1.目的と効果
パワー半導体用材料として期待されているダイヤモンドは、ダイヤモンド表面の特徴を利用した電子放出源材料としても期待され、熱フィラメントのような高温を必要としない電子放出源用として研究されています。実用化のための課題である低電圧動作と放出電流の安定化を目的に、ダイヤモンド表面の構造安定性や表面の電気的特性の制御を研究しました。その結果、リンを添加したn型ダイヤモンド表面に炭素再構成表面を形成することで、ホウ素を添加したp型ダイヤモンドの水素終端表面(従来技術)に比べて、動作電圧の低減と放出電流の安定化の両方を同時に達成することができました。[適用分野]
● 電子顕微鏡などの分析・評価装置
● 半導体製造装置
● 真空ナノエレクトロニクスデバイス
2.技術の概要
真空中または不活性ガス中でn型ダイヤモンドを高温で熱処理することで、炭素再構成表面を形成しました。電子放出特性は、針状構造を形成せずに平坦面からの特性を評価しました。この炭素再構成表面の電子親和力がシリコンの4分の1以下と小さいため、図1(b)に示すような平坦面でも、図1(a)のように1 kVという低電圧動作が実現できました。これにより、報告例の多い水素終端p型ダイヤモンドの平坦面に比べて、5分の1まで動作電圧を低減できました。さらに、図2に示すように炭素同士の化学結合が強いために、表面構造が壊れにくく、安定した放出電流が得られるようになりました。3.発明者からのメッセージ
電子顕微鏡などのコールドカソード電子銃のフラッシングと同様の方法ですので、次に述べるような特徴のある炭素再構成表面が形成できます。その特徴は、これまでの半導体電子源の表面修飾技術に比べ、短時間で簡便な方法であり、特殊なガスなども必要としません。また、特殊な金属などを保持させる機構も必要としないことから、長寿命でメンテナンスが簡単な電子源としての実用化が期待できます。また、ナノ加工技術(特許4543216号)を用いることで、さらなる低電圧化が可能です。![]() |
| 図1 炭素再構成n型ダイヤモンド表面からの電界電子放出特性(a)と表面形態(b)
これまでの技術の水素終端p型ダイヤモンド表面からの電界電子放出特性に比べて5分の1の電圧で電子放出が観測されている。 |
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| 図2 炭素再構成n型ダイヤモンド表面のX線光電子分光法評価結果 横軸はC1s束縛エネルギーに対する損失エネルギー。メインピークより1 eV低エネルギー側に炭素再構成に起因するピークをもつことが特徴。 |


