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新しいカーボンナノチューブ分散剤

 − 分散/凝集を光で制御することも可能 −

国際公開番号 WO2011/052604 (国際公開日:2011.5.5)
国際公開番号 WO2011/052601 (国際公開日:2011.5.5)

1.目的と効果

 単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をはじめとする各種のカーボンナノチューブ(CNT)は、軽くて丈夫、そして優れた導電特性を示すナノ炭素材料の一つとして注目されていますが、難溶性であることが応用上の制約となっています。近年、SWCNTを可溶化する分散剤の開発が活発に行われていますが、SWCNTの分散状態を精密に制御する技術は確立されていませんでした。今回開発した分散剤は、複数の芳香環を有し、優れたSWCNT分散能を示します。さらに、一部の分散剤については光反応による構造変化によりSWCNT表面から脱離し、SWCNTを再凝集させることができます。

[適用分野]
 ● CNTの精製・分離
 ● CNTを用いたデバイス製造技術
 ● CNTを用いた機能性インク

2.技術の概要

 水溶性を付与する目的でアンモニウム基をもつベンズアミド基を導入した各種の電解質化合物を合成し、それらがSWCNT分散能をもつことを見いだしました。特に、スチルベンの両端に導入した化合物1(図1左)は、直線的で平面性の高い板状構造であることが分子軌道計算によりわかりました。この構造ゆえにSWCNT表面との親和性がとても高く、SWCNT表面に吸着してSWCNT同士の強い相互作用を解き、水中に単分散させることができます。この化合物1を用いて調製した分散液をかき混ぜながら紫外光を照射すると、スチルベン骨格の光環化反応が進行することにより、化合物1はSWCNT表面と立体的に親和性の低い、屈曲した構造をもつ化合物2(図1右)へと変化します。このことで、化合物2はSWCNT表面からはがれ、SWCNTは水中で分散状態から凝集状態へと変化し、図2に示すように沈殿しました。

3.発明者からのメッセージ

 今回発明した複数の芳香環をもつ分散剤は、CNT表面との親和性が優れ、とても良好なCNT分散特性を示します。さらに、光応答性の芳香族官能基を導入することにより、光反応による分散剤の構造変化がもたらすCNT表面との親和性の違いを利用して、CNTの分散/凝集を制御することができるようになりました。CNTの精製・分離の新しい技術として有望であることをはじめとして、光という強度や波長を空間レベルで制御可能な刺激に対して応答可能なこれらの分散剤は、新しい複合材料であるCNT含有膜やCNT含有塗料などの開発に有用と考えています。

図1 図2
図1 光応答性単層カーボンナノチューブ(SWCNT)分散剤の構造式(上)と分子モデル(下)
板状構造(化合物1)から、紫外光を照射すると、屈曲した構造(化合物2)に変化する。
図2 SWCNTと分散剤の概念図(上)とSWCNT水溶液の様子(下)
SWCNT表面に化合物1が吸着し水中に分散した状態から、紫外光を照射すると、化合物2がSWCNT表面から脱離し、SWCNTは凝集して沈殿する。

関連情報:
 ● 参考文献 Y. Matsuzawa et al. : Advanced Materials, 23, 3922-3925 (2011).
 ● プレス発表 2011年7月26日「単層カーボンナノチューブの分散状態を光で制御する新技術


ナノシステム研究部門
PDF(1.0MB:産総研 TODAY Vol.11 No.11 p.16)

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