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高空間分解能ラマン散乱測定システム

 − 光の回折限界を超える空間分解能で半導体の応力分布を計測 −

特許 第4332644号(出願2004.9)

1.目的と効果

 近年、ナノ構造、ナノデバイスの分野の研究開発が急速に発展しており、これらの分野において種々の試料の特性評価のため、高い分解能をもった光学計測技術が求められています。例えば、ラマン散乱分光法によるシリコン・デバイス中の応力分布計測は、非破壊・非接触で行えるため大きな注目を集めています。しかし、空間分解能が光の回折限界で制限されるため、今までナノスケールの計測は不可能でした。

 この限界を超えるために、近接場プローブを用いる方法が提案されていますが、ラマン散乱分光法のような測定では、信号光が極めて微弱なために適用が困難でした。この発明は、このような微弱な信号の光学測定を、近接場プローブを用いて光の回折限界を超える空間分解能で行うことができます。

[適用分野]
 ● 光学測定装置(ラマン散乱など)
 ● 半導体計測分野(応力計測など)
 ● ナノテクノロジー分野

2.技術の概要

 シリコンのような結晶性試料の光学測定では、図1のような方法で空間分解能の高い測定ができます。例えば、偏光した光を励起光源として用い、ラマン散乱が選択則により検出できないような励起光と検出光の偏光配置のもとで、ナノスケールの先端をもつ金属探針を測定試料に近接させます。すると、探針の先端近接領域のみ、探針の先端と光との相互作用で本来検出されないはずのラマン散乱光が観測できます。一方で、探針の先端から離れた部分では選択則によりラマン散乱光が検出できないので、探針先端近接部のナノスケール領域のラマン散乱光だけを測定することができます。

 この方法を用いて、私たちは、100 nm以下の空間分解能でシリコン(Si)の歪み分布を計測することができました(図2)。

3.発明者からのメッセージ

 この発明は、シリコン・デバイスのラマン散乱分光法による応力分布計測だけでなく、ほかのナノデバイスにも適用できる技術です。また、偏光方向による選択則があれば、ラマン散乱分光法以外の光学測定システムの空間分解能を光の回折限界を超えて高空間分解能化することができます。

図1
図1 測定システム模式図
図2
図2 歪みSi基板の透過電子顕微鏡写真(右)とラマン散乱の測定例(左)
クロスハッチパターンを反映したラマンシフトの変化を観測。ラマンシフトの520cm−1(無歪みの時のラマンシフトの値)からの変化分が歪みの大きさに対応。

ナノ電子デバイス研究センター
PDF(803KB:産総研 TODAY Vol.11 No.01 p.20)

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