1.目的と効果
この特許は近接場光を応用した超高密度光記録技術の研究開発中で生まれた派生技術に関するもので、貴金属ナノ粒子やワイヤーによってプラズモン光を大面積かつ均一に発生させるための手段を提供します。金属ナノ粒子・ワイヤーからのプラズモン光の発生は、高感度光分析、高密度光ストレージへの応用で注目されていますが、ナノ構造を大面積基板に均一形成する技術が存在しませんでした。この技術により貴金属ナノ構造をあらゆる基板に大面積で均一に形成することができます。
[適用分野]
● 光センサー、分子センサー、超高密度光ストレージ
2.技術の概要、特徴
ナノテクノロジーが注目を浴びる中で、さまざまなナノ粒子、ナノワイヤーなどが研究開発され、それらを応用した分子センシングの研究が盛んに行われています。とくに貴金属ナノ粒子は光の波長領域にプラズモンと呼ばれる電子励起波を発生できることから、ラマン分光などに応用すれば、従来に比べて10桁以上も高感度な光センシングが可能になることが知られています。とくに銀などのナノ粒子を用いれば、単一分子でさえ検出可能となります。しかし、サイエンスでは可能なことでも産業に簡単に応用できるものではなく、この技術も例外ではありません。この分光法の産業技術への応用展開を図る上で避けて通れない問題点は、「いかに均一にナノ粒子を基板上に分散し、固定化するか?」ということです。ナノ粒子の質量が非常に小さく、固定化する最後の段階で溶媒などの表面張力による局所的な力の不均一性によって一方で島状になったり、全く存在しない領域ができてしまうからです。発明者らは、貴金属酸化物薄膜を真空成膜法で望みの基板にあらかじめ形成し、この酸化膜から真空中で還元して酸素をのぞく処理により、貴金属ナノ粒子状薄膜を簡単にかつ短時間で作製する技術を開発しました。この特許を用いれば、表面張力にまつわるナノ粒子の局所的な凝集問題を解決し、大面積で貴金属ナノ粒子構造を提供することができます。
3.発明者からのメッセージ
凝集したナノ粒子が整列した写真を見るたび、写真の外側で不規則になる場所はどこからだろうと想像します。論文や学会発表の写真は配列のよいところしか撮影していません。技術の種はこうした写真の外側にあるのかもしれません。私たちの薄膜は10 cm離れた場所でも同じ構造をもっています。
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この特許を用いて得られる銀ナノ粒子状薄膜
ナノ粒子同士が結合してネット構造をもった銀膜
(ネットの直径は約20〜50 nm) |
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