| 産業技術総合研究所 第3期 中期計画 |
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【別表2】 地質の調査(地質情報の整備による産業技術基盤、社会安全基盤の確保) 活動的島弧に位置する我が国において、安全かつ安心な産業活動や生活を実現し、持続可能な社会の実現に貢献するために、国土及び周辺地域の地質の調査とそれに基づいた地質情報の知的基盤整備を行う。地球をよく知り、地球と共生するという視点に立ち、地質の調査のナショナルセンターとして地質の調査研究を行い、その結果得られた地質情報を体系的に整備する。地質情報の整備と利便性向上により産業技術基盤、社会安全基盤の確保に貢献する。また、地質の調査に関する国際活動において我が国を代表し、国際協力に貢献する。 1.国土及び周辺域の地質基盤情報の整備と利用拡大 国土の基本情報である地質基盤情報を、地球科学的手法により体系的に調査、整備するとともに、利用技術の開発と普及を行う。国土と周辺域における地質の調査を実施し、社会の要請に応えた地球科学基本図(地質図幅、重力図、空中磁気図、海洋地質図、地球化学図、地球物理図等)の作成、衛星画像情報との統合化等の地質情報の整備を行う。上記地質基盤情報を電子メディアやデータベースとして社会に普及させる体制を整備する。 1-(1) 陸域・海域の地質調査及び地球科学基本図の高精度化 長期的な計画に基づき、国土の地質基盤情報である5万分の1の地質図幅の作成、20万分の1の地質図幅の改訂並びに20万分の1の重力図及び空中磁気図の作成を行う。また、海域の環境変動の予測や資源評価の基礎データとして海洋地質図を整備する。さらに、これらの地球科学基本図の利用を促進するために必要なデータベースを整備し、公開する。調査結果の信頼性向上に必要な地質標本の標準試料化と保管及び地質情報の標準化等を行う。 1-(1)-@ 陸域の地質調査と地質情報の整備 国土の基本情報としての地質の実態を体系的に解明し社会に提供する。都市基盤整備や防災等の観点及び地質情報の標準化と体系化の観点から重要な地域を重点的に、5万分の1地質図幅20区画を作成する。全国完備を達成した20万分の1地質図幅については、更新の必要性の高いものについて3区画の改訂を行い、日本全域については最新の地質情報に基づき、地層及び岩体区分の構造化と階層化を行った次世代の20万分の1日本シームレス地質図を作成する。 1-(1)-A 海域の地質調査と海洋地質情報の整備 沖縄周辺海域の海洋地質調査を実施し、海洋地質図の作成に必要な海底地質、地球物理、堆積物に関する基礎情報を取得するとともに、既に調査済みの海域も含めて、海洋地質図10図を整備する。取得した地質情報を、海域の環境変動の予測や資源開発評価、海域及び海底利用の基礎データとして社会に提供する。 1-(1)-B 地球科学基本図等の高精度化 国土の地球科学基本図等に関する基盤情報のデータベースを整備、公開する。地質情報の高信頼化と高精度化を図るために、岩石・ボーリング試料等で得られた地質標本の標準化及び保管と管理を行う。また、地質凡例や地質年代等の標準化を行う。地質情報整備支援のために、地質標本の薄片・研磨片等を作成する。ISO に準拠した地球化学標準試料3個を作製する。 1-(2) 都市域及び沿岸域の地質調査研究と地質情報及び環境情報の整備 沿岸域に立地する多くの都市における地質災害の軽減に資するため、地質図の空白域となっている沿岸域において最新の総合的な地質調査を実施し、海域−沿岸域−陸域をつなぐシームレスな地質情報を整備する。 1-(3) 衛星画像情報及び地質情報の統合化と利用拡大 自然災害、資源探査、地球温暖化、水循環等に関する全地球的観測戦略の一環として、衛星画像情報のアーカイブ、地質情報との統合を図る。また、シームレス化、デジタル化された地質情報と衛星情報から、新たな視点の地質情報を得ることを可能にする技術の開発を行う。また、情報通信速度の向上や画像処理技術の進展に応じて、新たなデータを統合してデータベースとして提供する等の対応を行う。 