1.目的と効果
単層カーボンナノチューブ(CNT)は、極めて高い電子・正孔移動度、高電流耐性、高い機械的強度など優れた特性を多数もち、次世代電子材料として期待されています。しかし、CNTには半導体型と金属型があり、それらが混ざった状態で合成されます。電子材料として用いるには、金属型と半導体型、さらには電気的特性のそろった単一構造の半導体CNTを分離する必要があります。産総研では、ゲルを用いた金属・半導体CNTの簡便な分離手法を開発してきました(特開2011-195431など)。今回、この手法をさらに発展させて、単一構造の半導体CNTを簡便に低コストで分離できる手法を発明しました。[適用分野]
● 非線形光学デバイス分野
● 半導体デバイス分野(フレキシブル透明導電膜、フレキシブルトランジスタ)
2.技術の概要
この発明では、ゲルを充塡したカラムを用いた分離を行います。通常、カラム分離で精度を向上させるためには、添加する試料を減らしたり、カラムを長くしたりしますが、この発明では全く逆の発想で、あえて大過剰な試料を添加することで高精度の分離を実現しました。少量のゲルを保持したカラムに、特定の界面活性剤で分散したCNTを大過剰投入すると、特定の構造をもつ半導体型CNTのみがゲルに吸着します。複数のカラムを直列に接続したものを用いれば、一度に異なる構造の半導体型CNTを得ることができます(図1)。ゲルは繰り返し使用でき、使用する界面活性剤も安価で、分離の自動化や、安価に大量の分離を行うことができます。3.発明者からのメッセージ
この方法を用いて、13種類の単一構造の半導体CNTを分離できました(図2)。これまでのさまざまな構造をもつ半導体型CNTは、異なるバンドギャップをもつ混合物、いわばシリコンやゲルマニウムなどの混合物のようなものでした。単一構造のCNTが得られたことにより、本来CNTがもつ極めて優れた電子特性を利用したデバイス開発(例えば、超高速・低消費電力フレキシブル透明トランジスタなど)が飛躍的に進むことが期待できます。また、同時に得られる金属型CNTのフレキシブル透明導電膜への応用も可能です。![]() |
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| 図1 直列カラムによる単一構造半導体CNTの分離法 |
図2 分離した13種類の単一構造半導体CNT(溶液の写真と分子模型) (n,m)は、CNTの構造を規定するカイラル指数 |
関連情報:
● 参考文献
H. Liu et al.: Nature Commun., 2, 309-1-8 (2011).
● プレス発表
2011年5月11日「低コストで単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の構造分離を実現」


