1.目的と効果
補体[※]の活性化は、炎症、ネクローシスなど、生体にさまざまな障害を引き起こすことがあります。可溶性補体レセプタータイプ1(sCR1)は、副作用がなく、補体系の活性化を抑制するため、心筋炎症・壊死(えし)の治療や、臓器移植時の拒絶反応の抑制などに有用な物質として注目されています。しかし、分子量が大きく、また糖鎖が活性に係るため、大腸菌を用いた発現系が使えません。この発明では、CHO細胞を用いて、簡便に高純度のsCR1を大量に生産できます。補体が関与する免疫、構造研究などにきわめて有効であり、新たな医薬品開発への道を拓くと期待されます。[適用分野]
● 免疫、臓器移植、炎症医療
2.技術の概要、特徴
この発明は、CHO細胞を用いたヒト由来sCR1の高純度製造法です。簡便で大量にsCR1を生産する細胞培養法と、それに続く高効率・高純度のカラムクロマトグラフィーによる精製法から構成されます。細胞培養は、(1)血清を含む栄養培地で細胞を増殖させる段階と、(2)無血清培地でsCR1の生産・分泌を活発化させる段階からなり、精製法は、アフィニティおよびサイズ排除クロマトグラフィーの2種類により構成されています。無血清培養を導入することにより、血清に由来するさまざまなタンパク質性夾雑(きょうざつ)物(不純物)が残留しなくなり、培養液に分泌させた目的タンパク質の純度に著しい向上がみられました。カラムとして、ヘパリンカラムとゲル濾過(ろか)カラムを用いることにより、簡便で迅速かつ経済的なシステムを実現しました。3.発明者からのメッセージ
発想の柔軟な切り替え、すなわち、細胞培養の条件を工夫することによって、後段の複雑なカラムワークから解き放たれ、目的のタンパク質を高純度で量産可能な生産系を構築することができました。しかし、この単純な“切り替え”にたどり着くまでには、研究の積み重ねと試行錯誤の日々がありました。この発明で考案、構築した調製法により、良質のsCR1を安定して供給できるようになりましたが、再生医工学領域の研究でさらに磨かれ、sCR1が副作用や危険性のない補体系、免疫系抑制薬剤として、移植医療などで広く役立つことを願っています。![]() |
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sCR1の大量調製および精製法 |
● 用語説明
[※]補体(補体系):生まれつき備わっている免疫系。免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、外部から侵入した異物を捕らえた抗体の働きを補います。


