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有機汚染物質の抽出方法

 −水蒸気を用いるPCB・農薬の簡便な回収法−
特許 第3740532 号(出願2002. 8)

1.目的と効果

 環境汚染への対処を適切に行うためには精確な分析技術が欠かせませんが、一般に分析試料の前処理(目的物質の抽出および定量を妨害する物質の除去)には、有害な有機溶媒などを使った時間と手間のかかる作業が必要とされています。この特許技術は、土壌などの試料からポリクロロビフェニル(PCB)・有機塩素系農薬など主に疎水性の有機化合物を簡易に回収するための分析前処理に関するもので、高感度・高精度な分析に対応可能です。

[適用分野]
 ● 固体試料からの分析対象物質の高効率な抽出・回収

2.技術の概要、特徴

 マイクロ波加熱−水蒸気蒸留法の原理を図1に示します。底部がガラスフィルターからなるガラス円筒に分析試料・水・非極性有機溶媒を入れ、耐圧容器内でマイクロ波を照射すると、有機溶媒を透過したマイクロ波により試料が加熱され、水蒸気とともに気化したPCBなどは、容器の内壁で凝結する有機溶媒中に溶けこんで回収されます。この際、系を高温にすることで気化が促進され、凝結した水が再度試料に浸透することで抽出が繰り返されます。有機溶媒と試料との直接接触がないために妨害物質の溶出は起こりにくく、抽出後の固液分離も不要であるため、得られた抽出液は、直接、ガスクロマトグラフ−質量分析計で分析可能です。この技術を使うことで、従来の方法に比べて分析に要する時間と溶媒の量とを大幅に低減することができます(図1)。海底質試料中のPCB・農薬等をこの方法で抽出して定量したところ、得られた分析値は他の抽出法によるものと一致しました(図2)。

3.発明者からのメッセージ

 環境への負荷や分析作業者に対する危険性の低いこの抽出法が、環境・食品等の安全性確保のために利用されるよう、広く実用化に向けた取り組みを進めていただけることを希望しています。

図1
図1 既存の抽出法(左)とマイクロ波加熱−水蒸気蒸留法(右)との比較

図2
図2 底質認証標準物質(NIST SRM1944)の分析結果
*準公定分析法:環境庁「外因性内分泌撹乱化学物質調査暫定マニュアル」(1998)に準拠


計測標準研究部門
PDF(246.3KB:産総研 TODAY Vol.6 No.10 p.30)

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