価できます。また、この技術は実用上重要なカーボンブラックやシリカを充填したフィラー充填ゴムにも適用できます。

図1 図2
図1 圧力サイクル試験と透過試験におけるゴムOリングを透過するガス漏洩量の比較(水素ガス圧力90 MPa、温度100 ℃)
圧力サイクル試験では、ゴムOリング内部にき裂が発生し、透過試験時に対してガス漏洩量が増大する。
  図2 高圧水素ガス中に曝露した透明なゴムOリング(線径3.53 mm×内径11.9 mm)の減圧後のAE信号(a)と内部き裂発生状況(b)
AE信号の事象数(N)と振幅(V)の関係は、べき乗(m≈2)で近似でき、曝露圧力が5 MPaから35 MPaに増加すると内部き裂損傷が激しくなり、1桁程度AE事象数が多くなる。
関連情報:
● 参考文献
J. Yamabe et al.: Polymer Testing, 30 (1), 76-85 (2011).
J. Yamabe et al.: SAE International Journal of Materials & Manufacturing, 2 (1), 452-460 (2009).

水素材料先端科学研究センター
PDF(1.1MB:産総研 TODAY Vol.12 No.05 p.14)

連絡先
知的財産部 技術移転室
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 つくば中央第2
電話:029-862-6158 FAX:029-862-6159  Eメール:aist-tlo-ml@aist.go.jp