| 産業技術総合研究所 第2期 中期計画 |
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【別表1】 鉱工業の科学技術 I.健康長寿を達成し質の高い生活を実現する研究開発 高齢化社会における健康で質の高い生活が求められている。そのためには、病気や怪我にならないこと、罹患してもできるだけ早く正確に病気を発見できること、そして発見された病気や怪我に対して安全で効果的な医療が受けられることが必要である。そこで、これまでより迅速で簡便な早期診断技術を開発して予防医療を促進するとともに、ヒトゲノム情報を利用して個々人の特性に適合したテーラーメイド医療の実現に貢献する。また、画像診断技術や細胞工学技術などを用いた精密診断及び再生医療技術を開発して、安全かつ負担の少ない効果的な診断・治療を実現する。さらに、人間特性の評価に基づく脳機能や身体機能を維持する技術の開発及び生物機能を利用した機能性食品素材などの開発を行い、科学的知識と技術に裏打ちされた健康管理を日常生活に浸透させることで健康寿命の延伸を実現する。 1.早期診断技術の開発による予防医療の促進とゲノム情報に基づいたテーラーメイド医療の実現 罹患の初期に現れる疾患マーカーを見出してこれを簡単に検知できれば早期診断が可能になり、疾患が重大な局面に進行する前に治療をうけて回復することができる。そこで、ヒトゲノム情報を利用して早期診断に有用なバイオマーカーの探索と同定を行う技術を開発する。また、生体分子の網羅的な解析技術とバイオインフォマティクス技術を用いて、ヒトゲノム情報などから創薬の標的となる遺伝子候補や個々人の特性を示す遺伝子情報などを見出し、個人の特性に適合した効果的な医薬の開発を支援することでテーラーメイド医療の実現に貢献する。 1-(1) ヒトゲノム情報と生体情報に基づく早期診断により予防医療を実現するための基盤技術の開発 予防医療を実現するためには、早期診断に利用できる有用なバイオマーカーを発見し同定することが必要である。そこで、種々の生体反応に関係する生体分子の中からバイオマーカーを探索して同定するための技術を開発する。また、ヒトゲノム情報から予想される生体分子の機能を網羅的に解析して、バイオマーカーを同定するための研究開発を実施する。そして、同定されたマーカーの検出・評価技術を開発して早期診断に基づいた予防医療を実現するための基盤技術を開発する。 1-(1)-<1> 生体反応の分子メカニズムの解明によるバイオマーカーの探索と同定 ・ガン等の疾患の早期診断と治療に役立てるため、疾患マーカーとして有効な糖鎖の探索と同定を行う。そのために、ヒトのすべての糖鎖合成関連遺伝子を利用した遺伝子発現解析技術や糖鎖構造解析技術及びレクチンと糖鎖間の相互作用を利用した糖鎖プロファイリング技術を開発する。これらにより疾患や細胞分化のマーカーとして同定された糖鎖を診断や治療に利用する技術を開発する。 ・疾患等により細胞膜の構造が変化することからこれを知るための糖脂質及びその代謝に関連する生体分子を探索し、これらを有効なマーカーとして疾患の診断や治療等に利用する。 ・脳神経疾患の診断と予防に利用するため、神経細胞の増殖や分化及び機能発現等に関与する遺伝子とその産物の同定を行い、これらの分子に着目して神経細胞機能の解析評価技術や診断技術を開発する。 ・生活習慣病の予防に利用するために、健常人及び罹患者の生体組織試料について遺伝子の発現頻度解析及びマイクロサテライトマーカー法による遺伝子多型の解析を行い、この結果を臨床情報と関連付けて生活習慣病関連遺伝子を同定する。そして同定された遺伝子の産物である種々のタンパク質の機能を解明して生活習慣病の予防に役立てる。 ・加齢にともなう生体機能の低下や罹患率の増加の原因を追求するため、生まれてから死ぬまでの一生の間の生体機能の変動を表す種々のマーカー分子を同定し、変動を制御するメカニズムを解明する。そして、加齢に関係した疾患の予防や治療及び高齢者における免疫や脳機能の維持に資する技術や創薬の開発に役立てる。 ・生物時計などの生体リズムの分子機構を解明するため、リズムの発生や伝達に関係する分子を同定する。これらをマーカー分子として時刻依存型疾患などの生体リズムの失調が関係する疾患の原因追求に供する。 ・人間のストレスを分子生理学的に評価するため、マーカーとなるストレス応答タンパク質や脂質由来のストレス応答化合物を探索し同定するとともに、体液に含まれるこれらのストレスマーカーを検出するチップを開発してストレスの診断に利用する。 1-(1)-<2> 生体機能の網羅的な解析によるバイオマーカーの探索と同定 ・創薬の標的として重要な遺伝子を同定するため、ヒト遺伝子の発現頻度情報とタンパク質の細胞内局在情報及び相互作用情報を網羅的に取得し解析する。この解析結果を創薬のスクリーニングに利用する。また、ゲノム情報やヒト完全長cDNA情報等から遺伝子の発現制御に関係する機能性RNA分子の同定手法を開発して創薬に利用する。 ・神経ネットワークの機能発現に関わるバイオマーカーを探索して同定するため、新たな神経細胞培養系、脳スライス実験系、全脳実験系や遺伝子改変モデル生物実験系を構築して神経ネットワーク情報伝達系の可視化・解析技術を開発する。 ・同定されたバイオマーカーを検知して診断等に利用するため、細胞情報の大規模処理が可能な新規分子プローブ及びそれを導入したトランスフェクションマイクロアレイなどの検知技術を開発する。得られた細胞情報を細胞機能の制御に利用するため、ナノテクノロジーなどを利用した細胞操作技術を開発する。 ・ガン等の疾患マーカー分子の迅速且つ網羅的な同定・検出・評価をするため、高感度バイオイメージング、ゲノムアレイ及び磁気ビーズ等を用いたゲノム解析技術を開発する。 1-(2) テーラーメイド医療の実現を目指した創薬支援技術の開発 薬の効き易さの個人差など、個々人の特質を考慮したテーラーメイド医療の実現が求められている。そこで、ヒトゲノム情報をもとに作成した網羅的なタンパク質や糖鎖の合成プールを利用して、特定のタンパク質や糖鎖と相互作用する物質を探索し、個々人の特質に適合した創薬の支援技術を開発する。また、バイオインフォマティクス技術を発展させ、遺伝子やタンパク質などの機能予測及び化合物−タンパク質ドッキングシミュレーションを実現して、膨大な化合物の中から医薬品候補を選び出すことのできる創薬支援技術を開発する。 1-(2)-<1> ヒト遺伝子産物の機能に基づいた創薬支援技術の開発 ・ヒトゲノム情報のタンパク質への効率的な翻訳体制を確立する。これを利用して重要なタンパク質及びそれに対応する抗体を作製してプロテインチップや抗体チップなどの解析ツールを開発する。さらにこのチップを利用してタンパク質の機能を制御する低分子化合物の解析を行い、創薬支援や診断薬の開発支援技術として利用する。 ・遺伝子の機能を解明するため、ヒト遺伝子の発現を個々に抑制できるsiRNA発現ライブラリーを作成する。これを用いて遺伝子機能を個々に抑制することで疾患に関係する遺伝子などの重要な遺伝子を見出す。これら遺伝子の翻訳産物の機能や遺伝子発現の調節機構を解明して医薬や診断薬の開発に向けた標的遺伝子を明らかにする。 ・糖鎖マーカーを利用した創薬支援技術を開発するため、酵母による糖タンパク質糖鎖の改変技術等を開発する。また、糖転移酵素の発現技術と糖鎖関連化合物の生産技術を開発し、これらを利用して糖転移酵素や糖鎖分解酵素等に対する新規な酵素阻害剤の設計と合成を行い医薬品としての機能を評価する。 1-(2)-<2> バイオインフォマティクス技術を利用した創薬支援技術の開発 ・創薬の標的を明らかにするために、複数の生物のゲノム配列を比較する方法及びマイクロアレイ等による大量の遺伝子発現情報を解析する方法を開発する。これに基づきゲノム上に存在するタンパク質コード領域や機能性RNAのコード領域及び転写制御領域などの構造を情報科学的に明らかにする手法を確立する。 ・タンパク質の立体構造および機能を予測するためのソフトウェアを開発する。まず、フォールド認識法と網羅的モデリングを融合させ高い精度をもつタンパク質の立体構造予測法を完成する。次に、立体構造の動的性質に注目して膜タンパク質等の機能予測法を開発する。これらの成果を創薬の重要な標的である細胞膜受容体や酵素へ適用し、創薬支援システムとして提供する。 ・遺伝子や生体分子に関する情報の高度な利用を促進するため、遺伝子、RNA及びタンパク質のアノテーション(注釈づけ)をヒト完全長cDNAレベルからゲノムレベルに展開する。これらの情報に加えて、遺伝子の発現頻度情報や細胞内局在情報及び生体分子の相互作用情報等を統合したバイオ情報解析システムを開発する。 2.精密診断及び再生医療による安全かつ効果的な医療の実現 診断や治療における患者の負担を軽減するには、正確な診断に基づいた効果的な治療を迅速かつ安全に施すことが必要である。そこで、短時間で精密な診断を可能にする生体分子のイメージング技術や計測装置などの研究開発を実施する。また、効果的な治療として再生医療や生体適合性材料を利用した喪失機能の代替技術を開発する。さらに、治療の安全性を高めるための手術の訓練支援システムを開発する。 2-(1) 高度診断及び治療支援機器技術の開発 正確な診断と効果的な治療を施すため、短時間で計測できる高速診断法、細胞における分子の機能を解析できる画像診断法などを開発する。また、治療の効果と安全性の向上を目指し、精度の高い位置決め機構を有する治療支援装置を開発するとともに手術の訓練支援システムを開発する。 2-(1)-<1> 患者の負担を軽減する高精度診断技術の開発 ・診断及び治療に伴う患者の肉体的負担を軽減できる低侵襲検査診断システムを構築するため、心拍動等の動画像を連続計測可能な超高速MRI技術及び微小電極を用いた低侵襲計測技術等の要素技術を開発する。 ・個々人のゲノム情報に基づいた高精度診断を実現するため、1分子DNA操作技術や1分子DNA配列識別技術等の個々人のゲノム解析に必要な要素技術を開発する。 ・疾患に関係する生体分子等の細胞内における存在を検知して診断に役立てるため、単一細胞内のタンパク質を一分子レベルでリアルタイムイメージングする技術を開発する。 ・同定された生活習慣病のタンパク質マーカーを簡便に解析して疾患の早期診断に役立てるため、極微量の血液からマーカーを数分以内で解析できるデバイスを開発する。また、遺伝情報の個人差を解析して罹患の可能性や薬効を診断するため、注目する遺伝子について個々人の配列の違いを数分以内に解析できるデバイスを開発する。 2-(1)-<2> 治療の安全と効果の向上を目指した治療支援技術の開発 ・小さな病変部位を局所的かつ集中的に治療する技術を確立するため、MRIなどのイメージング装置下で生体内での微細操作が可能な低侵襲治療用マニピュレータ技術を開発する。 ・外科手術の安全性を向上させるため、擬似患者モデルを用いた手術トレーニングシステムの構築に必要な手術技能評価手法を開発し、その有効性を医学系研究機関と連携して検証する。 2-(2) 喪失機能の再生及び代替技術の開発 効果的な治療技術の一つとして再生医療や生体適合材料による喪失機能の代替技術を開発する。再生医療技術の開発では、骨、軟骨、心筋及び血管等を生体組織レベルで再生する技術や神経ネットワークの再構成を促進する技術等を開発する。また、長期生体適合性を有する人工臓器などによる身体機能の代替技術の開発では、埋め込み型人工心臓のための生体適合材料及び骨形成の促進や抗感染などの効果を有する生体適合材料を開発する。 2-(2)-<1> 組織再生による喪失機能の代替技術の開発 ・生体親和性に優れた組織細胞による再生医療を実現するため、三次元細胞培養技術を用いた骨・軟骨、心筋及び血管等の組織再生技術を開発して臨床応用を行う。 ・疾病や高齢化により失われた神経機能を再生するため、間葉系細胞を神経細胞に分化誘導する技術と神経組織の再構成を促進する生体分子の探索技術を開発する。 ・脳機能の修復技術の確立を目指して、これまで困難であった神経冠幹細胞の単離・培養と分化誘導技術を開発する。また、脳損傷回復における神経ネットワークの再構成を促進する技術を開発する。 2-(2)-<2> 生体適合材料を用いた喪失機能の代替技術の開発 ・長期に使える体内埋め込み型人工心臓を開発するため、生体適合性材料を用いて製造した高耐久性ポンプ機構をもつ回転型人工心臓について、その血液適合性を評価しながら性能を改善する。また、医療機関と連携して実験動物を用いた3ヶ月間の体内埋め込み実験で性能を検証する。 ・体内埋め込み用生体材料の生体親和性の向上及び高機能化を図るため、生体組織との接着性に優れ、骨形成促進や抗感染等の効果を有する生体適合材料を開発して動物実験で検証する。 ・生体組織のように柔軟性や弾力性等を持つ新規機能材料として、組織・細胞の機能を代替できる高分子材料を用いた高分子アクチュエータ等の新規生体機能代替デバイスを開発する。 3.人間機能の評価とその回復を図ることによる健康寿命の延伸 高齢になっても健康で自立的な生活を維持するためには、加齢にともない低下した機能を代替する技術、脳を含む身体機能の低下を訓練により回復する技術、さらには日常生活における事故や怪我などを防止する技術が必要である。そこで、脳機能計測技術に基づいて、失われた脳機能の回復技術や代替技術等の開発を行うとともに、身体機能計測技術を用いて身体機能低下を防ぐための訓練技術を開発する。そして、認知行動計測技術を用いて日常生活における認知や行動に起因する障害に遭遇する可能性を評価し、事故や怪我を回避するための生活支援技術を開発する。 3-(1) 脳機能障害の評価及び補償技術の開発 高次脳機能に障害が起きると、失われた機能を再び取り戻すことは容易ではない。そこで、障害によって失われた脳機能や身体機能を訓練によって取り戻すための支援技術として、高次脳機能の低下を精度良く計測・解析する技術及びリハビリテーション技術等を開発する。また、電子機器技術を用いた身体機能補償技術として、脳と電子機器とを接続するためのBMI(Brain - Machine - Interface)技術を開発する。 3-(1)-<1> 認知機能などの高次脳機能の計測・評価技術の開発 ・脳機能診断の精度向上及び適切なリハビリテーションスケジュールの管理を実現するため、加齢、疾病や脳損傷などによる感覚機能や高次脳機能等の変化を高精度に計測・評価する技術を開発し、脳機能計測・評価結果と脳損傷部位との関係についてデータベースを構築する。 