1-(3)-@ 衛星画像情報及び地質情報の統合化データベースの整備 (W-2-(2)-@へ再掲) 衛星データ利用システム構築に資する衛星画像情報を整備し、地質情報との統合利用により、鉱物資源のポテンシャル評価や火山、地震、津波等の災害情報等に利活用する。また、情報通信技術との融合により、シームレス化、データベース化された地質情報と衛星画像情報の統合化データベースを整備し、新たな視点の地質情報を抽出するための利活用方法の研究を実施する。 2.地圏の環境と資源に係る評価技術の開発 地球の基本構成要素である地圏は、天然資源を育むとともに地球の物質循環システムの一部として地球環境に大きな影響を与える。地球の環境保全と天然資源の開発との両立は近年ますます大きな問題になっている。地圏の環境保全と安全な利用、環境に負荷を与えない資源開発及び放射性廃棄物地層処分の安全規制のため、地圏システムの評価、解明に必要となる技術の開発を行う。 2-(1) 地圏の環境の保全と利用のための評価技術の開発 土壌汚染、地下水汚染問題に対し、環境リスク管理に必要な評価技術の開発を行う。また、地球環境における低負荷のエネルギーサイクル実現のため、二酸化炭素地中貯留及び地層処分等の深部地層の利用に関する調査及び評価技術の開発を行う。 2-(1)-@ 土壌汚染評価技術の開発 土壌汚染等の地圏環境におけるマルチプルリスクの評価手法を構築し、産業のリスクガバナンスを可能にするため、統合化評価システム及び地圏環境情報データベースを開発する。また、物理探査技術による土壌汚染調査の有効性を検証し、原位置計測や試料物性計測技術との併用による土壌汚染調査法を構築する。さらに、地圏環境の統合化評価手法を発展させ、水圏及び地表の生活環境における様々なリスクを適切に評価するための技術体系を確立する。 2-(1)-A 二酸化炭素地中貯留評価技術の開発 (T-6-(6)-Bへ再掲) 早期実用化を目指して、二酸化炭素地中貯留において、二酸化炭素の安全かつ長期間にわたる貯留を保証するための技術を開発する。大規模二酸化炭素地中貯留については、複数の物理探査手法を組み合わせた効率的なモニタリング技術の開発、二酸化炭素の長期挙動予測に不可欠である地下モデルの作成や精緻化を支援する技術及び長期間にわたる地層内での二酸化炭素の安定性を評価する技術を開発する。 2-(1)-B 地層処分にかかわる評価技術の開発 処分計画における地下水シナリオの精度を向上させるため、原位置実証試験による水理学的研究や環境同位体を用いた地球化学的研究を実施し、沿岸部深部地下水の流動環境と組成を把握する。また、沿岸域の地質構造評価のため、浅海域電磁探査法の適用実験及び改良による実用的な探査手法を構築するとともに、海陸にわたる物理探査データ解析・解釈法を開発する。さらに、処分空洞周辺の超長期間の緩み域の広がりを把握するために必要な技術基盤を開発する。 2-(2) 地圏の資源のポテンシャル評価 地圏から得られる天然資源である鉱物、燃料、水、地熱等を安定的に確保するため、効率的な探査手法の開発を行う。また、新鉱床等の発見に貢献することを目的として、資源の成因及び特性解明の研究を行う。さらに、各種資源のポテンシャル評価を行い、資源の基盤情報として社会に提供する。このような資源に関する調査、技術開発の知見を我が国の資源政策、産業界に提供する。 2-(2)-@ 鉱物及び燃料資源のポテンシャル評価 (T-3-(3)-Bへ一部再掲) 微小領域分析や同位体分析等の手法を用いた鉱物資源の成因や探査法に関する研究、リモートセンシング技術等を用いて、レアメタル等の鉱床の資源ポテンシャル評価を南アフリカ、アジア等で実施し、具体的開発に連結しうる鉱床を各地域から抽出する。 2-(2)-A 地下水及び地熱資源のポテンシャル評価 (T-1-(2)-Bへ一部再掲) 我が国の地下水及び水文環境の把握のため、全国の平野部を中心に整備を進めている水文環境図を2図作成する。