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発表・掲載日:2002/02/19

高並列グラフィックスPCクラスタを開発

-パソコン部品の利用により低価格な超高速計算・可視化システムを実現-

ポイント

  • これまで「数値流体シミュレーション」や「3次元医用画像処理」などの結果として生じる「大規模ボリュームデータ」を高速に可視化する手段がなかった。
  • PC用の高性能グラフィックスプロセッサの性能を並列化する「フレーム重畳装置」と、それを用いた「PCクラスタ」を開発(VGクラスタシステム)。
  • 大規模数値計算の経過を瞬時に視覚的にモニタリングできるようになるので作業効率が飛躍的に向上する。
VGクラスタシステムの写真
VGクラスタシステム

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ボリュームグラフィックス連携研究体【体長 村木  茂】は、三菱プレシジョン株式会社 【代表取締役社長 立光 武彦】(以下「MPC」という)と共同で、従来のPCクラスタシステムにリアルタイム映像生成機能を加えた「ボリュームグラフィックスクラスタ(以下「VGクラスタ」という)」を開発した。

 昨今、数値流体シミュレーションや3次元医用画像処理などの大規模ボリュームデータの処理にPCクラスタを利用する例が増えてきているが、これまでは処理結果の大規模ボリュームデータを高速に可視化する手段がなかった。 この度、産総研とMPCは、PC用の高性能グラフィックスプロセッサ(GPU)の性能を並列化する「フレーム重畳装置」を開発し、大規模ボリュームデータの計算と可視化をリアルタイムで実行できるVGクラスタシステムの商品化に成功した。

 この技術によって、大規模数値計算の計算経過を瞬時に視覚的にモニタリングすることが可能となり、数値流体シミュレーションや3次元医用画像処理の作業効率が飛躍的に向上すると期待される。

 今後は、VGクラスタ技術を各分野へ適用するための共同開発をさらに進めていくとともに、MPCにおいては、VGクラスタシステム及び関連製品の販売を開始する。

 本VGクラスタ試作品のデモンストレーションが、3月20日(水)に日本科学未来館(東京都江東区青海)で開催される第一回PCクラスタシンポジウム(企業展示)において行われる予定。


研究の背景

 最近、PCクラスタと呼ばれる技術が世界的に注目されている。大量のパーソナルコンピュータ(PC)を超高速ネットワークで接続し、MPICH等のクラスタソフトウェアをインストールすることで、ベンチマーク性能でスーパーコンピュータを凌駕する並列計算機を、誰もが非常に低いコストで作れるようになった。ところが、こうした数値計算だけのPCクラスタ技術では、結果を把握するために別のワークステーションにデータを転送して可視化する必要があった。

 各PCに装備されているグラフィックスプロセッサ(GPU)の能力を並列化して可視化処理に利用することができれば、PCクラスタ上で計算と可視化を同時に行うことが可能となり、処理効率は飛躍的に増大する。しかし、汎用のネットワークとPCの中央演算ユニット(CPU)を使った低速な並列化では、各GPUの性能を十分に引き出すことができなかった。

研究の経緯

 PCクラスタのユーザーは、大学、研究所、医療機関などの極端に高度な研究に携わる機関に限られるため、このような分野の問題をメーカーが単独で研究するには経済的なリスクが大きい。そこで、ボリュームグラフィックス技術を得意とする「産総研」と、各種シミュレーション装置及びそのリアルタイム映像発生装置を開発している「MPC」は、旧工業技術院での研究「実時間生体機能情報処理のためのビジュアルコンピューティング技術」や、産総研産学官連携部門の連携研究体制度などの研究予算を活用してこの問題の研究に取り組み、今回「ボリュームグラフィックス(VG)クラスタ」の開発に成功した。

