1.目的と効果
ナノチューブやナノワイヤーなどの1次元ナノ構造体の合成には、Vapor(気相)−Liquid(液相)−Solid(固相)のいわゆるVSL成長メカニズムを利用して合成することが多く、この場合ナノワイヤーの成長のために触媒が必要であり、原料をガスとして供給する必要もあります。特にホウ素ナノワイヤーの場合毒性の強い原料ガスが必要となります。この発明ではレーザーアブレーションという手法を用いて、触媒ならびに危険性の高い毒性ガス原料を使用せずに、簡単な工程でホウ素の単結晶から構成されるベルト状ナノワイヤーを製造する方法を提供します。[適用分野]
● 正方晶系単結晶ホウ素のベルト状ナノワイヤーの製造
● ホウ素ナノワイヤーを利用したセンサー
● 原子力応用
2.技術の概要、特徴
純ホウ素の粉末を原料として、これをホットプレス法によって焼結させたタブレットをレーザーアブレーションのターゲットとします。このターゲットをアルゴンガス気流中で温度を700 ℃から1100 ℃に、また圧力を1 Paから70 Paに制御しながら、パルスレーザー光を集光照射して、ホウ素を気化蒸発させます。数時間レーザーを照射するとターゲット近傍に設置した捕集板上に図1に示すような繊維状の物質が堆積(たいせき)していきます。ホウ素を多く含む化合物は通常、12個のホウ素原子から構成される20面体クラスター(図2左上)が規則的に並んだ構造を取り、一般に菱面(りょうめん)体晶のβホウ素がホウ素単体の安定構造としてよく知られています。ところが、得られたベルト状ホウ素ナノワイヤーの結晶構造を詳細に調べると、図2左下に示した、正方晶の単位格子から構成される単結晶ワイヤー構造(図2右)であることが明らかとなりました。正方晶はこれまで、炭素や窒素などを微量含まないと安定化しませんでしたが、この発明で得られたナノワイヤーはこれらの元素を含まず、ホウ素単体の正方晶として初めて合成することができました。ホウ素は半導体であり、特に同位体のうち、10Bは大きな中性子吸収断面積をもつことから、ホウ素ナノワイヤーは原子力関連材料としての応用も期待されます。3.発明者からのメッセージ
ホウ素ナノワイヤーの物性はまだよくわかっていません。そこで、現在ナノワイヤーの製造法だけでなくナノワイヤーの物性評価やセンサー応用についても研究を進めています。![]() |
![]() |
|
| 図1 単結晶ホウ素のベルト状ナノワイヤーの電子顕微鏡写真 | 図2 α正方晶ホウ素のベルト状ナノワイヤーの構造 |


