1.目的と効果
酸化亜鉛(ZnO)は、安定な励起子と大きなバンドギャップを持ち、また現在青色発光ダイオード等に用いられている窒化ガリウムより安いので、今後、電子光学素子の有力な素材として期待されています。しかし、格子欠陥により多くの伝導電子が発生するために、p型半導体化を含め素子化が困難です。私たちは、立方晶系酸化物の対称性整合面を用いたパルスレーザ蒸着法により、素子開発に応用できるZnOなどの六方晶系物質の高品質単結晶薄膜を作製する技術を開発しました。[適用分野]
● ZnO電子光学素子 ● 六方晶系単結晶薄膜・基板 ● レーザ成膜技術 ● 青色・白色発光ダイオード
2.技術の概要、特徴
ZnO等の素子作製では高品質単結晶薄膜の作製法が求められており、それを可能にする当技術を図に示します。単結晶薄膜の作製には、ZnOとできる限り似た結晶格子、つまり、類似した対称性と格子長を持つ基板が必要です。従来、基板にはZnOと同じ六方晶系の結晶構造を持つサファイア(Al2O3)が主に使われています(図2)。しかし、六角形の格子長aが約1.5倍もあるために、その上にZnOの高品質薄膜はできません。他に安価で格子長の合う基板がないことから、六方晶系の6回回転軸と類似の対称性(6回回反軸:S6)を持つ、図3に示すような立方晶系酸化物の(111)面を用いることで、高品質なZnO単結晶薄膜を作製できることが分かりました。幸い、適合する種々の立方晶系酸化物が存在します。ここでは、強力なパルスレーザ光をZnOの焼結ターゲットに照射して瞬間・パルス的に原子やイオン等の微粒子に分解・剥離させ、それをヒータ上にセットしてある基板、酸化物の(111)面、に当てて堆積させることで単結晶性薄膜を作製するパルスレーザ蒸着法(PLD法; 図1)を用いて、ZnOの高品質薄膜を作製しました。
3.発明者からのメッセージ
この方法は、立方晶系酸化物の(111)面を使って六方晶系物質のc軸配向単結晶薄膜を作製するものです。基板としてはLSAT、SrTiO3、LaAlO3、MgOなど、膜物質としてはZnO、Ti2O3等の酸化物の他、BやAl等の窒化物などに適用可能であり、他の成膜方法にも応用できます。![]() |
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図1 パルスレーザ蒸着による成膜(PLAD装置概略)
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図2 六方晶系の単位格子
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図3 立方晶系の単位格子
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