また、工業用水の安定的な確保のため、全国の地下水資源ポテンシャル図を整備する。 2-(3) 放射性廃棄物処分の安全規制のための地質環境評価技術の開発 高レベル放射性廃棄物の地層処分事業に対し、国が行う安全規制への技術的支援として、地質現象の長期変動及び地質環境の隔離性能に関する地質学的、水文地質学的知見を整備し、技術情報としてとりまとめる。また、放射性核種移行評価に向けての技術開発を行う。 2-(3)-@ 地質現象の長期変動に関する影響評価技術の開発 高レベル放射性廃棄物地層処分における概要調査結果に対する規制庁レビューの判断指標として、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律及び原子力安全委員会の環境要件に照らし、隆起侵食活動、地震・断層活動、火山・火成活動等の”著しい地質変動”の活動履歴及び将来予測において必要となる各変動の発生位置、時代等の不確実性を低減するための調査及び評価手法の適用性評価と長期的な予測手法の開発に向けた検討を行う。また、処分深度の深層地下水の性状、その起源及び流動プロセスの把握手法を開発する。これらの手法の適用結果を、データベースとして取りまとめて国に提供する。さらに、各種の地質変動が深層地下水流動に及ぼす水文地質学的変動モデルの開発に向けた検討を行う。以上の成果を技術情報として取りまとめ、公表する。 2-(3)-A 地質環境の隔離性能に関する評価技術の開発 高レベル放射性廃棄物地層処分における精密調査結果に対する規制庁レビューの判断指標として、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律及び原子力安全委員会の環境要件に照らし、岩盤の強度、地下水の化学的性質、地下水流動に関する不確実性を低減するための水理・化学環境調査、評価手法の開発、整備と、調査手法及びデータの品質管理に関する評価手法を整備する。また、自然事象等の外的要因が地下水流動、化学的環境に及ぼす影響を評価するための室内実験手法、解析手法を整備した上、シナリオに基づく長期的な変動が地下水流動、核種移行に及ぼす影響予測手法を開発、整備する。以上の成果を技術情報として取りまとめ、公表する。 3.地質災害の将来予測と評価技術の開発 地震、火山活動等による自然災害の軽減に必要な、科学的根拠に基づく地震と火山活動の予測が期待されている。その実現のために、調査及び観測情報に基づいて地震及び火山活動履歴を明らかにし、また地震及び火山活動のメカニズム解明を目指した調査、研究を実施する。 3-(1) 活断層調査、地震観測等による地震予測の高精度化 陸域及び沿岸海域の活断層や過去の巨大津波発生状況について古地震調査を行い、将来の地震発生危険度や発生しうる津波の規模を明らかにする。内陸地震の発生と地盤変形の予測に必要な物理モデルの構築とシミュレーション手法を提案する。また、東海・東南海・南海地震を対象とした海溝型地震の短期予測システムを構築する。さらに、これら調査研究結果の情報公開を行う。 3-(1)-@ 活断層評価及び災害予測手法の高度化 陸域及び沿岸海域の25以上の活断層について古地震調査を行い、過去数千年間の断層挙動を解明することにより将来の地震発生危険度を明らかにする。また、調査結果のデータベース化と情報公開を進める。 3-(1)-A 海溝型地震及び巨大津波の予測手法の高度化 東南海・南海地震を対象とした地下水等総合観測施設を整備し、既存の観測データと統合して解析を進め、駿河トラフ・南海トラフで発生する東海・東南海・南海地震の短期予測システムを構築する。 3-(2) 火山噴火推移予測の高精度化 活動的火山の噴火活動履歴調査を実施し、噴火活動の年代、噴出量、マグマ組成や噴火様式等の変遷を明らかにするとともに、噴火の規則性や噴火様式の時間的変化を支配するマグマの発達過程のモデルを提示する。また、火山噴出物、噴煙、熱・電磁気学的変動、地殻変動等の観測研究により火山活動推移を把握するとともに、室内実験や数値実験との総合解析により、噴火準備、脱ガス及び噴火発生過程のモデルを提示する。