1.目的と効果
単色光を当てると可視付近の波長域で誘導吸収を示す金属酸化物系材料を得ました。光によって光吸収が高速で可逆的に変化する材料、すなわち誘導吸収材料は、光で光を制御する種々のデバイスに応用が期待されます。これまで誘導吸収材料として化合物半導体が知られていましたが、多くは有害なカドミウムを含み、また、光劣化を起こしやすいという問題がありました。発明者らはこれまでに、特定の遷移金属酸化物が強い入射光によって屈折率変化を起こす非線形光学材料となることを見いだしてきました。この発明の酸化コバルト(Co3O4)薄膜などは、近紫外〜可視波長の単色光励起(れいき)により、高速・可逆な可視吸収変化を示し、光劣化しにくい低毒性の誘導吸収材料となります。Co3O4微粒子を分散したガラス薄膜などでは、上記の誘導吸収特性を保持しつつ、光劣化がより抑えられました。[適用分野]
● 光デバイス部材
2.技術の概要
誘導吸収特性を示すCo3O4、Mn3O4、Fe2O3、CuOなどの遷移金属酸化物を、スパッタリング法や有機酸金属塩の熱分解法などを用いて、透明基板上に薄膜化します。このような遷移金属酸化物薄膜に強い単色光を当てると、その光とは異なる波長において、吸光度が高速で可逆的に減少あるいは増大します。例えば、スパッタリング法で作製したCo3O4薄膜に光強度数百 kW/cm2のナノ秒レーザー光を照射すると、可視付近の広い波長域で高速・可逆な光吸収変化が生じます(図1)。光吸収が増大する波長域と減少する波長域があるので、高速光スイッチやNOT型・AND型の光論理演算素子への応用可能性があります。強い光を当てると、半導体性金属酸化物中の電子分布が変化し、誘導吸収が起こるのではないかと考えられます。さらに、耐光性を一層高めた複合薄膜を開発しました。ゾル−ゲル法と熱分解法を組み合わせた方法で、Co3O4を微粒子化してガラス中に分散固定した薄膜は、誘導吸収特性を示し(図2)、Co3O4単独の薄膜よりも耐光性が向上します。透明なガラスは光吸収による温度上昇が小さく、微粒子の温度上昇を緩和したためと考えています。
3.発明者からのメッセージ
特定の金属酸化物が、耐光性の良い低毒性の誘導吸収材料となることを見いだしました。金属酸化物を微粒子化してガラスなどの透明マトリックスに分散固定すると、耐光性がさらに向上します。高速光スイッチなどへの応用が期待されます。![]() |
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| 図1 スパッタリング法で作製したCo3O4薄膜の誘導吸収特性(励起レーザー光:強度600 kW/cm2、パルス幅10 ns) | 図2 ゾル−ゲル法と有機酸金属塩熱分解法を用いて作製したCo3O4微粒子分散SiO2-ZrO2ガラス薄膜の誘導吸収特性(励起レーザー光:強度600 kW/cm2、パルス幅10 ns) |