3-(1)-<2> BMI技術の開発 ・喪失した身体機能を脳神経と身体機能代替機器を電気的に接続することで補償し再建するため、脳内埋込み電極の開発、長期に渡って安定かつ安全に神経細胞活動を信号として取り出す技術、この信号から意図を検出する技術及び脳を刺激して現実感のある感覚を生じさせる技術を開発する。 3-(2) 身体機能の計測・評価技術の開発 環境変化への身体機能の適応には、温度変化等に対して身体状態を維持する循環調整機能や、転倒・つまずき等に対処した姿勢・動作制御を行う動作調整機能が大きな役割を担っている。そこで、加齢に抗して身体適応能力を維持することを支援する技術の開発を目指して、環境変化への適応機能に関与する循環調節機能、動作調節機能を簡易に計測・評価する技術を開発する。さらに、この計測・評価技術を用いて、これらの機能を高めるための訓練手法の評価・分析を行うことにより、個々人の状態に適合した効果の高い訓練支援システムを構築する。 3-(2)-<1> 運動刺激による身体機能の回復・改善技術 ・身体機能回復効果の高い訓練支援システムを構築するため、運動刺激に対して生じる動作調節系機能、循環調整機能の変化を計測・評価する技術を開発して、これらの機能を維持するのに最適な低負荷運動の訓練効果を明らかにする。その上で、被訓練者の状態にあわせて訓練機器の発生負荷等を制御する技術を開発する。 3-(3) 認知行動特性の計測・評価及び生活支援技術の開発 生活空間における人間の認知行動は、環境と人間との相互作用に基づき行われている。したがって、注意が散漫になるなどの認知行動の状態に対応して注意喚起や環境の整備などの生活支援を行うためには、環境や認知状態及びその結果として現れる人間行動等を計測・評価する必要がある。そこで、支援の必要な行動を検知するため、行動データ等の蓄積に基づいて認知行動を適切に評価する技術を開発する。 3-(3)-<1> 認知行動の計測技術の開発 ・日常生活に潜む事故や怪我などの危険性を予測して生活の安全を保つため、身体負荷が小さい脳機能計測装置等を用いて、注意の程度などの人間の認知特性を計測する技術を開発する。 ・事故の発生を未然に防ぐなどのため、人間の行動情報や人間を取り巻く環境の情報から有用な情報を抽出するデータマイニング技術を確率モデルの体系化と最新の統計的学習理論を用いて開発する。 3-(3)-<2> 人間生活支援のための認知行動の評価技術の開発 ・日常生活行動に基づく健康のモニタリングを可能とするため、生活空間における人間行動と身体状態に関するセンサ情報を長期に渡って蓄積する技術の開発を行う。また、蓄積された行動情報から行動パターンをモデル化し、これによって個人の行動の変化や個人間の差異を検出する技術を確立する。 ・速やかな作業スキルの獲得を支援するため、作業中において熟練者と未熟練者との差異が現れる場面や普段と異なる場面を検出して、熟練者の作業のノウハウを蓄積する技術を開発する。 4.生物機能を活用した生産プロセスの開発による効率的なバイオ製品の生産 医用タンパク質や機能性食品素材などの健康産業の基盤となる有用物質を生産するには、生物機能を活用した物質生産プロセスが適している。そこで、有用な機能をもつ微生物や遺伝子を探索し、遺伝子組換え技術により機能を改良してバイオプロセスに利用することで、品質の高いバイオ製品を効率よく生産する技術を開発する。また、遺伝子組換え植物を用いて効率よく物質生産を行う技術を開発する。 4-(1) 新規な遺伝子資源の探索 これまで培養が困難であった微生物には、有用な機能をもつ遺伝子が豊富に存在していると期待される。これら環境中に存在する未利用の微生物や遺伝子から有用な機能を見出して生産プロセスに利用するため、これらの微生物の各種環境からの取得及び有用遺伝子の生物個体からの取得のための効率のよい探索技術を開発する。 4-(1)-<1> 効率のよい探索手法をもちいた遺伝子資源の開発 ・有用物質の生産プロセスに利用できる新しい遺伝子を効率よく獲得するため、現在培養が不可能な微生物の培養を可能にする技術や、環境中の微生物から分離培養過程を経ることなく直接有用な遺伝子を探索・取得する技術を開発する。 4-(2) 高効率バイオプロセス技術の開発 生物機能を利用したバイオプロセスの高度化を進めるため、プロセスの要素技術である標的遺伝子の改変技術と遺伝子の発現効率を高める技術及び生産物の分離・精製技術を開発する。また、バイオプロセスにより質の高い製品を生産するための品質管理技術を開発する。 4-(2)-<1> バイオプロセス技術の高度化 ・有用な機能を持った酵素などの生体高分子や核酸及び脂質を効率よく製造するため、個々の標的遺伝子に対して最適な遺伝子改変技術を適用し、機能性核酸や機能性脂質等をバイオプロセスにより効率よく生産する方法を確立する。 ・微生物による物質の生産効率を高めるため、宿主として使用する細菌のゲノム情報をもとに複数の遺伝子を一度に組換える大規模な染色体再編技術を開発する。 ・バイオプロセスにおいて医用タンパク質等を精製・濃縮するために、目的とする分子に結合する高分子リガンドを設計し製造する技術を開発する。 ・目的のタンパク質や脂質等を微生物により選択的に生産するため、酵母を用いた分泌タンパク質や膜タンパク質発現技術及びロドコッカス属細菌を用いた物質生産技術を開発する。 4-(2)-<2> バイオ製品の品質管理技術の開発 ・タンパク質医薬等のバイオ製品の性能評価及び品質管理等に係る技術体系を構築するため、生体分子の特性評価方法の開発、配列-構造-機能相関の理解に基づく品質管理方法の開発及び生体分子の安定化機構の理解に基づく生体分子の品質管理技術の開発を行う。 ・微量のタンパク質や微生物等の特性を高感度に評価できるようにするために、電気化学顕微鏡技術を活用して生体分子をフェムトグラムレベルで測定できるシステムを開発する。 4-(3) 遺伝子組み換え植物を利用した物質生産プロセスの開発 遺伝子組換え植物を物質生産に利用するため、植物における物質代謝を制御する遺伝子の機能を解明して、これらの遺伝子を改変した組換え植物を物質生産に利用する技術を開発する。また、植物型糖鎖の合成を抑制した遺伝子組み換え植物を作成することにより、ヒト型糖鎖などをもつタンパク質を遺伝子組み換え植物で生産する技術を開発する。 4-(3)-<1> 有用植物遺伝子の開発と機能解明 ・物質生産を効率的に行える改変植物を作成するために、モデル植物であるシロイヌナズナの転写因子の過剰発現変異体を網羅的に作成し、遺伝子発現を制御している転写因子の機能を解析する。 ・モデル植物であるシロイヌナズナの約200個の転写因子遺伝子に対するキメラリプレッサーを導入した植物体を作成して、その機能の解析に基づいて物質生産を効率的に行える改変植物を作成する。 4-(3)-<2> 遺伝子改変植物の作成と利用 ・独自に開発した遺伝子導入手法を用いて作成した遺伝子組換え植物を利用して、多品種のタンパク質を生産する技術を開発する。 4-(4) 天然物由来の機能性食品素材の開発 健康食品に利用するため、多様な天然物を探索して高血圧や糖尿病に対する予防効果や健康維持機能をもつ食品素材及び冷凍による食品等の品質低下を防ぐ効果をもつ食品素材を開発する。 4-(4)-<1> 機能性食品素材の開発と機能解明 ・亜熱帯植物の抽出物や海洋生物の抽出物の中から生活習慣病予防に効果のある新規機能性物質を探索して、その機能を解明する。 ・皮膚の老化防止や高血圧の予防効果などが期待される、ペプチド、ポリフェノール、スフィンゴ脂質等の機能解明と製造技術の開発を進め、機能性食品としての実用化研究を行う。 ・天然物から不凍タンパク質を探索して、その構造の機能の解明に基づいて品質の良い冷凍食品の生産に利用する。 5.医療機器開発の実用化促進とバイオ産業の競争力強化のための基盤整備 新しい医療機器の実用化には薬事法上の審査を経る必要がある。このため審査を円滑化する技術評価ガイドラインの策定が求められている。そこで、新しい医療機器の研究開発を通じてガイドラインの策定を支援する。また、福祉に関連した製品の規格体系の整備に資する研究開発を実施する。さらに、技術融合による先端的なバイオテクノロジー関連計測技術を開発するとともにその標準化を進める。 5-(1) 医療機器開発の促進と高齢社会に対応した知的基盤の整備 安全・安心な生活及び安全な治療を実現するためのガイドライン作りや規格の作成に資する研究を実施する。そのため、医療機器及び組織再生の評価に関する基盤研究を実施し、医療機器や再生医療の技術ガイドライン策定に貢献する。また、高齢者・障害者に配慮した設計指針の規格制定について、感覚・動作運動・認知分野を中心とした研究開発を実施し関連規格の体系的な整備に貢献する。 5-(1)-<1> 医療機器の評価基盤整備 ・医療機器の安全性や有効性の評価技術等に関する基盤研究を実施し、医療機器の標準化及び医療機器技術ガイドラインの策定に貢献する。 ・骨等の組織再生における評価技術に関する基盤研究を実施し、再生医療関係の技術評価に関するガイドラインの策定に貢献する 5-(1)-<2> 高齢社会に対応した国際・国内規格化の推進 ・高齢者・障害者配慮の設計技術指針に関連した国際規格制定のために国際的な委員会活動において主導的な役割を果たす。さらに、人間の加齢特性の計測・解析に基づき、感覚、動作運動及び認知の各分野を中心に5件以上の国際的な規格案の提案を行い、この制定に向けた活動を行う。また、我が国の工業標準活動に貢献する観点から、関連する国内規格制定のための活動を行う。 5-(2) バイオ・情報・ナノテクノロジーを融合した計測・解析機器の開発 研究開発を加速し新産業の創出を促すため、バイオテクノロジーと情報技術及びナノテクノロジーの融合により新たな分析・解析技術を開発する。また、これらの技術を用いて分子・細胞の情報を迅速かつ網羅的に計測・解析し、バイオ産業の基盤整備に貢献する。 5-(2)-<1> バイオ・情報・ナノテクノロジーを融合した先端的計測・解析システムの開発 ・臨床現場や野外で生体分子を精度良く迅速に計測・解析するために、バイオテクノロジーと情報技術及びナノテクノロジーを融合してタンパク質を短時間で簡便に分離分析できるチップと有害タンパク質等を検出できるセンシング法を確立する。 ・機能性高分子材料を利用した選択的な細胞接着・脱着制御技術を確立し、それを組み込んだセルマニピュレーションチップを開発する。 ・レーザによる生体高分子イオン化ならびに光解離を利用した高分解能質量分析と微量試料採取を融合した生体分子の網羅的計測・解析システムを開発し、細胞モデルを構築する。 ・生体分子を観察する新しい技術として、極低温電子顕微鏡による生体分子の動的機能構造の解析システムを開発する。 ・膜タンパク質等について、NMRにより不均一超分子複合体の分子間相互作用の解析データを取得するとともに、X線立体構造解析データを取得する。これらの動的情報と立体構造情報をコンピュータ上で統合して膜タンパク質のダイナミズムを扱える計算システムを構築する。 5-(3) 生体分子の計測技術に関する国際標準化への貢献 バイオテクノロジーの共通基盤である生体分子の計測技術をSI単位系に基づいて整理し、計測法の標準化に貢献する。またタンパク質等の生体分子の標準品の作成技術を開発する。 5-(3)-<1> 生体分子の計測技術に関する国際標準化への貢献 ・バイオチップや二次元電気泳動の標準として利用するための標準タンパク質を作製する。また、臨床検査などで検査対象となっているタンパク質について高純度の標準品を作製する。 ・バイオテクノロジー関連のSIトレーサブルな測定技術を整理して標準化のための課題を明らかにする。また、新規DNA計測手法について国際標準制定に貢献する。 5-(4) 環境中微生物等の高精度・高感度モニタリング技術の開発 遺伝子組換え生物(GMO)の利用促進のため、特定の遺伝子や微生物の高精度・高感度モニタリング技術を開発する。これらの技術を環境微生物等の解析に活用して生活環境中の有害物質の評価や管理に役立てる。 5-(4)-<1> バイオ環境評価技術の開発 ・組換え微生物等の特定微生物や環境微生物の固有の遺伝子配列を利用して、これらを高感度かつ高精度に定量して解析する技術を開発する。また、この技術により環境微生物の動態を解析して、組換え微生物等の環境における安全性評価の技術基盤を整備する。 ・DNAチップ及びプロテインチップ等を利用することにより、バイオテクノロジーを利用した環境の安全性評価システムを開発する。 5-(4)-<2> 生活環境管理技術の開発 ・水や大気等の媒質中に存在する微量でも健康リスク要因となる物質や微生物などを除去・無害化する技術の開発及び生物学的手法と吸着法を併用した浄化システムを開発する。 II.知的で安全・安心な生活を実現するための高度情報サービスを創出する研究開発 知的生活を安全かつ安心して送るための高度情報サービスを創出するには、意味内容に基づく情報処理により知的活動を向上させる情報サービスを提供する技術、情報機器を活用して生活の質を高める生活創造型サービスを提供する技術及び情報化社会における安全かつ安心な生活を支える信頼性の高い情報基盤技術が必要である。これらの技術により、ネットワーク上の大量のデジタル情報などの意味をコンピュータが取り扱えるようにし、利用者ニーズに適合した情報サービスを提供して人間の知的生産性を向上させるとともに、ロボット及び情報家電の統合的利用により、人間が社会生活を送る上で必要な情報サービスを提供して生活の質を向上させる。さらに、情報のセキュリティやソフトウェアの信頼性を向上させ、提供される情報サービスを安全かつ安心して利用できる情報基盤を構築する。また、新たな情報技術の創出に向けた先端的情報通信エレクトロニクス技術の開発を行い、革新的情報サービス産業の創出に貢献する。 1.知的活動の飛躍的向上を実現するための情報サービスの創出 情報化社会において人間の知的活動を飛躍的に高度化するためには、すでにネットワーク上などに存在する大量のデジタル情報を効率的に利用することに加えて、デジタル情報化されていない人間社会のデータをデジタル情報として蓄積し、新たな情報資源として活用することが必要である。このために、利用者毎に異なる多様な情報ニーズに対して、蓄積された情報及び情報ニーズの意味内容をコンピュータが理解し、的確な情報提供ができるよう知的活動支援技術を開発する。