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植物で外来糖タンパク質を生産

 − 植物に特異的な糖鎖構造を合成する新規糖転移酵素遺伝子を発見 −

国際公開番号 WO2011/068165 (国際公開日:2011.6.9)

1.目的と効果

 抗体やホルモンなどのバイオ医薬の生産は、現在、ハムスター(CHO)の細胞など動物培養細胞を用いた生産系が主流です。しかし、生産コストが高く、病原ウイルスやプリオンなどの混入の危険性を排除できません。そのため、微生物や植物を用いた生産系が開発されていますが、糖鎖構造がヒトとは異なっているため抗原となりうることが問題です。植物の糖鎖構造では、N−結合型糖鎖の場合はヒトによく似ていますが、O−結合型糖鎖では、タンパク質のセリン残基にαガラクトースという植物に特異的な構造が付加しています。今回の特許の方法は、この構造を合成する遺伝子を特定して抑制することで、植物特異的糖鎖構造の除去に貢献します。

[適用分野]
 ● 創薬分野
 ● 研究用試薬分野
 ● 植物細胞壁分野

2.技術の概要

 単細胞緑藻であるクラミドモナス、高等植物であるシロイヌナズナおよびタバコから、植物にだけ存在するためヒトでは抗原となる糖鎖構造を付加する糖転移酵素遺伝子(SGT1)を特定(クローニング)しました。SGT1は動物界や真菌界にはなく、植物界にだけに類似遺伝子がある新規遺伝子ファミリーであることがわかり、相同性検索により任意の植物のSGT1遺伝子を同定することができるようになりました。さらに、SGT1遺伝子を抑制することにより、その糖鎖構造を合成しない、植物細胞を宿主とした異種糖タンパク質生産方法を開発しました。逆に、このSGT1遺伝子を用いて、図1に示すように、タンパク質あるいはペプチドのセリン残基にO−結合型ガラクトースを付加することができます。

3.発明者からのメッセージ

 動物由来の遺伝子、あるいは抗体の遺伝子を、動物培養細胞や酵母で発現させると活性が認められるのに、植物で発現させると活性が無くなってしまうことはないでしょうか。その原因の一つとして、図2(a)の植物特異的な糖鎖付加が考えられます。この特許の技術を適用することにより、図2(b)の植物発現系で活性のある異種糖タンパク質を生産できる可能性があります。遺伝子破壊株でもリボ核酸干渉法(RNAi)でも植物特異的糖鎖構造の付加抑制効果があります。

図1 図2
図1 糖転移酵素遺伝子(SGT1)は、タンパク質のセリン残基に、UDP−ガラクトースを供与体基質として、ガラクトースを転移し、植物に特異的なO−結合型糖鎖構造を合成する。
図2 抗体を植物で発現させると、想定外に可変領域にO−結合型糖鎖構造が付加することがある。SGT1遺伝子抑制株では、植物特異的糖鎖構造を抑制できる。

糖鎖医工学研究センター
PDF(1.0MB:産総研 TODAY Vol.11 No.11 p.15)

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