1.目的と効果
多様な生物機能をもつ糖鎖の生物学的な合成には、糖転移酵素の糖供与体として種々の糖ヌクレオチドが必要です。糖ヌクレオチドの化学合成は高コストなので、細胞を利用した糖ヌクレオチドの生産が一般的です。種々の生理機能が期待されるラムノースやキシロースを含む糖鎖の酵素合成には、糖供与体としてUDP−ラムノースやUDP−キシロースが必要ですが、これらの糖ヌクレオチドを生物により大量に生産した報告はありません。酵母を利用した生産に関するこの発明は、糖ヌクレオチドを安価に大量供給することに貢献します。[適用分野]
● 食品、医薬品、化学品(化粧品、研究用試薬など)
● 糖鎖関連分野
● 酵素利用分野
2.技術の概要
シロイヌナズナより、UDP−グルコースをUDP−ラムノースに変換する新規なUDP−ラムノース合成酵素遺伝子を単離し、これら遺伝子の機能ドメインを酵母内で別々に共発現することで、酵母の細胞内に大量に存在するUDP−グルコースを原料にUDP−ラムノースを生産できるようになりました。また、UDP−グルコースをUDP−キシロースに変換する際に作用する二つの酵素遺伝子をシロイヌナズナより単離し、これらを酵母内で共発現することで効率よくUDP−キシロースが生産できることを見いだしました。酵母細胞内に生成したこれらの糖ヌクレオチドは、酵母細胞内では分解や変換を受けず安定に存在することから、酵母細胞から抽出・精製することでUDP−ラムノースやUDP−キシロースを大量かつ安価に製造ができます。3.発明者からのメッセージ
種々の薬理作用をもつ植物由来の配糖体にはラムノースやキシロースを含むものが多種存在し、これらはUDP−ラムノースやUDP−キシロースから合成できます。UDP−ラムノースはルチンなどの食品や医薬品などの配糖体合成の原料としての需要が見込まれます。また、植物の細胞壁や植物ホルモン、ヒトや哺乳類の細胞表層プロテオグリカンなどの生合成や生理機能に関する研究では、UDP−ラムノースやUDP−キシロースが必須ですが、前者については市販されていないこともあり提供を希望する研究機関も多く、研究用試薬としての需要も期待されます。![]() |
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| シロイヌナズナのUDP−ラムノース(左)およびUDP−キシロース(右)の合成経路 糖ヌクレオチドの生合成とそれに関与する酵素、これをコードする遺伝子を示す。 |
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酵母によるUDP−ラムノースの生産 |