また、地球規模で蓄積されているソフトウェアを含む膨大なコンピュータ資源を容易に利用できるようグローバルな意味情報サービスを提供する技術を開発する。さらに、人間生活に関わる情報のデジタル化を行い、人間の行動や社会活動の支援など、多様なニーズに応える情報サービスを提供する技術を開発する。 1-(1) 意味内容に基づく情報処理を用いた知的活動支援技術の開発 人間に分かりやすく有用なサービスを即座に提供するためには、大量のデジタル情報の意味を理解して体系的に扱う技術と、それをユビキタスに提供する技術の開発が必要である。このために、身の回りに存在する物やシステム等の役割や機能等を体系的に構造化して記述することにより、意味を含めたデジタル情報として取り扱う技術を開発するとともに、人間の位置や行動パターンに適応した情報を提供するユビキタス情報サービス技術を開発する。 1-(1)-<1> 知的生産性を高めるユビキタス情報支援技術の開発 ・デジタル情報をその意味内容に基づいて構造化して利用するプラットフォームを構築する。その上で、ニーズに合致した総合的な情報として提供し、知識の検索、人間の位置や嗜好に応じたサービスなど、人間の思考や行動を支援する技術を開発する。 1-(2) グローバルな意味情報サービスを実現する技術の開発 意味内容に基づく情報処理プラットフォームをネットワーク上に分散したコンピュータで利用することにより、世界規模の大量のデータを意味構造に基づいて統合的に運用する技術等を開発する。また、意味情報サービスを提供する応用ソフトウェアの開発、運用を世界中の開発者が連携して安定的に行うための基盤技術を開発する。 1-(2)-<1> 世界中に意味情報サービスを安定して提供するグローバル情報技術の開発 ・意味情報サービスをグローバルに展開し、普及するためのソフトウェアのオープン化技術を開発するとともに、その自律的発展を実現するための各国で共通利用可能な各種ツール及びソフトウェアの開発、検査、改良、運用を世界中の開発者と連携して安定的に行うためのソフトウェア開発運用支援技術を開発する。 1-(2)-<2> 広域分散・並列処理によるグリッド技術の開発 ・地球規模で分散して存在する大量の情報や計算資源を有効に利用した高度情報サービスの基盤システムを構築するために、コンピューティング技術と通信ネットワーク技術を融合して、情報資源が分散していることを利用者が意識することなく利用するためのソフトウェアコンポーネント、また利用者間で協調して情報処理を行うためのソフトウェアコンポーネント等を開発する。さらに、科学や工学分野あるいは社会における具体的な利用技術をこれらの基盤システム上で開発し、開発した技術の国際標準化を目指す。 1-(3) 人間に関わる情報のデジタル化とその活用技術の開発 人間社会のデータをデジタル情報として蓄積し、新たな情報資源として活用するためには、人間そのものをデジタル情報化する技術と、人間が生活する上で遭遇する様々な情報をデジタル情報化する技術が必要である。そのために、人間の身体機能や行動を計測してデジタル情報化を行い、ソフトウェアから利用可能な人間のコンピュータモデルを構築するとともに、それを活用した応用システムを開発する。また、人間を取り巻く大量の情報を観測、蓄積及び認識して情報資源化し、それに基づいて分析及び予測を行うことにより、過去から未来へ繋がる人間の行動や社会の活動を支援する情報技術を開発する。 1-(3)-<1> 人間中心システムのためのデジタルヒューマン技術の開発 ・人間機能を計測してモデル化し、人間特性データベースとして蓄積するとともに、それをもとにコンピュータ上で人間機能を模擬するソフトウェアを開発する。このために、人間の形状、運動、生理、感覚及び感性特性を自然な活動を妨げずに計測する技術を開発し、それを用いて年齢等の異なる1,000例以上の被験者の人体形状をmm級の精度で計測し、個人差などを表現できる計算モデルを開発する。さらに、これらの技術を機器の人間適合設計、製品の事前評価、映像化及び電子商取引などに応用する。 ・壁や天井などに取り付けた非接触型センサによって人間と機器の動きを数cmの精度で計測するとともに、人間密着型のセンサによって、血圧や体温等の生理量を計測することで、生理量と心理・行動の関係をモデル化し、起こりうる行動を発生確率付きで予測できる技術を開発する。これにより、高齢者や乳幼児の行動を見守るなどの人間行動に対応したサービスを実現する技術を開発する。 1-(3)-<2> 大量データから予測を行う時空間情報処理技術の開発 ・人間が生活する実環境に多数配置されたセンサ等によって、音や映像等のデータを長時間にわたって多チャンネルで収集し、大規模な時空間情報データベースを構築するとともに、そこからデータの内容を意味的に表現したテキスト情報や3次元的な空間情報を自動的に抽出する技術を開発する。これによって得られた時空間情報を、その意味内容に基づいて圧縮・再構成し表現する技術の開発を行うとともに、行動や作業を支援するシステムなどを開発する。 2.ロボットと情報家電をコアとした生活創造型サービスの創出 個々の生活状況に応じた情報サービスを提供して、生活の質(Quality of Life、QoL)を飛躍的に向上させるために、人間活動を代行、支援及び拡張する生活創造型サービスを実現する。そのために、人間を中心としてロボットと情報家電を有機的かつ協調的に機能させ、統合的で創造的な生活空間の実現を目指し、人間と物理的・心理的に共存・協調するロボット技術、人間と情報家電の双方向インタラクションを支援するインターフェース技術及びこれらを構成するハードウェアを高機能化、低消費電力化するデバイス技術を開発する。 2-(1) 人間と物理的・心理的に共存・協調するロボット技術の開発 人間と共存・協調して、人間の活動を支援するロボットを実現するために、人間と空間を共有しつつ、人間の行動や状態に適応、協調して機能するロボット技術を開発する。そのために、生活空間をロボット化する技術、人型(ヒューマノイド)ロボットの運動機能を人間と同程度に向上させる技術及び人間と情報を共有するために必要な視覚認識技術を開発する。 2-(1)-<1> 屋内外で活動できる社会浸透型ロボット技術の開発 ・ロボットの行う複雑な作業を構成する要素機能を共通仕様に基づいてモジュール化し、異なるロボットシステムで利用可能にする。また、開発したモジュールを生活空間に分散配置して、それらが人も含めて有機的に協調して機能する技術を構築し、生活支援型ロボットシステムのプロトタイプを開発する。 ・ロボットシステムを人間の生活空間に安全に導入するために、利用者や周辺の人間の行動を実時間でモニタリングする技術及び類似状況における過去の事故事例等からのリスクアセスメントを効率的に行う手法を開発し、それらをロボット要素モジュールとして利用可能にする。 ・ロボットの自律的な探索により環境や地形に関する情報収集や異状発見を行う技術及び複数のロボットを協調動作させることによって、より広範囲な状況の認識を行う技術を開発する。これらの技術を用いて、環境を改変して有効に利用する方法を開発し、自律作業ロボットによる100m3程度の砂利堆積の移動や再配置等の実証実験を行う。 2-(1)-<2> 作業支援を行うヒューマノイドロボット技術の開発 ・人間の作業を代替し、人間と共存して働くために、人間の通常の生活空間内を自由に移動する機能と基本的な作業機能を開発する。具体的には、人間と同程度の速度での平面の歩行、滑り易い路面の歩行、移動経路の自律的な計画及びハードウェアの高度化によるIEC規格IP-52程度の防塵防滴処理並びに簡単な教示による指示通りの運搬等の機能を開発する。 ・ヒューマノイドロボットの安全性と可用性を人間と共存できる程度に高めるために、コンピュータ上に構成した人間型構造モデルで人間の動きを合成する技術、人間の運動機能を規範としてロボット全身運動を生成する技術及びロボットが人間を認識し、人間と対話することで協調的に作業するロボット技術を開発する。 2-(1)-<3> 環境に応じて行動ができるための高機能自律観測技術の開発 ・家庭内や屋外環境において人の作業を支援、代行するための共通機能として、人と同等以上の視覚的な認識、理解が可能な3次元視覚観測技術を開発する。この技術に基づき、3K(きつい、汚い、危険な)作業の代行や医療現場の過失事故を防止する多種物体の自動認識技術、プライバシーを守りながら高齢者や入院患者の異常事態を検知する技術及び番犬や介助犬を代行するパーソナルロボット技術並びに広域環境のリアルタイム立体測量と危険地帯の監視や災害時の状況把握を可能にする自律観測技術等を開発する。 2-(2) 情報家電と人間の双方向インタラクションを実現するインターフェース技術の開発 ユビキタスネットワークに接続された情報家電による多様な情報サービスの提供を実現するために、日常的な動作や言葉を用いて情報家電を容易に使いこなすための実感覚インターフェース技術、多くの機能を低消費電力で提供するシステムインテグレーション技術及び高機能でフレキシブルな入出力デバイス技術を開発する。 2-(2)-<1> 実感覚ユーザインターフェース技術の開発 ・利用者の意図に応じて日常的な動作や言葉による対話的な操作を可能にするユーザインターフェース及び複雑な接続設定を必要とせずに異なる規格間の機器連携を可能にするプラグアンドプレイ機能を開発する。 2-(2)-<2> システムインテグレーション技術の開発 ・情報機器とユーザとのインターフェースデバイスあるいは情報機器とネットワークとのインターフェースデバイスの小型化、低消費電力化及び高機能化を両立させる技術を開発する。具体的には、自発光型平面ディスプレイに駆動回路等を内蔵させ、1,000cd/m2以上の高輝度を低消費電力で実現するディスプレイ技術を開発する。また、多機能な集積回路チップを積層し、チップ間を50Gbps以上の超広帯域信号で伝送してより高度な機能を実現するシステムオンパッケージを作製するための3次元実装技術を開発する。 2-(2)-<3> フレキシブル光デバイス技術の開発 ・次世代のユビキタス情報社会に資するために、印刷塗布プロセス等により高機能かつフレキシブルな光デバイスを実現する。具体的には、新規な有機・高分子材料等を用いて、移動度0.5 cm2/Vs以上で動作するp型及びn型トランジスタや外部量子効率10%以上で発光する高輝度発光素子を開発するとともに、有機・無機材料を用いた独自のプロセス技術による光回路素子を開発する。また、その高性能化や素子の一体化を促進することにより、モバイル情報端末への応用に向けたフレキシブルなディスプレイや光回路等を開発する。 2-(3) 電子機器を高機能化・低消費電力化するデバイス技術の開発 モバイル情報機器及びロボットに搭載されるCPUや入出力デバイスの機能向上とバッテリーによる長時間駆動を目指し、集積回路の性能向上に必須な半導体デバイスの集積度及び動作速度を向上させ、国際半導体技術ロードマップで2010年以降の開発目標とされる半導体技術を実現する。また、新デバイス構造を用いた集積回路の性能向上と低消費電力性を両立させる技術及び強磁性体や強誘電体等の半導体以外の材料を用いた新デバイス技術を開発する。 2-(3)-<1> 次世代半導体技術の開発 ・半導体集積回路用トランジスタを極微細化、高性能化及び超高密度集積化するために必要な技術を開発する。具体的には、高移動度チャンネル材料及び高誘電率絶縁膜等の新材料技術を開発し、それに関連する新プロセス技術と計測解析技術及び要素デバイス技術並びに回路構成技術を基礎現象の解明に基づいて開発する。 2-(3)-<2> 低消費電力システムデバイス技術の開発 ・ユビキタス情報ネットワークの中核となる、低消費電力性と高速性を両立した集積回路の実現を目指して、回路機能に応じたデバイス特性の動的制御が可能となるダブルゲート構造等を利用した新規半導体デバイス及び強磁性体や強誘電体等の不揮発性を固有の物性として持つ材料を取り込んだ新規不揮発性デバイスを開発する。併せて、これら低消費電力デバイスをシステム応用するのに不可欠な集積化技術に取り組み、材料技術、集積プロセス技術、計測解析技術及び設計技術並びにアーキテクチャ技術等を総合的に開発する。 3.信頼性の高い情報基盤技術の開発による安全で安心な生活の実現 知的生活を安全かつ安心して送ることができる、信頼性の高い情報通信基盤を確立するためには、ネットワーク、ソフトウェア及びハードウェアの各々の要素の信頼性を高めることが重要である。ネットワークに関しては、様々な情報資源に対するセキュリティ技術を開発しネットワークそのものの信頼性を高める。ソフトウェアに関しては、その信頼性の向上に有効な検証技術を確立する。ハードウェアに関しては、増大する情報量に対応するために、大容量かつ高速に処理し得る通信技術及び情報蓄積技術の高度化を図る。さらに、信頼性の高い情報基盤技術を利用して自然災害の予測や被害軽減に資することにより、安全かつ安心な生活の実現に貢献する。 3-(1) 情報セキュリティ技術の開発 信頼性の高いネットワークの構築に向けて、情報セキュリティで最も重要なネットワークの利用における情報漏洩対策及びプライバシー保護に資するために、暗号、認証及びアクセス制御等の情報セキュリティに関する基盤技術及びそこで用いられる運用技術を開発する。 3-(1)-<1> 情報セキュリティ技術の開発と実用化のための検証 ・情報漏洩対策及びプライバシー保護を目的として、暗号、認証、アクセス制御及びそれらの運用技術を開発する。また、量子情報セキュリティに関する基盤的研究として、情報理論や物理学の知見を用いたモデル解析及びその実証実験を行う。さらに、OSから実装までの様々な技術レベルにおいて総合的に研究を行い、セキュリティホールの防止、迅速な被害対応及び製品が安全に実装されているかどうかの検証等の技術を実用化する。 3-(2) ソフトウェアの信頼性・生産性を向上する技術の開発 利用者が安全に安心して使用できる信頼性の高いシステムソフトウェアの開発とその生産性向上に資するために、様々な数理科学的技法を活用してシステムソフトウェアの動作検証を総合的に行う技術を開発する。 3-(2)-<1> 数理科学的技法に基づくシステム検証技術の開発 ・モデル検査法やテスト技法等のシステム検証の要素技術とその数理的基盤の研究を行い、システム検証ツールの統合的利用を可能にするソフトウェア環境を構築する。