さらに、これらの研究成果をもとに、データベースの整備及び火山地質図3図の作成を行うとともに、噴火活動の推移予測の基礎となる噴火シナリオを作成する。 4.地質情報の提供、普及 社会のニーズに的確に応じるために、知的基盤として整備された地質情報を活用しやすい方式、媒体で提供、普及させる。また、地震、火山噴火等の自然災害発生時やその予兆発生時には、緊急調査を実施するとともに、必要な地質情報を速やかに発信する。 4-(1) 地質情報の提供、普及 地質の調査に係る研究成果を社会に普及させるため、地質の調査に関する地質図類等の成果の出版及び頒布を継続するとともに、電子媒体及びウェブによる頒布普及体制を整備する。地質標本館の展示の充実及び標本利用の促進に努め、地質情報普及活動、産学官連携、地質相談等により情報発信を行う。また、インターネット、データベース等の情報技術の新たな動向を注視し、情報共有、流通の高度な展開に対応する。 4-(1)-@ 地質情報の提供 社会のニーズに的確に応じた地質情報提供のための地質情報共有、流通システムを構築する。地質の調査に関する地質図類等の成果の出版及びベクトル数値化等による地質情報の高度利用環境の整備を進める。20以上の地質図類等の出版を行うとともに、6つ以上の既存地質図幅のベクトル化を実施する。 4-(1)-A 地質情報の普及 地質情報普及のため、地質標本館の展示の充実及び利用促進に努め、地質情報展、地質の日、ジオパーク等の活動を行う。また、産学官連携、地質相談業務、地質の調査に関する人材育成を実施し、展示会、野外見学会、講演会等を主催する。さらに、関係省庁、マスコミ等からの要請に応え正確な情報を普及させる。具体的には、地質標本館では、年3回以上の特別展や、化石レプリカ作りのイベント等を実施し、年30,000人以上の入場者に対応する。また、つくば科学フェスティバル出展対応を毎年実施する。ジオネットワークつくばにおいて、10回以上のサイエンスカフェと6回以上の野外観察会を実施する。地質情報展を毎年開催し、1,000名以上の入場者に対応する。地質の日については、イベントを毎年実施する。ジオパーク活動については、日本ジオパーク委員会(JGC)を年2回以上開催し、世界ジオパークを2地域以上、日本ジオパークを5地域以上認定するための支援活動を行い、地域振興に貢献する。 4-(2) 緊急地質調査、研究の実施 地震、火山噴火等の自然災害時には緊急の対応が求められることから、災害発生時やその予兆発生時には、社会的要請に応じて緊急の地質調査を速やかに実施する。具体的には、想定東海地震の観測情報等発令時、国内の震度6強以上を記録した地震、又はM6.8以上の内陸地震及び人的被害の想定される火山噴火のすべてに対応する。すべての緊急調査について、ホームページ上で情報公開する。 5.国際研究協力の強化、推進 産総研がこれまでに蓄積した知見及び経験を活かし、アジア太平洋地域及びアフリカを中心とした地質に関する各種の国際組織及び国際研究計画における研究協力を積極的に推進する。地質災害の軽減、資源探査、環境保全等に関する国際的な動向及び社会的、政策的な要請を踏まえ、プロジェクトの立案、主導を行う。 5-(1) 国際研究協力の強化、推進 産総研がこれまでに蓄積してきた知見及び経験を活かし、アジア、アフリカ、南米地域を中心とした地質に関する各種の国際研究協力を積極的に推進する。地質情報の整備、地質災害の軽減、資源探査や環境保全等に関する研究プロジェクトを国際組織及び国際研究計画を通して推進する。東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)の総会・管理理事会に毎年参加するとともに、CCOP プロジェクトを実施する。統合国際深海掘削計画(IODP)やOneGeology(全地球地質図ポータル)、世界地質図委員会(CGMW)等の国際プロジェクトにおいて、アジアの地質図編集やデータ整備等について貢献する。 |