1.目的と効果
医療技術の進歩により、放射線を用いて血管造影が可能となった結果、血管内で疾病を治療する血管内手術が行われるようになりました。具体的には脳出血などの疾患部に血管内カテーテルで塞栓物質を注入し、血管の漏れを防ぐ治療が行われています。これまでは塞栓剤として瞬間接着剤系統の重合性モノマーあるいは有機溶媒を血中で拡散させて高分子を析出させる方法が行われていました。これらは接着性による合併症あるいは有機溶媒による副作用の問題があり、安全で調整可能な塞栓剤の開発が必要です。本発明は、温度により相転移を起こす高分子を用いて、水溶性で安全な新たな塞栓剤の開発を行ったものです。
[適用分野]
●血管内手術用塞栓剤
●局在性ドラッグデリバリーシステム
2.技術の概要、特徴
本発明はある種の高分子が低温で完全に水溶性で、高温で相転移を起こして不溶化さらに析出する挙動に着目し、水中で転移温度が10〜30℃である特定のポリアクリルアミド系あるいはポリメタクリルアミド系感熱性高分子化合物を所定の濃度で含有する水溶液を用いることにより、カテーテル等を用いて血管の塞栓を起こさせることができました。写真はウサギの腎臓に当該高分子をカテーテルにより注入し塞栓を起こさせた血管造影です。同じウサギのもう一方の腎臓は全くクリアであることが示されています。また、この感熱性高分子をマウス腹腔内に注入し、副作用について3ヶ月間観察しましたが、対照群と比較して全く異常を認めませんでした。3.発明者からのメッセージ
感熱性高分子は産総研のオリジナルな研究です。この技術をバイオに応用できないかと思っていたところ、筑波大学の脳神経外科から共同研究の申し入れがあり、研究開発が進みました。アクリルアミドの神経毒が危惧されたのですが、高分子にすると神経毒がないことも示されました。最近のゲノム分子標的医薬ではポリエチレングリコールによるタンパク質の修飾などが注目されていますが、今後多くの高分子が医療に展開していくと期待しています。![]() |
●写真 ウサギの腎臓の血管造影 |