また、システム検証の数理的技法をシステム開発現場に適用するための技術を開発する。 3-(3) 大容量情報の高速通信・蓄積技術の開発 動画コンテンツ等により増大する情報量に対応した通信の大容量化及び高機能化を実現するためには、光の高速性等を最大限に利用した大容量高速通信技術及び情報蓄積技術の確立が必要である。そのために、次世代の光通信ネットワーク用の高速光デバイス及び光信号処理技術、従来のルータ及びスイッチなどを用いない超広帯域通信網の利用技術等の基盤技術を開発する。また、近接場光等の新たな原理に基づいたテラバイト級大容量光ディスクを実用化する。 3-(3)-<1> 大容量光通信技術の開発 ・半導体ナノ構造を用いた160Gbps以上で動作する光スイッチデバイスと光信号再生技術を開発する。また、量子ドット、量子細線及びフォトニック結晶等のナノ構造を用いた光集積回路及び超小型光回路を開発する。さらに、光の位相情報等の精密な制御による量子情報通信技術を開発する。 ・160Gbps以上で動作する大容量光通信の実用化に向けて、波長の動的制御に基づく超高速データ転送を実現するトラフィック制御方式及びミドルウェアからのネットワーク資源動的確保方式を開発する。 3-(3)-<2> 光ストレージ技術の開発 ・テラバイト級超大容量光ディスクの事業化に向けて、第1期で開発した近接場光、局在光及び薄膜の熱光学非線形特性を用いた光ディスクの信号光を増幅する技術を発展させ、製品化へ向けた問題点の抽出と改良を企業と連携し、技術移転を行う。 3-(4) 自然災害予測のための情報支援技術の開発 信頼性の高い情報通信基盤を活用した自然災害の予測及び被害低減により安全かつ安心な生活を実現するために、多様な地球観測データの処理、分析対象の適切なモデリング及び地球規模での大規模シミュレーションを統合して、短時間で確実に災害及びその被害状況を予測するための情報支援技術を開発する。 3-(4)-<1> 防災のための地球観測支援技術の開発 ・災害予測及び被害軽減に資するために、地球観測衛星及び地上観測センサ等から得られる多様な観測データを処理する技術と、大規模数値シミュレーション技術を統合した新たな情報処理支援システム技術を開発する。 4.次世代情報産業を創出するためのフロンティア技術の開発 新たな電子技術及び光利用技術を開発することにより次世代の情報サービス産業の創出を目指す。そのために、新機能材料及び新物理現象に基づいた革新的ハードウェアの構築を目的とした電子デバイス技術、バイオや医療と光情報処理との分野融合的な新しい光利用技術及び超伝導を利用した電子デバイス技術を発展させた次世代の電子計測・標準化技術等のフロンティア技術を開発する。 4-(1) 電子・光フロンティア技術の開発 次世代産業創出の核となる情報通信のフロンティア分野を確立するために、新規材料、新物理現象に基づいた革新的電子デバイス技術及び光情報処理技術のバイオや医療分野との融合による光フロンティア技術を開発する。 4-(1)-<1> 新機能材料や新物理現象に基づく革新的電子デバイス技術の開発 ・量子閉じ込め状態や超伝導状態において顕著となる電子の磁性や波動性に起因して、電気的または磁気的特性が劇的変化を示す新機能物質を対象として、物理現象の探索、解析及び制御に関する研究を行う。これにより、量子効果や超伝導効果を示す新しい電子材料の開発、コンピュータの演算速度及び消費電力を飛躍的に改善できる革新的な情報処理ハードウェア応用のための要素技術を開発する。 4-(1)-<2> 光フロンティア技術の開発 ・フェムト秒パルスの光波内位相制御技術を確立するとともに、アト秒領域での超短パルスの発生、計測及び制御のための技術を開発する。 ・タンパク質やDNA等の配列集積化技術と光計測技術との融合による高感度、高速かつ高密度集積型バイオセンシング素子の開発及び補償光学技術と三次元分光技術を駆使した眼底カメラ等の高分解能3次元機能イメージング技術を開発する。 ・第1期で開発した10nmオーダーの近接場光微細加工による光ディスク用原盤(マスタリング)の高度化技術及びナノ粒子を応用した光による高感度分子センサのバイオや医療分野への応用技術を開発する。 4-(2) 超伝導現象に基づく次世代電子計測・標準技術の開発 絶対的な高精度性を必要とする先端計測及び標準化に関する技術の実現に資するために、超伝導現象の特性を活用した電子計測デバイス及びそれを用いた標準システムの確立と普及を図る。 4-(2)-<1> 超伝導現象を利用した電圧標準技術の開発 ・独自に開発したNb系ジョセフソン素子大規模集積技術を用いて、1〜10 V出力の直流電圧標準システムを開発し、ベンチャー企業等に技術移転することにより世界的規模での普及を行うとともに、高精度な交流電圧標準等に用いる次世代の計測・標準デバイスを開発する。 III.産業競争力向上と環境負荷低減を実現するための材料・部材・製造プロセス技術の研究開発 環境との調和を取りながら国際競争力を持つ先端ものづくり産業の創出のためには、製造に必要な資源とエネルギーを最小に抑えながら最高の機能を持つ製品を生産する製造技術を実現するとともに、低環境負荷製品の製造に必要な機能性材料技術及び部材化技術の実現が不可欠である。そのため、製造の低環境負荷と製造コストの削減及び製品の高機能化について統合的に開発する技術が期待されている。また、環境負荷を低減する機能性部材の開発により、製造業だけでなく輸送機器及び住居から排出されるCO2の低減に大きく貢献していかなければならない。さらに、先端微細加工設備の共同利用等を進めて先端技術を産業にすみやかに移転し活用を図ることによりものづくり産業を支援するとともに、ナノテクノロジーを情報通信、環境及び医療等の研究開発に横断的に適用することにより産業技術に革新的な進歩をもたらす。 1.低環境負荷型の革新的ものづくり技術の実現 我が国のものづくり技術の国際競争力を強化するために、製造プロセスの省資源化や省エネルギー化と合わせて製品の高機能化・高付加価値化を実現できる革新的な技術の開発が求められている。このため、機能のカスタマイズに即応できる省資源型革新的製造技術の開発を行い、材料資源の無駄を生じさせることなく高機能・高付加価値を持つ製品の多品種少量生産を実現する。また、省エネルギー型製造プロセス技術の開発を行い、従来の製造手法よりも低温のプロセスを利用する技術等により製造に要するエネルギーを削減し、有機材料との複合化等による製品の高機能化を実現する。 1-(1) 省資源と高機能化を実現する製造プロセス技術の開発 素材を成形して加工するモデルプラントを構築して製品製造に適用し、資源消費量や排出物量等の総合的な評価を行って、製造プロセスを最適化する手法を開発する。また、機能のカスタム化が必要とされる集積化学センサ等の製造への適用を目指し、スーパーインクジェット技術をコアとして、必要な微細構造を必要な位置に最小の資源材料で形成するオンデマンドナノマニュファクチャリング技術及びナノ構造とマクロ構造とを媒介するメゾスケール技術の開発を行う。さらに、材料の無害化や微細構造の内在化等の高付加価値製品を省資源で製造するためのテーラードリキッド法をコアとしたプロセス技術を開発する。 1-(1)-<1> 製造プロセスの最適化手法の開発 ・射出成形や放電加工を備えたモデルプラント等を用いて、加工条件や設計等を最適化することにより、環境性と経済性に優れたローエミッション型製造プロセスを実現する。 ・ミクロな構造を内包する材料を使用してその構造をマクロな製品の機能に生かした製品を実現するために、ミクロな構造とマクロな機能との相関に関する大規模計算を小規模のコンピュータシステムを用いて効率よく実現できるマルチスケール数値解析技術を確立する。 1-(1)-<2> オンデマンドナノマニュファクチャリング技術の開発 ・超微細インクジェット技術によるナノデバイスの高密度実装を実現する配線等の実用的なオンデマンドナノマニュファクチャリング技術に関する開発を行う。 1-(1)-<3> 製品の高付加価値化を実現するフレキシブル製造技術の開発 ・表面積の飛躍的増大等の高機能化を目指して、空孔と微細構造とが入れ子に構成されている新セラミックス材料を無害元素から作製するテーラードリキッドソース法のプロセス技術の開発と、上記の新セラミックス材料を3次元的に集積することにより、1kW/L級の高出力セラミックスリアクタ等の開発を行う。 ・セラミックスの大型部材化やミクロンレベルの微細3次元構造の成形及び両者を併せもつ構造を特性劣化を起こさずに実現する成形技術を開発する。また、自己潤滑層等を有するヘテロ構造部材化技術を開発する。 1-(2) 省エネルギー型製造プロセス技術の開発 製造プロセスにおける飛躍的な省エネルギーを実現することを目的にして、従来高温でしかできなかった薄膜製造を低温で実現する技術及び機械加工機のコンパクト化を実現する技術を開発する。具体的には、微粒子の噴射コーティング技術をコアとして、低温で高性能セラミックス材料を積層する省エネルギー薄膜製造プロセスを開発する。また、機械加工及び微細加工の製造効率を高め省エネルギー化を実現する小型製造装置を開発する。 1-(2)-<1> 省エネルギー・高効率製造技術の開発 ・微粒子の基板表面での衝突による非熱平衡過程に基づいた噴射コーティング法を用いて、低温で高性能セラミックス材料等を積層する省エネルギー薄膜製造プロセスを開発し、単位時間当たりの成膜速度を第1期で達成した性能の5倍以上に高速化する。 ・セラミックスや特殊合金部材等の製造プロセスの効率を飛躍的に向上させるため、湿式ジェットミル等によるスラリー調整から成形に至る工程の最適化技術と統合化技術を開発する。 ・微細加工の省エネルギー化を実現するため、デスクトップサイズの微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical System, MEMS)の製造装置を試作する。そのため、マスクレスのパターンニング技術やマイクロチャンバー間の試料移動時の位置決め技術等を開発する。 ・高剛性・高減衰能部材や高機能摺動面の開発により、切削や研削等の加工効率を高める高度機械加工システムの実現に資する。 2.ナノ現象に基づく高機能発現を利用したデバイス技術の創出 国際競争力を強化するためには、製造コストの低減はもとより、ナノ現象に基づいた革新的な機能を有するデバイス技術の創出が求められている。このため、分子及び超微粒子等の相互作用による自己組織化プロセスに基づく製造技術の開発及び化学合成された機能性有機分子等をナノ部品とするデバイス技術等の開発を行う。また、デバイスの新機能を実現するために、新材料技術及び量子効果等に起因する現象に基づくデバイス技術の開発、さらにはナノスケールで発現する多様な現象の理論的解明とそのシミュレーション技術等の開発を行う。 2-(1) ナノ構造を作り出す自己組織化制御技術の開発 生体内の有機分子に見られるような高度な自己組織化に倣って、材料固有の物性を利用して自己組織化的にナノ構造を作り出す技術が求められている。そのために、人工的に設計・合成した有機分子による熱平衡下での自己集合化を利用してチューブ構造等を作り出し、超高感度分析手法等への応用を図る。また、基礎的な視点から非平衡下の自己組織化のメカニズムを解明し、構造生成の新たな制御を可能にする。 2-(1)-<1> ボトムアップ法の高度制御技術の開発 ・生体分子やガス状分子等の極微量の分子を分析するために、第1期で開発したナノチューブ制御技術やナノ粒子調製法を利用して、バイオチップやガラスキャピラリー等からなる超高感度分析技術を開発する。 2-(1)-<2> 自己組織化メカニズムの解明とその応用技術の開発 ・非平衡下での自己組織化メカニズムの解明とシミュレーション技術の構築及びそれらを利用した自己組織化モデリングツールを開発する。 ・自己組織化現象の解明に基づいて、光、電磁場、化学物質及び機械応力等の外部刺激に対する応答をプログラムされたスマート分子システムや記憶機能を持つナノ構造液晶デバイス等を開発する。 2-(2) ナノスケールデバイスを構成する微小部品の作製及び操作技術の開発 均一なナノカーボン構造体を作製する技術を開発し、カーボンナノチューブ等を部品として利用したナノデバイスの実現を目指す。また、有機分子や磁性半導体等の新材料を開発し、それらをトップダウン手法によって作られたナノ構造に組み込んで機能を発現させ、分子エレクトロニクス等へ展開するための技術を開発する。 2-(2)-<1> ナノカーボン構造体の構造制御技術と機能制御技術の開発 ・カーボンナノチューブの実用を目指して、用途に応じて直径、長さ及び成長面積等の制御が可能な単層ナノチューブ合成技術を確立し、それを用いたナノチューブデバイスの基礎技術を開発する。 ・ナノカーボン構造体及びそれに含有される金属元素等を単原子レベルで高精度に分析できる高性能透過型電子顕微鏡及びナノカーボン構造体等の高精度な分光学的評価法を開発する。また、ナノカーボン技術の応用として、基板に依存しない大面積低温ナノ結晶ダイヤの成膜技術を開発するとともに、機械的、電気化学的及び光学的機能等を発現させる技術を開発する。 2-(2)-<2> ナノ現象を活用した革新的エレクトロニクス技術の開発 ・カーボンナノチューブの主要パラメータを厳密に制御するための精密合成技術をさらに発展させることにより、カーボンナノチューブの真正物性を明らかにするとともに、種々の元素や化合物を内包したカーボンナノチューブの持つ特異物性を見出して、分子デバイスを中心とした新たな応用を展開する。 ・単一分子デバイスや分子エレクトロニクスに応用するため、電子・スピン物性に優れた半導体や金属的物性を示す合成有機分子等の新物質探索と物性解明及びナノ配線を実現するための分子と電極との新たな結合手法の探索を行う。 ・化合物半導体、金属、酸化物等のヘテロナノ構造で発現する電荷とスピンが関わる量子現象を解明し、その現象を利用した超高効率ナノデバイスを開発する。また、そのためのナノスケール微細加工・形成技術を開発する。 2-(3) 飛躍的性能向上をもたらす新機能材料及びそのデバイス化技術の開発 スイッチング速度、発光及び耐電圧等でシリコンの性能を凌駕し得る優れた特性を有しながら、材料化やプロセス技術が十分に確立されていない新材料をデバイス化するためには、材料特性の評価、材料の高度化及びプロセス技術の開発が必要である。