研究の内容

 グラフィックス処理の並列化には、画面を分割する方法と、対象物体を分割する方法の二通りがあるが、VGクラスタは新開発のフレーム重畳装置によって両者を混在して使用できる。フレーム重畳装置は、各PCのGPU出力を毎秒1ギガビット以上の速度で入力し、対象物の「色」と「不透明度」と「前後関係」を考慮しながら並列に合成して可視化映像を出力できるので、PCクラスタの数値計算性能と組み合わせれば、計算流体力学や生体機能解析などのリアルタイムシミュレーションに威力を発揮する。

 画像生成のスピードは、対象とするデータの規模や画面サイズにより異なるが、VGクラスタシステムの高い拡張性により、画面分割と空間分割を問題サイズに応じて組み合わせることで、常にリアルタイム計算可視化システムを構成することができる。

今後の予定

 今後は、VGクラスタ技術を各分野へ適用するための共同開発をさらに進めていくとともに、各サイトにあるVGクラスタを広域ネットワーク上で並列稼動させるシステムの開発や、バーチャルリアリティー等で用いられる多画面及び没入型のディスプレーに対応したシステムの開発を検討していく。

 また、MPCにおいては、「VGクラスタシステム」又は「フレーム重畳装置のキット」を各大学、研究機関等へ販売していく。


用語の説明

◆連携研究体
産総研知的所有権ライセンシングのため、産学官連携部門に置かれる一時的な共同研究組織。ボリュームグラフィックス連携研究体は、産総研、MPC、お茶の水女子大学、カリフォルニア大学デービス校などと共同研究を行っている。[参照元へ戻る]
◆VGクラスタ
ボリュームデータの可視化機能を特別に強化したPCクラスタ。数値流体シミュレーションや3次元医用画像処理のリアルタイム処理と可視化に適している。[参照元へ戻る]
◆ボリュームデータ
断面画像を積み重ねた構造を持つ3次元画像。コンピュータグラフィックスにおける形状表現法の一つであり、形状の表面だけを表現するポリゴンデータと異なり、物体内部の情報を持つことができる。[参照元へ戻る]
◆グラフィックスプロセッサ(GPU)
パソコンやワークステーションの映像生成を専門に行うハードウェア。昔のビデオコントローラーが機能的に格段に進化し、最近ではデータ処理能力で中央演算装置(CPU)を凌ぐ程になったGPUにはポリゴンデータを扱うものとボリュームデータを扱うものがあるが、VGクラスタはその両方ともに対応が可能である。[参照元へ戻る]
◆フレーム重畳装置
PCクラスタの複数のPCで別々に生成される部分映像を合成して、一つの完成映像を合成するハードウェア。装置本体、PCに挿入するインタフェースカード、ケーブルから成る。[参照元へ戻る]
◆第一回PCクラスタシンポジウム
経済産業省リアルワールドコンピューティングプロジェクトを推進した技術研究組合 新情報処理開発機構の成果を引き継ぎ、2001年10月4日に発足したPCクラスタコンソーシアムが主催する最初のシンポジウム。 (参考: http://www.pccluster.org/ ) [参照元へ戻る]
◆MPICH
米国アルゴンヌ国立研究所とミシシッピ州立大学が共同で開発した並列計算機用メッセージ通信ライブラリ。PCクラスタで良く利用される。VGクラスタでも使用される。[参照元へ戻る]
◆計算と可視化を同時に行う
従来のシミュレーションでは、スーパーコンピュータなどの数値計算結果を別のグラフィックス専用計算機で可視化する方法が主流であった。VGクラスタは自分で計算しながら途中経過を随時可視化するような使い方に適しているので、もし途中経過に異常がみつかった場合、すぐにシミュレーションを中止して別の条件でやり直すことができ、作業効率が飛躍的に向上する。[参照元へ戻る]
◆画面を分割する方法
画面の一部を一つのPCに描画させることで、複数のPCで一つの完成画像を描画する方法。[参照元へ戻る]
◆対象物体を分割する方法
ボリュームデータやポリゴンデータを部品に分割し、各部品を一つのPCで描画した部分画像の画素の遠近関係を使って、完成画像を合成する方法。[参照元へ戻る]


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