1.目的と効果
日本のエネルギー自給率は約4 %と低いことに加え、CO2削減や原発事故後の電力供給不足が叫ばれる中、いっそうの水素エネルギー利用の実現が期待されています。水素機器に利用する水素ガス圧力容器や配管にはゴムシールが利用されていますが、水素ガスの高圧化によりゴムシールに内部き裂が生じ、ガス漏洩をきたすことがあります。この発明の技術は、アコースティックエミッション(AE)法を用いて、ゴムシールの内部き裂をあらかじめ測定したデータと比較し、き裂進展を把握することで、内部き裂によるガス漏洩を非破壊で見つけだすものです。
[適用分野]
● 水素エネルギー
● ゴム製品
● 非破壊検査
2.技術の概要
AE法とは、き裂や塑性変形が生じたときに発生する弾性波(AE波)を電気信号に変換して解析する非破壊検査法です。プラスチックやゴムなどの有機高分子材料のき裂検知にAE法を適用することで、ゴムのき裂進展を把握するものです。図1は圧力サイクル試験とガス漏洩量の比較例です。図2は、高圧水素ガス中に曝露して内部き裂が発生した透明なゴムOリング(線径3.53 mm×内径11.9 mm)のAE信号の事象数(N)と振幅(V)の関係を示しています。AE信号のN−V関係は、べき乗で近似でき、内部き裂損傷が激しいほど右上にシフトしています。このようなAE信号のN−V関係の変化を捉えることによって、ゴムの内部き裂損傷を定量的に評価できました。
3.発明者からのメッセージ
ゴムシール内部で発生したき裂が進展して表面に達すると、著しいガス漏洩が生じます。安全性の面から、内部き裂の早期検知は不可欠です。ゴム中を伝播するAE波の減衰は金属材料と比べて大きいですが、図2のようにAE信号を計測し、N−V関係からゴムの内部き裂損傷を定量的に評価できます。また、この技術は実用上重要なカーボンブラックやシリカを充填したフィラー充填ゴムにも適用できます。
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図1 圧力サイクル試験と透過試験におけるゴムOリングを透過するガス漏洩量の比較(水素ガス圧力90 MPa、温度100 ℃)
圧力サイクル試験では、ゴムOリング内部にき裂が発生し、透過試験時に対してガス漏洩量が増大する。 |
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| 図2 高圧水素ガス中に曝露した透明なゴムOリング(線径3.53 mm×内径11.9 mm)の減圧後のAE信号(a)と内部き裂発生状況(b) AE信号の事象数(N)と振幅(V)の関係は、べき乗(m≈2)で近似でき、曝露圧力が5 MPaから35 MPaに増加すると内部き裂損傷が激しくなり、1桁程度AE事象数が多くなる。 |
J. Yamabe et al.: SAE International Journal of Materials & Manufacturing, 2 (1), 452-460 (2009).