さまざまな高機能材料のうち、革新的な電子技術を創成する独創的成果が期待される強相関電子材料及び加工の難しさから要素技術の開発が不十分なダイヤモンド材料に関する技術を開発する。 2-(3)-<1> 強相関電子技術の開発 ・強相関電子が引き起こす相転移の制御技術、強相関デバイスプロセス技術及び量子位相制御理論等の基礎を確立するとともに、プロトタイプを作製して超巨大磁気抵抗センサ、テラヘルツ全光型スイッチング素子等の強相関デバイスの機能を実証する。 2-(3)-<2> 新機能ダイヤモンドデバイスの開発 ・各種の応用を目指したダイヤモンドデバイスを実現するために、材料加工技術、表面修飾技術及び界面準位の面密度を1012cm-2以下に抑制する界面制御技術の開発を行う。 ・ダイヤモンドの持つ優位性を生かした10kV耐圧デバイス、ナノモルレベルの感度を持ち100回繰り返し検知可能なバイオセンサ及び紫外線発光デバイス等のダイヤモンドデバイスを開発する。 ・ダイヤモンドのデバイス化に不可欠な大型基板作製のための基盤技術を開発し、1インチ以上の種結晶を合成する。 2-(4) ナノ現象解明のためのシミュレーション技術の開発 ナノスケールデバイスの動作原理の解明とその設計・製作には、数nmから数100nmのスケールをカバーする高精度かつ高速なナノシミュレーション技術が不可欠である。そのため、ナノシミュレーション技術の開発を行い、分子デバイスや有機デバイス等の作製を支援する。また、より広範なナノ物質の構造、物性、反応やナノ現象等について広範な理論研究を行う。 2-(4)-<1> ナノ物質の構造と機能に関する理論とシミュレーション技術の開発 ・量子力学及び統計力学に基づくシミュレーション技術を高機能化及び統合化して、ナノデバイス設計のための統合シミュレーションシステムを開発する。 ・ 単一分子を介した電子輸送や単一分子に起因する化学等の問題に適用できる新しいシミュレーション理論を構築する。 ・ナノ材料やナノ流体等の構造及び機能に関する理論を発展させ、実用的なナノ材料設計及びナノデバイス・プロセスモデリングを行うソフトウェアプラットフォームを構築する。 ・ナノスケールの理論研究により、量子コンピューティングを実現する新たな構造及び相転移を高速化する光誘起相転移材料の最適組み合せ構造等の提案を行い、最先端デバイスの開発を先導する。 3.機能部材の開発による輸送機器及び住居から発生するCO2の削減 製造業以外で大きな排出源である輸送機器と住居からのCO2排出の削減に材料技術から取り組むため、軽量合金部材の耐熱性向上と大型化する技術を開発し、エンジンと車体の軽量化を実現し、また、高断熱等の機能化建築部材に関する研究開発を行うことにより、建築物の居住性を損なわずにエネルギーの消費低減に貢献する。 3-(1) 耐熱特性を付与した軽量合金部材の開発 輸送機器の重量を軽減することを目的として、実用的な耐久性を持つ鋳鍛造性と耐クリープ性に優れた耐熱軽量合金及びその加工技術の開発を行い、エンジン部材等への使用を可能にする。 3-(1)-<1> 耐熱性軽量合金の開発 ・軽量金属材料のエンジン部品を実現するため、鋳鍛造部材の製造技術に必要な耐熱合金設計、連続鋳造技術、セミソリッドプロセスによる高品質部材化技術、接合技術及び耐食性向上のためのコーティング技術を開発する。 3-(2) 軽量合金材料の大型化と冷間塑性加工を可能とする部材化技術の開発 輸送機器の車体等を軽量化するため、冷間塑性加工が可能な軽量合金の薄板材とその加工技術を開発し、低コストの軽量合金素形材の生産技術を実現する。 3-(2)-<1> 高加工性軽量合金素形材の開発 ・車体用の軽量金属材料を用いた大型構造部材を製造するために必要な連続鋳造技術、冷間塑性加工プロセスによる部材化技術、集合組織制御による面内異方性を低減する圧延薄板製造技術、接合技術及び耐食性向上のためのコーティング技術を開発する。 3-(3) 快適性及び省エネルギー性を両立させる高機能建築部材の開発 住環境の冷暖房の効率を向上させる高断熱部材の開発、我が国の高温多湿な気候風土に適した「調湿材料」等の居住者の快適性を確保する知能化建築部材の開発及びそれらの低コスト化技術の開発を行う。 3-(3)-<1> 省エネルギー型建築部材の開発 ・建築物の空調エネルギーを10%削減するための調光ガラス、木質サッシ、調湿壁、透明断熱材、セラミックス壁及び照明材料等の各種部材の開発及び低コスト化を行う。また、熱収支シミュレーション等を駆使してその省エネルギー効果を検証する。 4.ものづくりを支援するナノテク・材料共通基盤の整備 我が国のものづくり産業の国際競争力強化を支援するためには、ものづくりの共通基盤ともいえる先端的な計測・加工技術を開発し、これを国内事業者に普及することが重要となる。そのため、ナノレベルでの精密な計測や加工を可能とする技術や設計した機能をそのまま実現する部材などの開発を行う。さらに、これらの技術を産業に移転するための先端微細加工用共用設備の整備と公開運用を行うほか、加工技術の継承と活用を図るためのデータベース等を作成して、公開する。 4-(1) 先端計測及びデータベース等の共通基盤技術の開発 機能性材料及び先端計測・加工技術の社会への受容を促進するため、共通的また政策的な基盤の整備を行い、ものづくり産業を支援し、国際競争力の強化に資する。また、加工技術の継承と活用を推進することにより、少子高齢化による熟練技術者の不足問題への対策を行う。さらに、製造環境や作業者の状態等を総合的にモニタリングする技術等を開発し、製造産業の安全と製品の信頼性の向上に貢献する。 4-(1)-<1> 高度ナノ操作・計測技術とナノ構造マテリアルの創成技術の開発 ・加工と計測との連携を強化するための、プローブ顕微鏡等を応用した複合的計測技術を開発する。また、計測データの解析を支援するナノ構造体のシミュレーション・モデリング法、高精度計測下での生体分子のその場観察と操作技術等の新手法を開発する。 ・金属ナノ粒子、ナノコンポジット材料やコポリマー等のナノスケールの微細構造を持ち、特異な物性を発現する新規ナノ材料の開発及び探索を行う。また、ナノ構造材料の形成プロセスと機能的利用を進めるモデリング技術を開発する。 4-(1)-<2> 新機能部材開発のための基盤技術の開発 ・ナノ結晶粒や準安定相の利用等による高性能なエネルギー変換型金属部材及び鉛を用いない新規圧電体等の低環境負荷型セラミックス系材料に関して、材料設計、作製プロセス及び特性評価方法等を開発する。 ・高次構造制御等により、優れた電磁気的、機械的、熱的及び化学的特性を示す有機部材及び有機無機ハイブリッド部材を開発する。 4-(1)-<3> 加工技能の技術化と情報化支援技術の開発 ・加工条件や異常診断等に係わる熟練技術者の技能をデジタル化する手法を開発し、その結果をもとに加工技術データベースを構築する。これらの成果を企業に公開することで、要素作業の習得に要する期間の半減等の企業における人材育成への貢献を実務例で実証する。 ・製造業が自社業務に合った設計・製造ソフトウェアを容易に作成することを可能とするプラットフォームを開発して、1000社以上への導入を目指す。さらに、企業の業務形態に合わせて設計・製造プロセスをシステム化・デジタル化する技術を開発して公開し、現場での運用により効果を確認する。また、設計・製造プロセスにおける性能・品質の多面的評価等を行う技術を開発する。 4-(1)-<4> 安全・信頼性基盤技術の開発 ・製造環境等のモニタリング用として、H2やVOC等の雰囲気ガスや温度を高感度かつ選択的に検出するセンサを開発する。また、作業者の状態を総合的にモニタリングし、作業の安全性と信頼性を保つための予測技術を開発する。 ・MEMS技術を利用して、通信機能を有する携帯型のセンシングデバイスを開発し、センサネットワークのプロトタイプとして実証する。 ・プローブ特性やデータ処理方法を改良した計測システムの構築により、大面積部材の非破壊検査が現状の10%以内の時間で可能となる技術を開発する。 4-(1)-<5> ナノテクノロジーの社会影響の評価 ・ナノテクノロジーの社会影響について、意識調査も含めた総合的な調査を実施して、その結果を広く公表して施策の提言等に資する。ナノテクノロジーの技術的側面と社会的意義及び潜在リスクをバランス良く整理したナノテクについての教材を開発して普及を図る。 4-(2) 先端微細加工用共用設備の整備と公開運用 ナノテクノロジーやMEMS作製に必要な最先端の微細加工施設を整備し、産業界及び大学の研究者と技術者が利用可能な仕組みを整え、微細加工のファウンドリ・サービス等を実施して、横断的かつ総合的支援制度を推進し、産業界の競争力強化と新産業創出に貢献する。 4-(2)-<1> ナノプロセッシングファウンドリ・サービスの実施 ・共用ナノプロセシング施設をさらに拡充・整備し、支援プログラムを通じて産総研内外に公開することで、ナノテクノロジー研究者・技術者の研究開発支援を充実させる。 4-(2)-<2> MEMSファウンドリ・サービスの実施 ・共用MEMSプロセッシング施設をさらに拡充・整備し、産総研内外に公開することで、プロトタイピングを迅速に行うなどにより、研究者・技術者への研究開発支援を行う。 5.ナノテクノロジーの応用範囲の拡大のための横断的研究の推進 ナノテクノロジーの基盤技術をバイオテクノロジーへ応用展開し、医療技術等に革新的な進歩をもたらすための融合的な研究開発を行う。そのため、ナノスケールの計測・分析技術等を駆使して、生体分子間の相互作用等の解析を行い、その人工的な制御を可能とする。また、計算機の利用技術の開発によってナノスケールの生体分子のシミュレーションを実用化し、創薬等に寄与する。 5-(1) バイオテクノロジーとの融合による新たな技術分野の開拓 生体と材料表面とのナノスケールの相互作用を利用したバイオインターフェース技術の開発を行い、創薬、診断及び治療に関わる技術の高度化に貢献する。また、創薬における探索的研究プロセスを大幅に短縮するタンパク質等の複雑な生体分子のシミュレーション技術を開発する。 5-(1)-<1> バイオインターフェース技術の開発 ・標的指向ドラッグデリバリシステムの効果を前臨床段階で確認し、製薬企業への技術移転を図る。 ・生体適合セラミックスのナノ構造を制御する新規形成プロセスの開発を行い、人工骨や経皮デバイス等へ応用する。 ・微小流路における流体現象を活用した診断用チップの実用化を図る。また、超臨界流体の特異性を利用した局所的化学プロセスを開発し、高効率流体化学チップを実現する。 5-(1)-<2> 原子・分子レベルのバイオシミュレーション・モデリング技術の開発 ・これまで開発してきたフラグメント分子軌道法等のシミュレーション手法を発展させ、2万個程度の原子からなるタンパク質のような巨大分子の電子状態計算を可能にする。さらに、他のシミュレーション手法と組み合わせて、タンパク質工学や創薬における分子設計への適用を実現する。 IV.環境・エネルギー問題を克服し豊かで快適な生活を実現するための研究開発 環境・エネルギー問題を克服し豊かで快適な生活を将来にわたって維持していくためには、産業活動に伴い発生する環境負荷を極力低減させつつ、エネルギーの安定供給を確保することにより、社会、経済の持続可能な発展を実現させていくことが求められる。このため、産業活動や社会生活に伴う環境負荷低減を図る観点から、環境予測、評価及び保全技術を融合させた技術により、環境対策を最適化する。また、地圏・水圏循環システムの体系的理解に基づいて、環境に調和した国土の有効利用を実現するとともに、エネルギーと資源の効率的利用によって、化学産業の環境負荷低減を促進する。エネルギーの安定供給確保を図る観点から、燃料電池及び水素等の分散エネルギー源の効率的なネットワークを構築するとともに、再生可能エネルギーであるバイオマスエネルギーを導入し、エネルギー自給率を向上させ、CO2排出量を削減する。加えて、産業、運輸及び民生部門の省エネルギー技術開発により、CO2排出をさらに抑制する。 1.環境予測・評価・保全技術の融合による環境対策の最適解の提供 環境対策の最適解を提供する新しい技術を創造するためには、評価技術及び対策技術の双方を高度化しなければならない。このうち、評価技術においては、化学物質リスクの評価に基づいた環境対策を提案する技術と環境負荷の評価に基づいた環境対策を提案する技術の両方を確立する必要がある。前者に対しては、最適なリスク管理を実現するための技術を、後者に対しては、生産・消費活動の最適解を提案できる技術を開発する。また、対策技術においては、環境汚染の拡大を未然に防止する技術が必要である。このため、汚染の早期検出及び経時変化を予測できる環境診断・予測技術及び汚染を効率的に除去するリスク削減技術を開発する。 1-(1) 化学物質の最適なリスク管理を実現するマルチプルリスク評価手法の開発 化学物質の最適なリスク管理を実現するため、リスク評価の概念を普及させるとともに、評価と対策の融合を含む総合的なリスク評価技術とそれを用いた管理手法を開発する必要がある。リスク評価の概念普及のためには、既存物質について詳細なリスク評価を実施して公開するとともに、代替物質や新技術による生産物等のリスク評価も実施する。総合的リスク評価のためには、従来困難であった多面的な評価に基づくマルチプルリスク評価技術を開発する。化学物質のうち、火薬類や高圧可燃性気体等については、利用時における安全性の確保も重要な課題である。このため、安全性評価基準等の国際的統一化に向けた研究開発を実施するとともに、構造物等の影響を考慮した評価技術を開発し、燃焼・爆発被害を最小化する技術を開発する。 1-(1)-<1> マルチプルリスク評価手法の開発 ・リスク対ベネフィットを基準とした管理手法を広く普及させるため、化学物質リスクによる損失余命に生活の質という観点を組み込んだ新しい評価手法及び不確実性を含んだ少ないデータからリスクを推論する手法を開発する。 ・30種類以上の化学物質について詳細リスク評価書を完成させ、公表するとともに、社会とのリスクコミュニケーションの中でリスク評価手法を改善し定着させ、行政、産業界での活用を促進する。また、これまで開発してきたリスク評価・解析用ツールを公開し、行政、産業及び教育の場で広く普及させる。 ・互いに関連しあう複数のリスクのトレードオフ構造の中で、社会が許容可能なリスクを選択できるマルチプルリスク管理のためのリスク評価手法を確立するため、複合製品のリスク評価手法、定量的構造活性相関(QSAR)を用いた未知の化学物質の毒性予測手法及び多物質を対象にした包括的評価手法を開発するとともに、すでに実施されてきたリスク管理対策事例から政策効果等のデータベースを構築する。 ・難燃剤、工業用洗浄剤、溶剤等の各種代替物質の開発過程で、その導入の合理性を評価することが可能なリスク評価技術を開発するとともに、未規制物質の中から代替品を選択する技術を開発する。 ・環境中でのナノサイズ物質の反応・輸送特性を解析できる粒子計測・質量分析技術を開発するとともに、ナノテクノロジー等の新規技術体系により作られる物質に対し、社会への導入以前にそれらの物質に内包されるリスクを事前評価する手法を開発する。 1-(1)-<2> 爆発の安全管理技術の開発 ・火薬類や高圧可燃性気体等の燃焼・爆発性危険物については、評価基準等の国際的統一化(GHS)が急速に進んでいることから、国連試験法を改定するとともに、我が国の実情に則した小型かつ高精度で国際的にも利用可能な試験法を開発する。これら新規試験法により取扱技術基準の資料となる各種保安データを蓄積する。 ・火薬類や高圧ガス等の燃焼・爆発の影響の予測及び評価のために、構造物や地形等を考慮した周囲への影響を予測する手法を開発し、燃焼・爆発被害を最小化するための条件を明らかにする。また、海外事例を盛り込んだ燃焼・爆発事故災害データベース及び信頼性の高い煙火原料用火薬類等の物性データベースを整備・公開する。 1-(2) 生産・消費活動の最適解を提案するライフサイクルアセスメント技術の開発 生産と消費に係わる諸活動の環境、経済及び社会への影響の統合的な評価手法として、ライフサイクルアセスメント(LCA)技術を開発し、広く普及させるとともに、LCAの方法論の適用対象を拡大する必要がある。このため、独自に開発したLCA実施用ソフトウェアを国内外に普及させるとともに、LCA研究の国際的なネットワークを構築する。適用対象の拡大については、企業や自治体等の組織の活動及び地域施策をLCAの方法論に基づき評価する手法を開発し、組織の活動計画の立案過程にその評価を導入する。 1-(2)-<1> 生産・消費活動の最適解を提案するライフサイクルアセスメント技術の開発 ・最新の成果であるLCA実施用ソフトウェア(NIRE-LCA、ver.4)の、我が国及びアジア諸国への普及を加速するとともに、ソフトウェアの改良のため、素材・エネルギーに関する100品目以上のインベントリ(環境負荷項目)データの更新・拡充及び1,000人規模の調査等による社会的合意に基づいたインパクト評価手法を確立する。 ・従来の製品評価型LCAをベースに、企業活動、地域施策及びエネルギーシステムのインベントリとその影響並びに環境効率(価値/環境負荷)を組み入れた新しいLCA評価法を開発する。また、この評価法を企業、地方自治体等の活動計画や政策立案に複数導入する。 ・日本と密接な関係を有する国々とのLCA研究に関するネットワークを強化し、当該分野での国際的拠点として先導的な役割を果たすため、APEC地域を中心としたワークショップを開催するとともに、UNEP/SETACライフサイクルイニシアチブ、GALAC(世界LCAセンター連合)及びLCA関連のISOにおいて主体的に活動する。 1-(3) 環境問題の発生を未然に防止する診断・予測技術の開発 環境問題の発生を未然に防止するには、環境汚染を早期に検出するとともに、汚染防止対策の効果を確認して次の対策へのフィードバックを可能とする環境診断技術が必要である。また、得られたデータに基づき、環境の変化を予測し、対策の有効性を推定できる技術が必要である。このうち、前者に対しては、第1期に確立した計測要素技術をベースにして、高感度な水質監視や大気監視が可能なモニタリング技術を開発するとともに、微生物を利用した環境モニタリング技術を開発する。後者の予測技術に対しては、産業活動に起因する温暖化関連物質の排出源対策が緊急の課題であるため、CO2やフッ素系化合物の環境影響評価手法及び温暖化対策技術の効果を評価する手法を開発する。 1-(3)-<1> 環境診断のための高感度モニタリング技術の開発 ・水中の毒性量を評価する水質監視技術確立のため、毒物応答速度や再現性が悪い魚等を利用した既存システムに代わり、応答速度30分と分析誤差10%を有する微生物等の分子認識系を抽出・固定化した毒物センサを開発する。 ・レジオネラ等の有害微生物を迅速に検出するため、従来、培養法で数日間、DNA利用法でも数時間を要する分析を、数十分以内で分析可能な電気泳動とマトリックス支援レーザ脱離イオン化法質量分析装置(MALDI-MS)を利用した分析技術を開発する。 ・細胞内の分子形態や遺伝子発現を利用して、化学物質の有害性を評価するトキシコゲノミクスの分析法の確立のため、電気泳動及びプラズマ質量分析法による細胞中元素の分子形態が識別可能な分析装置の開発及び微少量試料のマイクロ流体システムに電気化学活性マーカーを有するプローブによる遺伝子検出チップ等を組込んだ細胞中遺伝子の網羅的解析システムを開発する。 ・高感度な水晶振動子センサを有害物質検出技術へ適用させるため、センサ間で相互干渉しない基板及び回路を開発し、応答速度を既存の1/2以下にした複数同時測定により、数十試料の分析を数時間で完了できる全自動センシングシステムを開発する。 1-(3)-<2> 地球温暖化関連物質の環境挙動解明とCO2等対策技術の評価 ・CO2海洋隔離の環境影響に対する定量的評価法確立のため、海洋炭素循環プロセスを解明するとともに、CO2海洋隔離時の環境モニタリング手法及び国際標準となる海洋環境調査手法を確立する。また、CO2の海洋中挙動を予測するため、海洋の中規模渦を再現可能とした数10kmの分解能を持つ海洋循環モデルを構築し、現実地形の境界条件、CO2放出シナリオや生物・化学との関連等を統合した予測シミュレーション技術を開発する。 ・クリーン開発メカニズムにおける植林の炭素固定量を評価するため、地上観測データと衛星データを統合的に解析する技術の開発により、現状50-100%である炭素収支推定誤差を半減させ、アジアの陸域植生の炭素収支・固定能の定量的マッピングを行う。また、CO2排出対策効果の監視の基本的ツールを提供するため、地域・国別CO2排出量変動の識別に必要な数100kmの空間分解能を持つCO2排出量推定手法(逆問題解法)を開発する。 ・都市高温化(ヒートアイランド現象)と地球温暖化の相互関係を評価する手法を構築するため、都市気象モデルと都市廃熱モデルの連成モデルを開発する。また、モデルにより都市廃熱の都市高温化を評価する手法を構築するとともに、廃熱利用や省エネルギー対策の都市高温化緩和に対する効果を定量的に評価する。 ・フッ素化合物の適切な使用指針を示すため、第1期で開発したフッ素系化合物の温暖化影響評価・予測手法を改良し、省資源性、毒性、燃焼特性等の要素を考慮した総合的評価・予測手法を開発する。 1-(4) 有害化学物質リスク対策技術の開発 リスク評価や環境負荷評価に基づいた事前対策によって、有害化学物質のリスク削減を実現するためには、従来の環境浄化・修復技術に加えて、潜在的な問題性が認識されていながら有効な対策がとられていない小規模発生源による汚染、発生源が特定困難な汚染及び二次的に生成する有害化学物質による汚染に対処可能な技術の開発が必要である。このため、空気、水及び土壌の効率的な浄化技術を開発する。また、小型電子機器など、都市において大量に使用されながら、効果的なリサイクル技術が確立していないために、廃棄物による潜在的な環境汚染の可能性がある製品等の分散型リサイクル技術を開発する。 1-(4)-<1> 環境汚染物質処理技術の開発 ・揮発性有機化合物(VOC)の小規模発生源を対象とし、有害な2次副生物を発生することなく従来比2倍以上の電力効率で数100ppm濃度のVOCの分解が可能な触媒法や低温プラズマ法を開発するとともに、高沸点や水溶性のVOCを吸着回収することが可能な新規吸着法等の処理プロセスを開発する。 ・水中の難分解性化学物質等の処理において、オゾン分解併用型生物処理法など、従来法に比べて40%の省エネルギーを達成する省エネ型水処理技術を開発する。また、再生水の有効利用のため、分離膜を組み入れた小規模浄化プロセスを開発する。 ・環境修復技術として、空気浄化については、ホルムアルデヒド等空気汚染物質の浄化が室内においても可能な光利用効率10倍の光触媒を開発する。また、発生源に比べ1桁以上低い有害物質濃度に対応するため、水質浄化については、超微細気泡及び嫌気性アンモニア酸化反応を利用し、土壌浄化については、腐植物質や植物等を利用することにより、各々処理能力を従来比3倍とする浄化技術を開発する。 ・フッ素系の界面活性剤として多方面で使用されているパーフルオロオクタン酸(PFOA)等難分解性化合物の環境中での動態を解明するとともに、光触媒等を利用した2次生成物フリーの安全な分解処理技術を開発する。 ・季節や天候の影響を考慮した効果的な発生源対策を導くことを目的として、浮遊粒子状物質やオキシダントの予測モデルを構築するため、誤差要因や未知のメカニズムを探索するフィールド観測を実施するとともに、拡散モデルを高精度化し、雲物理過程、植生モデル、ヒートアイランド現象等を導入したシミュレーション手法を開発する。 1-(4)-<2> 都市域における分散型リサイクル技術の開発 ・都市において多量に発生する廃小型電子機器等の分散型リサイクル技術として、再生金属純度を1桁向上しつつ50%以上省エネルギー化する金属再生技術を開発するとともに、20%以上の省エネルギー化と50%以上の再利用率を達成するプラスチック再生技術を開発する。同時に、分散型リサイクル技術の社会的受容性を評価する技術を開発する。 2.地圏・水圏循環システムの理解に基づく国土の有効利用の実現 地圏・水圏における物質循環の理解に基づいた、大深度地下利用などの国土利用の促進と、資源開発における環境負荷の低減が求められている。このため、自然と経済活動の共生を目指して、環境問題及び資源問題を解決することを目的として、地圏における循環システムの解明と流体モデリング技術の開発を実施する。また、沿岸域の海洋環境の疲弊を防ぎ持続的な低環境負荷利用を可能にするため、環境評価技術の開発を行う。 2-(1) 地圏における流体モデリング技術の開発 環境への負荷を最小にした国土の利用や資源開発を実現するために、地圏内部における地下水及び物質の流動や岩盤の性状をモニタリングすることが必要である。そのために、地圏内部の水循環シミュレーション技術を開発し、これらの技術に基づき、地下水環境の解明、地熱貯留層における物質挙動の予測及び鉱物資源探査に関する技術を開発する。また、土壌汚染等に関する地質環境リスク評価及び地層処分環境評価に関する技術を開発する。 2-(1)-<1> 地圏流体挙動の解明による環境保全及び資源探査技術の開発 ・独自に開発したマルチトレーサー手法を適用して、関東平野や濃尾平野等の大規模堆積平野の水文環境を明らかにし、こうした知見を利用して地球温暖化及び急速な都市化が地下水環境に及ぼす影響を評価する。また、地下水資源を持続的かつ有効に利用するため、地下水の分布、水質、成分及び温度の解析技術並びに地中熱分布に関する解析技術を開発する。 ・地熱資源を有効利用するため、地下流体挙動のシミュレーション技術を開発し、将来予測技術を確立するとともに、環境負荷の少ない中小地熱資源の開発に関する技術指針を産業界に提供する。 ・地圏流体の挙動の理解に基づき、産業の基礎となる銅や希少金属鉱物資源に関する探査技術を開発し、探査指針を産業界へ提示する。 2-(1)-<2> 土壌汚染リスク評価手法の開発 ・土壌汚染の暴露量を定量的に評価し、健康リスク及び経済リスクを低減するために、汚染地の土壌及び地下水の特徴を組み込んだモデルに加え、微生物や鉱物等による自然浄化機能を考慮に入れたモデルを確立する。これらのモデルを利用した地圏環境修復手法を開発し、工場等の土壌に関するサイトアセスメントへの適用を可能にする。 2-(1)-<3> 地層処分環境評価技術の開発 ・地層処分の際のサイト評価に役立てるため、岩石物性等の地質環境に関する評価技術の開発を行う。沿岸部では地下水観測データに基づいた塩淡境界面変動メカニズムの解明を行い、数値モデルを利用した超長期変動予測技術の開発を行う。また、沿岸部の地下1,000m程度までの地下構造探査手法について既存の調査事例を分析することにより、選定される調査地に最適な探査指針を提示するための知見を整備する。 2-(2) CO2地中貯留に関するモニタリング技術及び評価技術の開発 大気中のCO2削減のため、発生源に近い沿岸域においてCO2を地下深部に圧入する技術が期待されている。そのため、地下深部の帯水層のCO2貯留ポテンシャルの推定及びCO2の移動に対する帯水層の隔離性能評価に必要なモデリング技術を開発する。また、CO2を帯水層に圧入した際の環境影響評価のためのCO2挙動に関するモニタリング技術を開発する。 2-(2)-<1> CO2地中貯留技術の開発 ・CO2発生源に近い沿岸域において、帯水層の持つCO2隔離性能及び貯留ポテンシャルの評価を実施するために、地下深部の帯水層に圧入されたCO2の挙動を予測するモデリング技術の開発等を行う。また、帯水層に圧入されたCO2の挙動がもたらす環境影響を評価するため、精密傾斜計による地表変形観測等の物理モニタリング技術及び水質・ガス等の地化学モニタリング技術の開発を行う。 2-(3) 沿岸域の環境評価技術の開発 自然が本来持っている治癒力を利用して、人類の利用により疲弊した海洋環境を回復させることが求められている。そのため、沿岸域において、海水流動、水質などの調査手法の開発や環境負荷物質挙動の解明により、環境評価技術の高度化を図る。 2-(3)-<1> 沿岸域の環境評価技術の開発 ・沿岸域の環境への産業活動や人間生活に起因する影響を評価するため、沿岸域における海水流動調査、水質・底質の調査及び生物調査の手法を開発するとともに、環境負荷物質の挙動をモニタリングする技術を開発する。 3.エネルギー技術及び高効率資源利用による低環境負荷型化学産業の創出 低環境負荷型の化学産業を実現するため、長期的には枯渇資源である石油に依存したプロセスから脱却するとともに、短中期的には、既存プロセスの省エネルギー化や副生廃棄物の削減が必要である。