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有機防食皮膜や高効率信号伝達皮膜の作製

 − 原子レベルでの平坦化と有機膜の結合力向上 −

特許 第3968438号(出願2003.10)

1.目的と効果

 これまでの電極等材料表面は酸化物/水酸化物に覆われた粗い表面であり、吸着力の弱い有機単分子膜しか作製できませんでした。そこで、電極・材料表面に効果的な有機無機結合界面の構造を提供します。この方法では不働態化直後の紫外線照射による原子レベルでの平坦(へいたん)化を行うことによって、その表面と強い結合力を発現するヒドロキサム酸系有機皮膜を密着性良く作製できます。この技術を構造材料に適用すると、結合力の強い高耐食性有機皮膜となります。また、ヒドロキサム酸基にセンサー分子を結合させれば、個々のセンサー分子が受信した信号をすべて電極に伝える高効率信号伝達皮膜となります。

[適用分野]
 ●冷却水配管等の防食
 ●有機センサー電極界面

2.技術の概要、特徴

 この発明は、金属基体表面の耐食性を向上させるため、金属表面と弱い物理吸着ではなく、強い化学結合により有機皮膜を形成する技術です。金属表面の不働態化直後に紫外線を照射することにより、原子レベルで平坦な金属酸化物表面を作製し、その表面にヒドロキサム酸基を含む自己組織化結合型皮膜を形成させます。このような操作によって、すべての分子が金属酸化物と結合し、膜を構成している分子が欠陥もストレスもなく分子間ネットワークを形成できます。また、原子レベルで平坦な金属表面に分子認識能をもつセンシング分子などを使うと、未吸着分子が減り、ほぼ全分子が基板電極に結合します。これにより、個々の分子が受け取ったセンシング信号をすべて電極となる金属表面に伝える高伝達率の有機無機センサーとなります。

3.発明者からのメッセージ

 ナノスケール構造をボトムアップから構築することは困難ですが、不働態化と紫外線照射というマクロな操作により、材料が本質的にもっている安定化に向かう駆動力(自己組織化傾向)をうまくアシストする簡便かつ有効な方法を見つけました。原子レベルで平坦なテラスの成長には優勢な方向がありますが、今後さらにテラスを拡張し、ヒドロキサム酸系有機皮膜との組み合わせにより耐食性や信号伝達効率の向上を図っていきます。

図
従来型(a)と自己組織化結合型皮膜(b)の概念図
(a)表面が水酸化物/酸化物混在の粗い表面のため、基板に結合できない分子が多くなる。
(b)界面の原子レベル平坦化とヒドロキサム酸系有機分子の組み合わせにより、結合力を向上させ得る。

図 有機膜の結合力評価
空気酸化膜(a)や紫外線照射をしない場合(b)には4サイクルで表面皮膜が溶出してしまうが、紫外線照射したヒドロキサム酸系皮膜(c)では20サイクルでも低い電流密度を示し、防食性が維持されている。

コンパクト化学プロセス研究センター
PDF(1.2MB:産総研 TODAY Vol.9 No.06 p.21)

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