1.目的と効果
ウイルスや細菌の感染および細菌毒素の侵入の多くに糖鎖が関与し、感染症研究、予防治療対策研究では病原体―糖鎖間の相互作用解析が鍵の一つとなっています。しかし、一般に糖鎖の合成はとても手間のかかるものです。この発明によって、フコースやシアル酸といった糖鎖ユニットの中でも機能発現の鍵を握る単糖ユニットを複数もつ複雑な構造の糖鎖群を、高活性糖転移酵素を用いて簡便に合成できます。この糖鎖群には、非天然型の新規糖鎖も含まれており、さまざまな生理活性能力を秘めていると期待されます。[適用分野]
● 医薬品分野
● バイオ分野一般
● 化学分野一般
2.技術の概要
図1に示すように、グルコサミンあるいはラクトサミンを原料とし、ほぼ100 %反応を進行させる高活性糖転移酵素を調製・利用して、ネオラクト系糖鎖の簡便合成に成功しました。2,3;2,6−ジシアルルイスXは、天然素材の酵素により3工程で簡便に合成できる非天然型の5単糖糖鎖です。この糖鎖の特徴として、2,6−シアル酸結合が安定化され、シアル酸加水分解酵素による反応を受けなくなることを見出しました(図2)。グルコサミン部にフコースを導入することでガラクトース部と連結しているシアル酸の安定化が促進されたと考えられます。また、本化合物がインフルエンザ増殖抑制活性をもつことも確認しました。利用した酵素の一部は、固定化することにより、繰り返し利用可能な形態になります。3.発明者からのメッセージ
近年、さまざまな生理機能が明らかとなっている糖鎖はとてもポテンシャルの高い化合物ですが、一般に合成の困難なものが多く、なかなか産業利用されるに至っていません。今回は、糖鎖機能の鍵を握るシアル酸を複数もつ非天然型糖鎖を、天然型の酵素を利用して簡便に合成することに成功しました。これらの化合物を、適所において医薬生化学的研究展開に活用していただければ、と願っています。![]() |
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図2 α−1,3−フコースによる2,6−シアル酸の安定化 2,3;2,6−ジシアラクトサミン(B)では、2,3と2,6の両方のシアル酸グリコシド結合が加水分解される。一方、2,3;2,6−ジシアルルイスX(C)にシアル酸加水分解酵素処理しても、2,6−シアル酸は残存する。これらのことから、グルコサミンに導入されたα−1,3−フコースが2,6−シアル酸を安定化させていると示唆される。 |
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| 図1 グルコサミン、あるいはラクトサミンからネオラクト系糖鎖の酵素合成 合成された糖鎖群(A〜I)の中には、非天然型糖鎖も含まれる。 |


