1.目的と効果
現在の細胞分離技術では、フローサイトメトリーと呼ばれる、細胞を蛍光標識して分離する手法が最も一般的です。目的細胞の特異的な細胞表面抗原に対して、蛍光色素や磁気ビーズで修飾された抗体を用いることで、細胞の標識と分離が行われています。細胞表面だけでなく、細胞内部にも多くの種類のタンパク質が存在しますが、これら細胞内のタンパク質をフローサイトメトリーに適用することはできませんでした。この発明は、遺伝子組み換えなどを行うことなく、細胞内のタンパク質を標的とした細胞分離を可能にします。[適用分野]
● 創薬分野
● 再生医療分野
● 細胞生物学分野
2.技術の概要
この手法では、図1の概念図に示すように、細胞内のタンパク質を標的として細胞分離を行います。直径200 nm、長さ10 µmの高アスペクト比の針「ナノニードル」を細胞に挿入し、細胞内部のタンパク質と結合させ、この結合力によって基板上の細胞を機械的に釣り上げて分離します。ナノニードルが平面基板上に1万本配列されたナノニードルアレイ(図2)を用い、針表面には標的タンパク質と結合する抗体などの分子を修飾します。基板との接着力を調整した細胞群に対して、このナノニードルアレイを同時に挿入し、引き上げることによって標的タンパク質を含む細胞だけを釣り上げます。この手法により、例えばiPS細胞から分化誘導された細胞群から、目的の細胞のみを正確に分離することが可能になると考えています。3.発明者からのメッセージ
この手法は、機械的に針で細胞を釣り上げるため、細胞骨格タンパク質など、細胞体と何らかの結合をしている、あるいはナノニードルによって細胞から引き抜かれないオルガネラなどと結合しているタンパク質が標的になります。針の挿入によるダメージを懸念されると思いますが、直径200 nmのナノニードルでは、同一細胞に100回の連続挿入を行っても細胞の活動に影響を与えないということがわかっています。![]() |
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図1 ナノニードルアレイによる細胞分離の概念図 基板上の細胞は、抗体との特異的な結合力によって釣り上げられるように接着力を調整されている。 |
図2 ナノニードルアレイのSEM写真 ナノニードルアレイはシリコンウエハのナノ加工によって作製される。 |


