1.目的と効果
有機結晶は柔らかく、レーザー光等の入射率及び変換効率を低下させる傷やへこみ等を生じやすい。非線形光学材料として用いられる有機結晶も単結晶の部材ですが、その作製には長い時間を要するため、作業中に受けてしまった損傷部分を修復することができれば、効果的・経済的です。この方法は有機結晶表面または有機結晶による表面被覆層を分子レベルの平坦性(または傷のない周辺部と同等の平坦性)を有するまでに修復させる方法です。
[適用分野]
● 光情報通信分野(非線形光学材料) ● 半導体産業(電界センサー、 単結晶有機半導体レーザー、単結晶有機トランジスタ)
2.技術の概要、特徴
原子間力顕微鏡のコンタクト法またはそれと類似の微小な加重の制御方法を用いて、先端曲率半径1〜100nmの探針に加重を1〜100nNの範囲に設定して、傷やへこみ等の周辺のみを走査します。これにより、傷やへこみを周辺の有機結晶で修復し、テラスにおいては分子レベルで平坦な表面に回復されます。(このような表面は中心線表面粗さが5nm以下の表面平坦性に優れた有機結晶、有機イオン結晶または有機結晶による表面被覆層に回復させることができます。)本法と類似の方法を用いれば、分子レベルで平坦なテラスを600nm四方まで拡大することができ、この広さはレーザー光径300µmに比べて小さいものですが、600nmごとに1nmのステップがあったとすれば、光学特性の乱れは高々0.2%であり、ステップの存在は無視し得る範囲です。この結果は1µmスキャナーで得られており、より広域スキャナー(125µmなど)を用いれば、さらに拡大できます。3.発明者からのメッセージ
この方法では、研磨紙による方法のように昇温や削り子による損傷、砥粒の埋め込みなどの心配がなく、高品位、高純度を保ったまま修復できます。特に、イオン結晶の場合にはイオンバランスを利用することにより、イオンの不整合を起こさずに傷を修復できるという点でも優れた方法といえます。
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図 原子間力顕微鏡のコンタクト法を用いた走査によって結晶表面の欠損が修復される様子 |

