1.目的と効果
合成抗菌剤は、安価・大量に合成可能であり、広範囲の微生物に対して有効に作用する利点がありますが、人体、生態系への安全性の確保には十分な留意が必要です。植物や微生物等の天然由来の物質・成分は、安全性が高いものが多く、また経時的に分解し、生態系への影響が少ないと考えられます。我々の研究グループでは、同一の培地を使用して酵母の培養を繰り返し行った場合、その培地では酵母のみならず細菌もまた増殖が顕著に抑制されることを見出しました。本技術は、微生物汚染・腐敗が危惧される分野において、生態系に優しい対応技術としての適用が期待できます。
[適用分野]
● 食品保存料 ●医薬品 ● 抗菌性材料
2.技術の概要、特徴
本発明技術は、酵母の増殖過程で産生される、食品に対して有害な細菌の増殖を阻害する抗菌性物質を含む食品保存料の製造方法に関するものです。酵母の培養において、同一培地を繰り返し使用した場合、その増殖量の急激な低下が顕著であり、最終的には全く増殖しなくなる現象が認められます。酵母の培養を繰り返したこれらの培地では、大腸菌や枯草菌などの増殖もまた同様に抑制されました。また、本調製培地の抗菌効果は、煮沸程度の加熱処理で失われることはありませんでした。一方で、その培地を活性炭で処理することにより酵母の増殖が可能となります。これらのことは、酵母の増殖過程で抗菌性物質が産生され、それらは活性炭によって吸着・除去されたことに基づくものと考え、本発明に到達しました。
微生物に由来する食品保存料の一つとして、乳酸菌が産生する抗菌物質(ナイシン)が知られていますが、これはグラム陽性菌に対してのみに抗菌性を呈します。酵母がその増殖過程で自ら抗菌性物質を産生し、それらはグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に抗菌活性を有することは、従来全く知られていませんでした。
3.発明者からのメッセージ
本技術は、醸造、発酵食品、製パンなど酵母という古くから我々の生活に係わりの深いある微生物を用いて、広範囲の細菌に対する抗菌性物質を産生させるものであり、食品保存料等としての適用を考えています。本技術の広範な利活用をご検討頂ける方々からのご連絡をお待ちしています。
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図1 酵母(Shizosaccharomyces pombe)の繰り返し培養から得られた 培地の抗菌効果 |
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図2 酵母培養培地抽出物の 大腸菌に対する抗菌性試験 |


