| 産業技術総合研究所 第3期 中期計画 | [PDF全文:576KB] |
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認可 平成22年3月29日 独立行政法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」という。)は、平成13年4月の発足以来、旧工業技術院時代の研究所単位の研究活動を統合して、今後の産業技術シーズとなる大学等の基礎的研究の成果を民間企業が行う製品化につなぐために出口を見据え基礎から製品化に至る連続的な研究(「本格研究」)を一貫して推進し、我が国のイノベーション創出に大きく貢献をしてきた。また、同時に、研究所内の資源配分を旧工業技術院の枠組みにとらわれずに最適化し、社会的、政策的な研究ニーズに応じて機動的かつ柔軟に研究組織の廃止又は新設を行う等の適時、かつ、適確な見直しを行い、イノベーション創出と業務の効率化を両立させるよう努めてきた。 このような取組により、これまでに管理費を削減するなどの効率化を図る一方で、第1期、第2期中期目標期間における特許や計量標準等の目標を達成するとともに、国際的な研究開発能力の指標である論文被引用件数についても材料科学分野では世界第4位、化学分野では世界第19位と高い成果を挙げてきた。 第3期は、近年の技術の高度化、複雑化により基礎的研究と製品化研究の間に存在する技術課題が増大し、基礎的研究の成果を製品化につなぐという産総研の機能がこれまで以上に重要とされる中、政府として実現を目指している「課題解決型国家」に貢献するため、「21世紀型課題の解決」「オープンイノベーションハブ機能の強化」を大きな柱に位置づけて、重点的に研究開発等に取り組む。 @21世紀型課題の解決 ○経済と環境の両立、国民生活向上等への研究開発による貢献 経済と環境を両立する「グリーン・イノベーション」の推進のため、太陽光発電等の低炭素社会実現に貢献する技術等を開発するとともに、国民生活向上のための「ライフ・イノベーション」の推進のために、創薬、医療、介護を支援する技術等の開発を行う。また、産総研の優位性を活かし情報通信技術、材料、部材技術等の革新的な技術開発を行う他、地域においても、地域ニーズを踏まえた国内最高水準の研究開発を行う。○新時代の産業基盤の整備 計量標準の充実及び高度化、地質情報の整備等とともに、新規技術の性能及び安全性評価、国際標準化等により、産業や社会の「安全・安心」を支える基盤整備を行う。 Aオープンイノベーションハブ機能の強化 ○新たなイノベーションシステムの構築 産学官が一体となって研究開発や実用化、標準化等を推進するための「場」を産総研が提供する。産総研施設の外部利用、地域の中小企業等やアジア等との連携を含め、オープンイノベーションのハブとなるための新たなイノベーションシステムを構築する。○イノベーティブな人材養成の推進 我が国の産業技術の向上に資することができる人材を社会に輩出するため、ポスドク等の若手研究者の育成や中小企業等の企業研究者の受入れ等を行う。 産総研は、上記の取組を実施するにあたり、例えば「グリーン・イノベーション」分野での太陽光発電技術等や「ライフ・イノベーション」分野での生活支援ロボット等、産総研が第1期、第2期中期目標期間を通じて蓄積してきた実績を更に発展させる形で、取り組む。また、産総研が果たすべき社会における役割を強く認識し、我が国社会の一員として、また各研究拠点が設置されている地域社会の一員として、社会に開かれ、社会で活用され、社会とともに歩むことを通じて、世界をリードする研究成果等を創出することにより、人類の持続的成長に大きく貢献する。 |
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I.国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項 1.「課題解決型国家」の実現に向けた研究開発の重点分野 (1)世界をリードする「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」の推進 ・グリーン・イノベーションの推進のため、太陽光発電、次世代自動車、ナノ材料、情報通信の省エネルギー化等の技術開発を加速化する。太陽光発電技術については、大幅な性能向上と低コスト化を目指し、薄膜シリコン等の太陽電池デバイス材料の効率を相対値で10%向上させるとともに、太陽光発電システム普及のための基盤となる基準セル校正技術、性能・信頼性評価技術等を開発し、それらを産業界に供給する。 ・ライフ・イノベーションの推進のため、先進的、総合的な創薬支援、医療支援、遠隔医療支援、介護・福祉ロボット等の技術開発を推進する。創薬、再生医療技術については、創薬過程の高速化や再生医療基盤整備のために、iPS 細胞の作製効率を10倍程度(現行1%から10%程度に)に引き上げる技術を開発する。 ・技術のシステム化としては、電力エネルギーの高効率利用のための低損失高耐圧なパワーデバイス技術等と再生可能エネルギー利用機器とを組み合わせて安定した電力を供給するためのネットワークの設計及び評価、マネジメントの技術等の開発を行う。また、早期の社会導入を目指して、数十戸規模の住宅を対象とした実証研究を行う。 (2)他国の追従を許さない先端的技術開発の推進 ・デバイス材料のナノ構造の最適化により、省エネルギー型ランプの光源となる光取出し効率80%以上の超高効率な赤色及び黄色発光ダイオードを開発する。 ・マイクロ電子機械システム(MEMS)製造技術により超小型の通信機能付き電力エネルギーセンサチップを試作し、電力エネルギー制御の最適化によりクリーンルーム等の製造現場の消費エネルギーを10%削減するシステム技術の開発を行う。 2.地域活性化の中核としての機能強化 (1)地域経済の競争力を支える最高水準の研究開発の推進 ・各地域センターは、北海道センターの完全密閉型遺伝子組換工場等を利用したバイオものづくり技術や関西センターの蓄電池関連材料の評価技術等に基づくユビキタス社会のための材料技術、エネルギー技術などのように、地域の産業集積、技術的特性に基づいた地域ニーズ等を踏まえて、研究分野を重点化し、地域経済の競争力を支える最高水準の研究開発を推進する。 ・各地域センターは、各地域の特徴を活かした分野において、大学、公設試験研究機関等と連携して、企業の研究人材を積極的に受け入れ、最先端設備の供用やノウハウを活かした共同研究等を実施し、国際水準の研究開発成果を地域産業へ橋渡しすることにより、地域の活性化に貢献する。 (2)中小企業への技術支援・人材育成の強化 ・各地域センターは、公設試験研究機関等と連携し、中小企業との共同研究等に加えて、最先端設備の供用やノウハウ等を活かした実証試験・性能評価等による中小企業の製品への信頼性の付与等の技術支援、技術開発情報の提供等を行い、中小企業の技術シーズの実用化を推進する。 ・産総研と公設試験研究機関等で構成する産業技術連携推進会議等を活用して、地域企業ニーズに基づく中小企業、公設試験研究機関及び産総研の新たな共同研究の形成や、研究成果移転や機器の相互利用促進のための研究会の設置等により中小企業技術支援体制の充実を図る。 ・共同研究や技術研修等の活動を通じて、地域の産業界の研究人材を受け入れ、基盤的な研究活動等を共同で実施し、産業化への橋渡し研究に活躍できる人材育成を行う。 ・産総研が地域におけるハブとなり、地域を巻き込んだ産学官連携の中核となって研究開発を推進することにより、第3期中期目標期間中に3,000件以上の中小企業との共同研究等を実施するとともに、10,000件以上の技術相談を実施する。 3.産業や社会の「安全・安心」を支える基盤の整備 (1)国家計量標準の高度化及び地質情報の戦略的整備 ・我が国の技術革新や先端産業の国際競争力を支え、また新素材、新製品の安全性や信頼性を評価する基盤として必要な計量標準62種類を新たに開発し、供給を開始する。また、第1期、第2期を通じて開発した計量標準約530種類を維持、供給するとともに、産業現場のニーズに応える高度化、合理化を進め、トレーサビリティの普及を促進する。 ・国土と周辺域において地質の調査を実施し、国土の基本情報として社会の要請に応えた地球科学基本図の作成及び関連情報の整備を行う。具体的には資源エネルギーの安定確保、防災等に資するため、従来に比して電子化などにより利便性を高めた各種地質図や活断層及び活火山などのデータベース等を整備、供給する。また、第3期中期目標期間中に5万分の1地質図幅を計20図幅作成する。 (2)新規技術の性能及び安全性の評価機能の充実 ・新たに生み出された製品やサービスに対して、その性能や安全性を客観的に評価する計測、評価及び分析技術を開発し、試験方法、試験装置及び規格等の作成を通じて普及させる。その際、企業及び業界団体や、基準認証関係機関とコンソーシアムを形成し、開発、作成、普及を加速する。