1.目的と効果
β−FeSi2は無害で資源量の豊富なFeとSiからなる半導体であり、熱電材料、発光素子、太陽電池などの用途が期待されています。均質な組成・組織をもつ単相β−FeSi2を簡便に合成する方法をすでに開発していますが(特許第3931223号)、より有用なアプリケーションへの展開のために、組成や組織を変動させることなく薄膜材料化する方法を研究しました。その結果、出発原料としてあらかじめ作製した単相β−FeSi2をパルスレーザーデポジション(PLD)法のターゲットとして用いるだけで、組成や組織を変動させることなく、出発原料に対応した均質な組成・組織をもつβ−FeSi2薄膜を室温で作製することができました。[適用分野]
● 光通信
● 太陽光発電
● スピンエレクトロニクス
2.技術の概要
自由落下によって得られる均質な組成のFe−Si融液(Fe:Si=1:2[モル比])を熱伝達が良好な冷媒に衝突させて急速凝固することにより、組成の均質なFe−Si合金を得ます。この試料を短時間熱処理すると単相β−FeSi2ができます。これをペレット状にして、1×10−3 Pa以下の高真空下でNd:YAGレーザーの第3高調波(355 nm)を用いたパルスレーザーによってアブレーションし、室温にて基板上に堆積させます。堆積した薄膜は、出発原料となったβ−FeSi2の結晶構造を保っています。Fe−Si融液を単に凝固しただけではSi欠乏のFeSiとSi過剰のα−FeSi2(Fe:Si=1:2.5[モル比])のマクロ的な混合物となり、この発明の方法を用いてもβ−FeSi2薄膜は得られません。3.発明者からのメッセージ
PLD法は高密度のレーザー光で瞬間的にターゲットを個々の原子やフラグメントに分解して基板上に堆積させる方法で、組成変動が少ないといわれています。そのため、ターゲットは単なる元素の供給源としてとらえられ、マクロ的な均質性だけに注意が払われていますが、単純な混合物ではβ−FeSi2薄膜を室温で得ることはできません。この発明では、ナノスケールで均質な単相β−FeSi2をターゲットに用いることで室温で直接β−FeSi2薄膜を得ることができます。
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この発明によってSi(100)単結晶基板上にFeSi2薄膜を作製 |
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| この発明によってSi(100)単結晶基板上に作製したFeSi2薄膜はβ−FeSi2 | |


