1.目的と効果
液体窒素温度で超電導状態となる高温超電導体を薄膜にしてサファイアなどの単結晶基板上に被覆した超電導薄膜は、携帯電話基地局で用いられているマイクロ波フィルターや、落雷などによって電力系統に発生した事故電流を抑制する限流器へ応用されます。また、配向した金属テープに超電導薄膜を被覆した超電導テープ線材は、送電ケーブルや、発電機などへの応用が期待されています。それらに用いられる超電導薄膜の臨界電流密度やその分布を正確に把握して、薄膜の品質を管理することが重要です。[適用分野]
● 超電導情報通信デバイス
● パワーデバイス用の大面積薄膜やテープ線材の評価
2.技術の概要、特徴
図1に、超電導体に電流を流したときに電圧が発生する様子(電流電圧特性)を、電界(単位長さあたりの電圧)と電流密度の関係として示します。電気抵抗がゼロとなる超電導体には大きな電流を流すことができますが、ある決まった電流密度の値(臨界電流密度Jc)より大きな密度の電流を流すと電気抵抗が発生します。この値は、通常、100µV/mの電界が発生するときの電流密度として定義され、これを大きくすることがパワー応用において重要な課題です。これまで、超電導薄膜の上に置かれた小さなコイルに交流の励磁電流を流しつつ、誘導電圧の高調波成分を測定して、局所的なJcを非破壊的に測定する第3高調波誘導法が広く用いられて来ましたが、Jcを決定する電界基準を考慮していないために、正確な測定がなされていませんでした。発明者らは、コイル励磁電流の周波数を変えて複数回の測定を行うことにより、より正確なJcを得るとともに、試料の均質性の指標であるn値も同時に測定できることを示しました(図2)。3.発明者からのメッセージ
ここで赤く示されている区画は特性が少し劣化している部分ですが、Jcの低下よりも、n値の低下が顕著です。n値は、それ自身、パワー応用において重要なパラメータですが、Jcと同時に測定することによって特性劣化部分の検出が容易になるため、情報通信デバイス用の薄膜においても、その品質管理に大きく役立ちます。また、この方法によるJcとn値の測定は、薄膜に任意の方向の磁界が印加された場合でも可能ですので、金属基材超電導テープ線材のマグネット応用のための重要な特性を簡単に評価できます。
|
![]() |
|
図1 超電導体の電流密度と電界の関係を示す。高温超電導体では、多くの場合、べき乗の依存性 E ∝ Jn を示し、その指数n(エヌ値)は、試料の均質性の指標となる。 |
図2 5cm径高温超電導薄膜のJc(上の数字、MA/cm2)とn値(下の数字)の分布。 |

