1.目的と効果
これまでの直接通電を利用した加圧焼結法は、少ないエネルギーで比較的短時間に焼結を完了できるという工業的利点がある反面、焼結時の温度分布の問題から製造できる形状には大きな制約がありました。これに対し、私たちは、加熱領域を小さく限定し、温度制御を行いながら加熱部分を順次移動させることによって全体を焼結するトラベリングゾーンシンタリング法を開発しました。この方法によれば、長尺の棒材や断面形状が一様でない部品でも全体を緻密かつ均質に焼結することができます。
[適用分野]
● 金型
● 自動車部品
● 工具
2.技術の概要
これまでの直接通電を利用した加圧焼結法では、加圧軸と通電経路とが一体となっています。この発明では、通電経路を加圧軸から分離し、加圧軸に対して直交するように通電を行います。図1に示すように、粉末原料を充てんした型の側面に電極を配置します。ここに通電を行うと、電流は電極の幅に相当する領域に流れ、この部分のみが加熱されます。この状態で、粉末原料を加圧しながらステージを昇降させると加熱領域が移動します。このとき、それぞれの加熱領域に対して電流値を逐次制御することにより、対象とする試料の形状にかかわらず任意の温度分布で焼結を行うことが可能となります。
 |
| 図1 トラベリングゾーンシンタリング法 |
3.発明者からのメッセージ
トラベリングゾーンシンタリング法によれば、図2に示すアスペクト比(長さ/直径)が7を超える長尺の棒材や図3に示す段付形状部品も緻密かつ均質に焼結することができます。これにより、自動車のエンジンバルブやフランジ形状の金型などへの適用が考えられます。また、被焼結体に対して焼結温度の分布を任意に設定できることから、適合する焼結温度が部品内部で変化する複合材料や傾斜機能材料への応用も期待できます。
 |
|
 |
| 図2 焼結したTiAl棒材(アスペクト比7.1)における長さ方向の密度分布 |
|
図3 トラベリングゾーンシンタリング法で作製した段付形状の焼結品 |