また、国際標準化活動をコンソーシアム活動に反映するために、それぞれのプロジェクトを横断的に管理する組織を平成22年度中に産総研に設置して、基準認証関係機関との連携を促進し、効果的な標準化活動を推進する。 ・我が国の認証体制を強化するために、新たな技術に対する試験法及び評価方法の標準化を推進し、人材育成などにより技術の民間移転を推進する。 ・性能・安全性評価のために必要な知的基盤として、信頼性が明示された材料特性等のデータベースの整備、供給を推進する。 (3)研究開発成果の戦略的な国際標準化、アジアへの展開 ・我が国の産業競争力の向上のため、標準化が求められる技術については、その研究開発の開始に際して、あらかじめ標準化することを前提として計画的に実施するなど、国際及び国内標準化を重視した取組を行う。 ・国際標準化を検討する国際会議への派遣等を前提とした、国際標準化活動における第3期中期目標期間終了時までのエキスパート登録数は、100名以上を目標とする。 ・バイオマス燃料の品質評価等の標準及び適合性評価技術のアジア諸国での円滑な定着等、アジア諸国との研究協力、標準化に向けた共同作業を推進する。 ・国際標準化を計画的に推進することにより産総研の成果を基とした国内提案も含めた標準化の第3期中期目標期間中の素案作成数は、100件以上、うちアジア諸国との共同で15件以上を目標とする。 4.「知恵」と「人材」を結集した研究開発体制の構築 (1)産学官が結集して行う研究開発の推進 ・産総研のインフラをコアにして、産業界、大学及び公的研究機関の多様な人材や研究施設等を集約した最先端のナノテク拠点を構築し、既存電子デバイスの基本的限界を打破し、微細化や低消費電力化をもたらす高性能、高機能なナノスケールの電子、光デバイスの開発を行う。 ・太陽光発電では我が国唯一の一次基準太陽電池セルの校正機関としての知見を生かし、大規模フィールドテストや屋外評価技術等の拠点化を行い、実用化に必要な研究開発を加速する。 ・革新的な電池材料や評価技術の開発を行うための拠点を、材料分野において世界的なシェアを有する国内複数企業を結集し、構築する。 ・生活支援ロボットでは世界初となるロボットの新しい安全基準を構築し、実証試験を行うための拠点を構築する。 ・施設や設備の外部利用を促進することで効率的に成果を生み出す制度を構築する。共同研究時の知的財産の保有に関して、技術移転、製品化等を促進するためのル−ル作り等を行う。 ・省庁間の壁を超えて、我が国の研究開発能力を結集した研究成果の実用化・製品化の取組における中核的な結節点としての機能の発揮について積極的に検討する。その際、国費により研究開発を行っている研究開発独立行政法人などとの連携を図ることにより、国費による研究開発のより効果的な研究開発体制構築や成果の実用化や製品化に向けた取組の強化をも目指す。 ・これにより、産総研の「人」又は産総研という「場」を活用する形で実施される外部資金による研究規模が、第3期中期目標期間終了時までに産総研運営費交付金の50%以上となることを目指す。 ・世界トップに立つ研究機関を目指すべく、年間論文総数で5,000報以上を目指すとともに、論文の被引用数における世界ランキングにおける順位の維持向上を図る。 (2)戦略的分野における国際協力の推進 ・世界各国の研究情勢の把握と有力研究機関との有機的連携に基づき、効率的かつ効果的に研究開発を実施するとともに、国際的研究競争力強化のための研究者海外派遣、研究者招へいによる人材交流を促進する。 ・特に、低炭素社会実現のため、クリーン・エネルギー技術分野で再生可能エネルギー研究所をはじめとする米国国立研究所と密接に連携し、燃料電池、バイオマス燃料等再生可能エネルギー関連技術、省エネルギー材料、デバイス技術等に関する共同研究、研究者の派遣及び受入れ、ワークショップの開催等による新たな研究テーマの発掘などの協力を拡大、加速する。 ・また、マレーシア標準工業研究所、タイ国家科学技術開発庁、南アフリカ地質調査所、ブラジルリオデジャネイロ連邦大学などのアジア・BRICs諸国等の代表的研究機関との相互互恵的パートナーシップにより、バイオマス利活用、クリーンコール技術、医工学技術、環境浄化技術、レアメタル資源評価等を中心に現地における実証、性能評価を含む研究協力を推進し、アジア・BRICs諸国等における課題解決に貢献する。 ・さらに、仏国立科学研究センター、ノルウェー産業科学技術研究所など欧州の先進研究機関とロボティクス、環境・エネルギー技術、製造技術等での連携、その他新興国等も含む協力を推進する。 ・以上の実現のため、第3期中期目標期間中において包括研究協力覚書機関との研究ワークショップ等を計50回以上開催する。 (3)若手研究者のキャリアパス支援及び研究人材の交流推進 ・産総研イノベーションスクールにおいて、本格研究に関する講義、研究実践のためのツールを用いた研修、産総研と関連のある企業でのOJT 等を通じて、基礎的研究を製品化まで橋渡しできるイノベーティブな博士研究者等を育成し、社会に輩出する。また、専門技術者育成事業、連携大学院制度等により、我が国の産業技術の向上に資することができる人材を輩出する。 ・イノベーションスクールについては、ノウハウを社会に広く普及するため、大学等のポスドクや博士課程の学生を受け入れるなど、他機関とも連携して博士研究者の育成を行っていく。 ・外部研究員の受け入れ及び産総研研究員の外部派遣などにより、研究水準の向上及び研究成果の産業界への円滑な移転等を推進する。 ・第3期中期目標期間終了時までに、民間企業、大学等への人材供給や外部からの受け入れ5,000名以上を目指す。 5.研究開発成果の社会への普及 (1)知的財産の重点的な取得と企業への移転 ・産総研の技術を有効に社会普及させるために、産総研として取得し管理すべき知的財産権に関する方針を平成22年度中に策定し、コアとなる技術に加え、その周辺技術や応用技術についても戦略的に特許を取得することで効果的に技術移転を行う。また、成果の民間等への移転のために外部の技術移転機関(TLO)を活用していたが、第3期中期計画開始に合わせて産総研内部に技術移転機能を取り込むことで関連部署との連携を強化し、より効果的に技術移転を行うことのできる体制を構築する。 ・研究成果の社会還元を積極的に推進するため、成果移転対価の受領方法を柔軟化することで、技術移転の一層の推進を目指す。また、金銭以外の財産での受領の際には、審査委員会等を設置し妥当性等を事前に審査することで適切な運営に努める。 ・第3期中期目標期間終了時までに800件以上の実施契約件数を目指す。 (2)研究開発成果を活用したベンチャー創出支援 ・競争力あるベンチャー創出のため、大学等他機関の研究成果も積極的に活用し、加えて産総研のポテンシャルをもって事業化を支援する取り組みを行う。また、職員のベンチャー企業への兼業の促進及び共同研究の推進等産総研との連携強化並びに外部のベンチャー支援機関との緊密な連携を通じて、内外の研究成果を産総研のベンチャー創出、育成及び支援を経て事業化する独自のモデルを構築し発展させる。 ・また、ベンチャー企業からの収入を増加させるため、成果移転の対価として金銭以外の財産での受領の可能性を検討する。なお、その対価の受領にあたっては審査委員会等を設置し妥当性等を事前に審査することで適切な運営に努める。 (3)企業や一般国民との直接対話を通じた広報の強化 ・報道機関等を通じた情報発信を積極的に実施するとともに、サイエンスカフェ、出前講座、実験教室等の国民との対話型活動も充実させる。一般国民が手軽に産総研を知ることができる有効な手段の一つであるホームページの抜本的な改善を始め、広報誌、メールマガジン等の様々な広報手段を活用し、効率的かつ効果的な広報活動を推進する。 ・一般公開やオープンラボ、産総研キャラバン、サイエンスカフェ、出前講座、実験教室などは第3期中期目標期間中に200回以上開催する。 6.その他 ・特許生物の寄託に関する業務及びブダペスト条約に基づき世界知的所有権機関(WIPO)により認定された国際寄託業務等については、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針(平成22年12月7日閣議決定)」における「本法人(産業技術総合研究所)の特許生物寄託センターと、製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターを統合することとし、平成23年度以降、順次、必要な措置を講ずる。」との決定を踏まえ、平成24年3月31日限りで当該業務の全部を廃止する。なお、当該業務については、同年4月1日から独立行政法人製品評価技術基盤機構が承継する。 ・平成23年度補正予算(第3号)により追加的に措置された交付金については、東日本大震災からの復興のために措置されたことを認識し、革新的再生可能エネルギー研究開発事業、研究設備及び機器の復旧及び巨大地震・津波災害に伴うリスク評価のための複合的な地質調査の取組のために活用する。 ・上記、1〜5を踏まえ、下記の分野について、それぞれ別表に示した具体的な技術開発を進める。 |