前者については、バイオマスを原料とする化学製品の普及を図り、バイオマス由来の機能性を生かした化学製品の製造技術を開発する。後者については、特に資源の利用効率が低くて副生廃棄物も多いファインケミカル製造プロセスの廃棄物低減と、今後の需要増が予想される水素等の製造プロセスの省エネルギー化が望まれる。このため、副生廃棄物を極小化するファインケミカルの化学反応システムと、気体分離膜による省エネルギー型気体製造プロセスを開発する。 3-(1) バイオマスを原料とする化学製品の製造技術の開発 バイオマスを原料とする化学製品は現状では高価であるため、製品の普及を目指すためにはコストに見合った機能性を付与すると同時に、製造コストを低減しなければならない。機能性の付与のために、生物由来原料の利点である生分解性等を最大限活用するとともに、石油由来材料に近い耐熱性を有する部材の製造技術を開発し、また、バイオマス由来の界面活性剤(バイオサーファクタント)を大量に製造する技術を開発する。製造コストの低減のために、成分を効率的に分離及び濃縮できる技術を開発するとともに、成分を目的産物に効率的に転換できる技術を開発する。 3-(1)-<1> バイオマスを原料とする化学製品の製造技術の開発 ・バイオマス原料から、融点200℃前後で加工温度230℃前後のエンジニアリングプラスチック及び融点130℃前後で軟化温度80℃以上の食品容器用プラスチック等、生分解性と耐熱性に優れた化学製品の製造技術を開発する。また、容器包装材料として普及しているPETフィルムと同等の酸素透過度500mL・25.4µm/m2/day/MPa以下を満たすフィルムを合成する技術を開発する。 ・環境適合性を持つバイオサーファクタントの実用化を目的として、低コスト大量生産技術を開発するとともに、ナノデバイスなどの先端機能部材への適用を行う。 ・バイオマスからアルコール、酢酸等の基礎化学品を製造するプロセスの効率化のため、生成産物等を高効率で分離するプロセス技術及び生成産物を機能部材に高効率で変換するプロセス技術を開発する。 3-(2) 副生廃棄物の極小化を実現する化学反応システム技術の開発 高付加価値ファインケミカルズの製造プロセスの環境負荷を低減するためには、副生廃棄物量が多い選択反応における廃棄物量の削減が必要である。このため、市場導入が有望視されている高付加価値エポキシ化合物の選択酸化反応については、重金属や塩素などの酸化剤を用いないことで、それらが廃棄物として排出されないプロセスを開発し、選択水素化等のその他の選択反応については、超臨界等の反応場を用いて反応効率を向上させることで、副生廃棄物を削減する技術を開発する。 3-(2)-<1> 環境負荷の小さい酸化剤を用いる反応技術の開発 ・重金属酸化物の代わりに過酸化水素を酸化剤とする選択酸化反応技術として、転化率 50%、モノエポキシ化選択率90%、過酸化水素効率 80%以上で二官能性モノマーから非フェノール系エポキシ樹脂モノマーを合成する技術等を開発する。 ・塩素の代わりに酸素と水素を用いる選択酸化反応技術として、基質転化率10%、エポキシ化選択率90%、水素利用効率50%以上でプロピレンからプロピレンオキシドを合成する技術等を開発する。 3-(2)-<2> 反応効率を高めるプロセス技術の開発 ・有機溶媒に代えて超臨界流体場を利用して廃棄物を50%以上低減する選択的水素化反応プロセスを開発するとともに、協働型ハイブリッド触媒を用いて触媒効率を200%以上向上させる電池電解液製造プロセスを開発する。 ・マイクロリアクタ、マイクロ波及び複合機能膜等の反応場技術と触媒を組み合わせ、廃棄物生成量を50%以上低減するファインケミカルズの合成技術を開発する。 3-(3) 気体分離膜を利用した省エネルギー型気体製造プロセス技術の開発 今後の需要の増大が予想される水素と酸素を省エネルギーで製造する技術が求められている。そこで、省エネルギー型の水素製造プロセスを実現するため、高純度の水素を効率よく分離できるパラジウム系膜の適用温度領域を拡大して幅広い用途に利用可能とするとともに、低コスト化を目指して非パラジウム系膜の開発を行う。また、省エネルギー型酸素製造プロセスの実現のために、空気から酸素を高効率で分離する膜を開発してその実用化に向けた技術開発を行う。 3-(3)-<1> 気体分離膜を利用した省エネルギー型気体製造プロセス技術の開発 ・99.9%以上の高純度水素の高効率な製造プロセスの開発を目的として、常温から600℃までの広い温度領域で安定性を持つパラジウム系薄膜を開発し、これを用いて水素分離システムの実用型モジュールを開発する。また、安価な無機材料や非貴金属材料を用いた水素分離用非パラジウム膜の開発及びプロトタイプモジュールを作製する。 ・空気からの高効率型の酸素製造プロセス用として、現状の市販高分子膜の2倍のプロダクト率(酸素透過率X 酸素濃度)を達成できる膜を開発してプロトタイプモジュールを作製する。 4.分散型エネルギーネットワーク技術の開発によるCO2排出量の削減とエネルギー自給率の向上 CO2排出量の削減とエネルギー自給率の向上のためには、再生可能エネルギーを大量に導入して化石エネルギーへの依存度を低下させるとともに、化石起源を含めたエネルギーの利用効率を向上させることが必須である。 再生可能エネルギーの多くが分散的なエネルギー源であること、また電力自由化により新たに導入される技術の多くも分散型であることから、今後は分散型システムの重要性が増すと予想される。このため、再生可能エネルギーの時間的・空間的変動と需要の調整を図るために、分散型エネルギーネットワークの効率的且つ安定な運用技術に関する研究開発を実施する。また、分散型エネルギーネットワークシステムの自立性とシステム効率を高めるために、再生可能エネルギーの大量導入を実現する技術及びエネルギー利用効率の大幅な向上をもたらす個別技術を開発する。 4-(1) 分散型エネルギーの効率的な運用技術の開発 分散型エネルギーネットワークシステムでは、自立性とシステム効率を高めるために、供給と需要の時間的・空間的な不整合を調整する機能が不可欠である。このため、需要データベースに基づき、異種エネルギー源を統合して最適な予測・制御を行う安定運用技術を開発する。また、エネルギー源間の相互融通と需要及び供給の急激な変動を吸収するためのエネルギー輸送、貯蔵技術、事故時対策技術及び高いエネルギー密度を有する可搬型エネルギー源に関する研究開発を実施する。またセキュリティと容量の観点から、完全な自立システムの構築は困難なため、他システムおよび基幹電力系統との協調運用技術を開発する。 4-(1)-<1> 分散型エネルギー技術とエネルギーマネージメント技術の開発 ・エネルギーネットワークにおいて不可欠な負荷平準化技術として、エネルギー貯蔵密度20Wh/L以上のキャパシタ及び事故時の過剰電流からシステムを守る低損失で高速応答の超電導限流器を開発するとともに、排熱利用技術として実用レベルの変換効率10%以上を有する熱電変換素子等を開発する。さらに、将来性の高い新エネルギー技術の評価を行う。 ・効率的なネットワーク運用技術として、多数の分散エネルギー源からのエネルギー供給技術や貯蔵技術、さらに需要側での負荷調整などネットワークの総合的制御技術、また基幹電力系統との協調運用のための技術を開発する。 4-(1)-<2> ユビキタスエネルギー技術の開発 ・二次電池や燃料電池の飛躍的な性能向上をもたらす電極・電解質の材料関連技術を開発し、携帯情報機器等のユビキタスデバイスのエネルギー源として求められるエネルギー密度 600Wh/L以上の電源デバイスを実現する。 4-(2) 小型高性能燃料電池の開発 分散型エネルギーネットワークシステムの自立性を高める上で、高効率発電と熱供給が可能な燃料電池は重要なエネルギー源である。固体高分子形燃料電池の技術開発は近年急激な進展を見せているが、実用化のためには長寿命化と低コスト化が必要である。そこで、性能劣化現象の原因解明と対策技術の開発、低コスト化のための材料開発を行う。また、固体酸化物形燃料電池に関しては、実用化を図るために信頼性の向上技術及び性能を公正に評価する技術を開発するとともに、普及促進のための規格・標準化を推進する。 4-(2)-<1> 小型固体高分子形燃料電池の開発 ・定置型固体高分子形燃料電池の普及促進のため、実用化に必要な4万時間の耐久性の実現を目標として、短時間で性能劣化を効果的に評価する技術を開発するとともに、劣化の物理的機構を解明する。これに基づき、劣化の抑制と低コスト化のための材料開発及び構造の最適化を行う。 4-(2)-<2> 固体高分子形燃料電池の本格普及のための基盤研究 ・先端科学技術を利用して固体高分子形燃料電池の基幹要素材料である電解質及び電極触媒の性能の革新的向上に繋がる基盤情報を得て、革新材料の創製に繋げる。また、燃料電池の基本機能を担う各種構成部材間の多様な界面における物質移動現象の機構を究明しその物理限界を突破する技術の開発に繋げる。 4-(2)-<3> 固体酸化物形燃料電池の開発 ・固体酸化物形燃料電池(SOFC)の早期商用化を目指して、液体燃料やジメチルエーテル(DME)などの多様な燃料の利用を可能にする技術及び10万時間程度の長期寿命予測技術を開発する。また、普及を促進するために、実用サイズのセル及び1〜100kW級システムを対象とした、不確かさ1%程度の効率測定を含む性能評価技術を確立するとともに、規格・標準化に必要な技術を開発する。さらに、SOFCから排出されるCO2の回収及び固定に関する基盤技術を開発する。 4-(3) 太陽光発電の大量導入を促進するための技術開発 分散型エネルギーネットワークシステムの自立性を高める上で、資源制約のない再生可能エネルギーである太陽光発電は極めて重要である。太陽光発電の大量導入を実現するためには低コスト化が最大の課題であり、発電効率/(製造コスト+実装コスト)を大幅に向上させる必要がある。このため、シリコン系太陽電池については発電効率の向上を図るとともに、製造コストの低減につながる技術を開発する。また、高効率化もしくは低コスト化の点で有望な非シリコン系太陽電池の技術開発を行う。さらに、大量導入を促進するために、生産規模拡大を支える性能評価技術を確立する。 4-(3)-<1> 太陽光発電の高効率化と大量導入支援技術の開発 ・異なるバンドギャップを有する薄膜を組み合わせる積層デバイス技術を開発し、効率15%を達成する。またシリコンの使用量を低減するために、厚さ50µmの基板を用いる極薄太陽電池の製造技術を開発し、効率20%を実現する。 ・出力の高電圧化によりシステム効率を高める化合物系太陽電池技術を開発して理論限界に近い効率19%を達成する。また印刷プロセス等の簡易な製造方法の導入により低価格化が期待できる有機材料等の新材料太陽電池を開発する。 ・大量導入の基盤となる工業標準化のため、新型太陽電池の研究開発の進展に応じて、太陽光スペクトル、温度及び時間特性等を考慮した高度な性能・信頼性評価技術を開発し、基準セル・モジュールを製造メーカ等に供給する。 4-(3)-<2> 革新的太陽エネルギー利用技術の開発 ・低コストな太陽電池として期待される色素増感太陽電池について、増感色素、半導体電極及び電解液などの改良による高性能化を図り、2010年に変換効率12%を実現し、2020年の目標である変換効率15%を目指す。 4-(4) 水素エネルギー利用基盤技術と化石燃料のクリーン化技術の開発 分散型エネルギーネットワークシステムの自立性を高めるためには、再生可能エネルギー供給と需要の時間的・空間的な不整合を補完するエネルギー技術が不可欠であり、燃料電池等の分散電源や化石エネルギーの高効率利用技術をシステムに組み込む必要がある。特に、燃料電池等による水素エネルギー利用を促進するために、高効率な水素製造技術及び水素貯蔵技術を開発する。また、当面の一次エネルギー供給の主役として期待される化石起源の燃料を有効に利用するとともに、使用時のCO2発生量を低減させるため、燃料の低炭素化技術、各種転換プロセスの高効率化技術及び硫黄分や灰分を極小化したクリーン燃料の製造・利用技術を開発する。 4-(4)-<1> 水素製造及び貯蔵技術の開発 ・燃料電池自動車用タンクに必要とされる貯蔵密度5.5重量%を目標とした水素貯蔵材料を開発する。 ・CO2排出が無い高効率な水素製造法として、固体酸化物を用いた高温水蒸気(700〜850℃)の電解技術を開発する。 ・水を直接分解して水素を製造する光触媒・光電極プロセスの効率向上に向けた光電気化学反応に関する基盤技術を開発する。 ・水素貯蔵材料及び高圧水素等の爆発に対する安全データの整備を行うとともに、安全確保技術の開発を行い、安全関連法規類の制定・改正に資する。 4-(4)-<2> メタンハイドレート資源技術の開発 ・メタンハイドレート資源の有効利用のため、日本近海のメタンハイドレート分布の詳細調査と資源量の評価を行う。 ・採収プロセスを室内で再現する実験技術を開発するとともに、出砂率評価法、水生産率評価法及び圧密・浸透率同時解析法等の生産挙動を評価する新たな基盤技術を開発する。 ・メタンハイドレートの分解・採取手法について、温度・圧力条件が生産速度や回収率等に与える効果を評価するとともに、生産予測のためのシミュレーションソフトウェアを開発する。 ・液化天然ガス輸送に比較し10%近い省エネルギー化が見込める、ガスハイドレートの高密度ガス包蔵性及びガス選択性を利用した新たな輸送方法の基盤技術を開発するため、ガスハイドレート結晶におけるガス貯蔵密度の増大及びガス分離効率の増大等のメカニズムを解明し、これを制御する技術を開発する。また、ガスハイドレートの生成・分解機構を解明し、低圧化での生成技術を開発する。 4-(4)-<3> クリーン燃料製造技術の開発 ・従来の1200〜1500℃より低温の500〜700℃で炭化水素から水素を製造する技術を開発し、CO2回収エネルギーを含めた転換効率を従来の65%から75%以上へ向上させる。またガソリンから水素製造を行うための長寿命、低温改質触媒を開発する。 ・石炭火力発電システムの課題である灰処理設備を不要化できる無灰炭を、従来不可能であった低品位炭から製造する技術を開発する。特に多くの炭種に対応できる溶剤抽出技術について、抽出率を向上させる技術の開発を行い、経済性効果とCO2排出削減効果が顕在化する60%以上の抽出率を達成する。 ・未利用重質油から軽質油を製造する効率を、従来の80%から90%以上に向上させる製造プロセスを開発する。 ・石油系輸送用燃料の硫黄濃度を、今後施行される規制値10ppm以下に低減する触媒技術の実用化開発を行うと共に、さらに進んだ1ppm以下に低減するゼロサルファー化や低アロマ化のための触媒技術を開発する。 4-(4)-<4> クリーン燃料利用技術の開発 ・石油代替燃料であるジメチルエーテル(DME)を利用して公道走行が可能な自動車を10台規模で製作し、自治体を中心としたフリート走行試験により普及に向けた実証を進める。また、天然ガス液状化油(GTL)を燃料とするエンジンについて、排気ガスデータ等の特性を取得し、更なる低公害化のための燃料組成の指針を定め、市場への導入普及を進める。さらに、バイオディーゼル燃料(BDF)の軽油に関する品質確保法の改正に資するデータの取得・提供を行う。 ・新長期規制後に導入が見込まれる新たなディーゼル車排ガス規制に対応したエンジン燃焼技術を開発するとともに、窒素酸化物及び粒子状物質を除去するための触媒システムを開発する。 5.バイオマスエネルギーの開発による地球温暖化防止への貢献 CO2排出の大半が化石エネルギー起源であることから、地球温暖化を防止する上では再生可能エネルギーの大量導入により、化石エネルギーへの依存度を低下させることが必須である。こうしたなかで、バイオマスのエネルギー利用は京都議定書上CO2排出量がゼロと評価されていることから、その積極的導入が求められている。このため、国内の木質系バイオマスを高効率でエネルギー転換する技術を開発するとともに、バイオマスの市場導入を促進するために必要となる多種多様なバイオマス種に最適な利用システム構築のための評価技術を開発する。 5-(1) 木質系バイオマスからの液体燃料製造技術の開発 CO2固定能の高い木質系バイオマスのエネルギー利用においては、先行している直接燃焼による発電や熱利用では規模が小さいため熱効率が低く、バイオマスが有する化学エネルギーを有効に利用できない。そこで木質系バイオマスを付加価値の高い化学エネルギーである液体燃料等に転換するため、高効率かつ低環境負荷を実現するガス化技術、発酵技術及び液体燃料製造技術を開発する。 5-(1)-<1> 木質系バイオマスからの液体燃料製造技術の開発 ・製材あるいは間伐材等の木質系バイオマスで95%以上、農業廃棄物や建築廃材等の廃棄物系バイオマスで90%以上のガス化率で、合成ガス(一酸化炭素+水素等)を製造するプロセスを開発する。また、生成ガスの精製やガス比調整により得られるサルファーフリーの合成ガスから軽油等の運輸用燃料を製造するための触媒技術を開発する。 ・含水率の高い生ごみ等の廃棄物系バイオマスから水素とメタンを得る発酵技術において、微生物の担体保持方法や配合調整法等の開発を行い、エネルギー回収率が実用化レベルである55%以上の発酵プロセスを開発する。 5-(2) バイオマス利用最適化のための環境・エネルギー評価技術の開発 多種多様なバイオマス資源の利用を推進し、市場導入を促進するために、バイオマスの賦存状況や材料特性に関するデータベースを構築するとともに、バイオマス利用統合プロセスシミュレーション技術を開発する。 5-(2)-<1> バイオマス利用最適化のための環境・エネルギー評価技術の開発 ・バイオマス利用技術の経済性と環境負荷を評価するために、システムシミュレーションに基づく総合的なプロセス評価技術及び最適化支援を行う技術を開発する。また、バイオマスの利用促進を図るため、バイオマス利用形態とその環境適合性及び経済性に関するデータベースを構築する。 6.省エネルギー技術開発によるCO2排出の抑制 CO2排出の大半がエネルギー起源であることから、CO2排出量の削減のために各需要部門における省エネルギー技術の開発が強く求められている。このため、民生部門では、種々のパワーエレクトロニクス機器の電力損失を大幅に低減できる省電力型パワーデバイス技術、分散型エネルギーネットワークの高効率運用によりエネルギー使用を最適化する技術、住環境を快適に保ちつつ省エネルギーを図る建築部材の開発及び電子機器の省電力技術を開発する。産業部門では、省エネルギー化学プロセス及び省エネルギー型環境浄化技術を開発する。運輸部門では、輸送機器の軽量化による省エネルギー技術を開発する。 6-(1) 省電力型パワーデバイスの開発 エネルギー消費が電力の形で使用される割合が益々増加していることから、多くの場所で電力変換器に使用されているパワーエレクトロニクス機器の低損失化が不可欠である。現状のパワー素子では、シリコンの半導体特性から損失の低減には限界がある。このため、物理特性から大幅な低損失化が見込める、炭化ケイ素や窒化ガリウムなどの材料を用いた省電力型パワーデバイスの基盤技術を開発する。 6-(1)-<1> 省電力型パワーデバイスの開発 ・炭化ケイ素や窒化ガリウムなどの材料を用いたパワーデバイスに関して、これまでに開発した世界最高水準の素子技術を発展させ、現状のシリコンを用いた素子に比べて損失を1/3に低減した電力変換器のプロトタイプを開発する。 6-(2) 省エネルギー化学プロセス技術及び環境浄化技術の開発 産業部門のエネルギー消費の約30%を占める化学産業の省エネルギー化はCO2排出削減に大きな効果が期待される。このため、各種化学プロセスの省エネルギー化を実現するとともに、環境浄化やリサイクルなどの静脈産業における省エネルギー化を実現する。化学プロセスの省エネルギー化については、高効率な熱交換技術、蒸留技術、熱利用技術及び漂白技術を開発する。また、環境浄化及びリサイクルについては、投入エネルギーの低減を図るため、高効率大気浄化技術及び省エネルギー型の水処理技術を開発するとともに、金属の回収及び高純度化再生の省エネルギー化技術を開発する。 6-(2)-<1> 産業部門消費エネルギー低減のための化学技術の開発 ・産業用空調機器の消費エネルギー低減のため、水蒸気脱着温度を従来の100℃以上から50℃程度に引き下げることを可能とするデシカント空調機用ナノポア材料を量産する技術を開発する。 ・省エネルギー型蒸留プロセスのために、従来比30%以上の消費エネルギー削減が可能な内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)を実用化する技術を開発する。 ・物質生産とエネルギー変換を同時に行うコプロダクション技術を導入した高効率な化学製造プロセスを解析・評価するソフトウェアを開発する。 ・漂白プロセスの消費エネルギーを20%以上低減できる綿布の光漂白技術を開発するとともに、他の材質の布及びパルプ等に適用範囲を拡大する技術を開発する。 6-(2)-<2> 気体分離膜を利用した省エネルギー型気体製造プロセス技術の開発 (IV.3-(3)-<1>を再掲) ・99.9%以上の高純度水素の高効率な製造プロセスの開発を目的として、常温から600℃までの広い温度領域で安定性を持つパラジウム系薄膜を開発し、これを用いて水素分離システムの実用型モジュールを開発する。また、安価な無機材料や非貴金属材料を用いた水素分離用非パラジウム膜の開発及びプロトタイプモジュールを作製する。 ・空気からの高効率型の酸素製造プロセス用として、現状の市販高分子膜の2倍のプロダクト率(酸素透過率X 酸素濃度)を達成できる膜を開発してプロトタイプモジュールを作製する。 6-(2)-<3> 環境汚染物質処理技術の開発 (IV.1-(4)-<1>を一部再掲) ・揮発性有機化合物(VOC)の小規模発生源を対象とし、有害な2次副生物を発生することなく従来比2倍以上の電力効率で数100ppm濃度のVOCの分解が可能な触媒法や低温プラズマ法を開発するとともに、高沸点や水溶性のVOCを吸着回収することが可能な新規吸着法等の処理プロセスを開発する。 ・水中の難分解性化学物質等の処理において、オゾン分解併用型生物処理法など、従来法に比べて40%の省エネルギーを達成する省エネ型水処理技術を開発する。また、再生水の有効利用のため、分離膜を組み入れた小規模浄化プロセスを開発する。 6-(2)-<4> 都市域における分散型リサイクル技術の開発 (IV.1-(4)-<2>を再掲) ・都市において多量に発生する廃小型電子機器等の分散型リサイクル技術として、再生金属純度を1桁向上しつつ50%以上省エネルギー化する金属再生技術を開発するとともに、20%以上の省エネルギー化と50%以上の再利用率を達成するプラスチック再生技術を開発する。同時に、分散型リサイクル技術の社会的受容性を評価する技術を開発する。 6-(3) 分散型エネルギーネットワークにおける省エネルギーシステムの開発 (IV.4-(1)を一部再掲) 分散型エネルギーネットワークシステムでは、自立性とシステム効率を高めるために、供給と需要の時間的・空間的な不整合を調整する機能が不可欠である。このため、需要データベースに基づき、異種エネルギー源を統合して最適な予測・制御を行う安定運用技術を開発する。 6-(3)-<1> 分散型エネルギーネットワークにおける省エネルギーシステムの開発 (IV.4-(1)-<1>を一部再掲) ・排熱利用技術として実用レベルの変換効率10%以上を有する熱電変換素子等を開発する。 ・効率的なネットワーク運用技術として、多数の分散エネルギー源からのエネルギー供給技術や貯蔵技術、さらに需要側での負荷調整などネットワークの総合的制御技術を開発する。 6-(4) 輸送機器及び住居から発生するCO2の削減のための機能部材の開発 (III.3を再掲 ) 製造業以外で大きな排出源である輸送機器と住居からのCO2排出の削減に材料技術から取り組むため、軽量合金部材の耐熱性向上と大型化する技術を開発しエンジンと車体の軽量化を実現し、また、高断熱等の機能化建築部材に関する研究開発を行うことにより、建築物の居住性を損なわずにエネルギーの消費低減に貢献する。 6-(4)-<1> 耐熱性軽量合金の開発 (III.3-(1)-<1>を再掲) ・軽量金属材料のエンジン部品を実現するため、鋳鍛造部材の製造技術に必要な耐熱合金設計、連続鋳造技術、セミソリッドプロセスによる高品質部材化技術、接合技術及び耐食性向上のためのコーティング技術を開発する。 6-(4)-<2> 高加工性軽量合金素形材の開発 (III.3-(2)-<1>を再掲) ・車体用の軽量金属材料を用いた大型構造部材を製造するために必要な連続鋳造技術、冷間塑性加工プロセスによる部材化技術、集合組織制御による面内異方性を低減する圧延薄板製造技術、接合技術及び耐食性向上のためのコーティング技術を開発する。 6-(4)-<3> 省エネルギー型建築部材の開発 (III.3-(3)-<1>を再掲) ・建築物の空調エネルギーを10%削減するための調光ガラス、木質サッシ、調湿壁、透明断熱材、セラミックス壁及び照明材料等の各種部材の開発及び低コスト化を行う。また、熱収支シミュレーション等を駆使してその省エネルギー効果を検証する。 6-(5) 電子機器を低消費電力化するデバイス技術の開発 (II.2-(3)を一部再掲) モバイル情報機器及びロボットに搭載されるCPUや入出力デバイスの機能向上とバッテリーによる長時間駆動を目指し、新デバイス構造を用いた集積回路の性能向上と低消費電力性を両立させる技術及び強磁性体や強誘電体等の半導体以外の材料を用いた新デバイス技術の研究開発を行う。 6-(5)-<1> 低消費電力システムデバイス技術の開発 (II. 2-(3)-<2>を再掲) ・ユビキタス情報ネットワークの中核となる、低消費電力性と高速性を両立した集積回路の実現を目指して、回路機能に応じたデバイス特性の動的制御が可能となるダブルゲート構造等を利用した新規半導体デバイス及び強磁性体や強誘電体等の不揮発性を固有の物性として持つ材料を取り込んだ新規不揮発性デバイスを開発する。併せて、これら低消費電力デバイスをシステム応用するのに不可欠な集積化技術に取り組み、材料技術、集積プロセス技術、計測解析技術及び設計技術並びにアーキテクチャ技術等を総合的に開発する。 V.産業基盤を構築する横断技術としての計測評価技術の研究開発 計測評価技術は、研究開発、産業活動といった技術を用いた諸活動を行う上での社会の基盤であり、優れた計測・評価技術なくして技術に関連する活動の円滑な実施は行い得ない。こうした認識に則り、<1>先端的な計測・分析機器や計測評価方法の開発と社会での導入実施に不可欠となる標準化や標準試料の提供、<2>産業技術の基盤となるデータベースや社会の安全・安心に関するデータベースの構築を行う。これにより、産業振興を牽引する新たな知見の獲得や産業技術の信頼性向上につながる共通の基盤技術としての計測評価技術を提供する。 1.計測評価技術の開発と知的基盤構築の推進 様々な顕微鏡の開発によりナノテクノロジー等の新たな技術分野が生まれたように、先端的な計測・分析機器は広汎な技術、産業分野に展開できる基盤的特性を有している。こうした基盤の構築を行うとの観点から、産業分野を先導する先端的な計測・分析機器の開発と産業技術の信頼性を向上させる評価解析技術の開発を行う。また、新技術や新製品が国内外の市場を確保するためには、機能の優位性や製品の安全性、信頼性が技術的に確保されていることが必要であることから、製品の機能や特性等を評価する計測技術を開発し、試験評価方法の形で提供するとともにその標準化に貢献する。 1-(1) 先端的な計測・分析機器の開発 ナノテクノロジー等における先端的な計測・分析機器の開発においては、ナノメートル領域の物質や欠陥等を高感度かつ高精度に検出する技術や物質の挙動を可視化する技術の開発が必要とされている。そのために、<1>反応性の高い状態にある原子・分子やイオンを用いた新たなツールを開発してナノメートル領域の計測や分析を可能にする技術、<2>新たな光・量子源の開発や高輝度化・マイクロビーム化により局所領域の物質の挙動を可視化する技術等の開発を行う。さらに、<1>、<2>の技術に関して標準化に貢献する。また、装置等の動作状況の把握や稼働条件の最適化を図るために、実環境下で計測可能な機器の開発が必要とされており、実環境下で動作する圧力や応力等のセンサの開発とそれを利用した計測技術の開発を行う。 1-(1)-<1> 反応性の高い状態にある原子・分子の計測・制御技術の開発 ・90%以上の超高濃度の酸化活性なオゾンを精密に制御して、10nm以下の薄いSiO2膜を供給用1インチ半導体基板に±0.1nmで均一に作製する技術及び200℃以下の低温における酸化膜作製技術を開発するとともに、長さの国家標準にトレーサブルな厚さ計測用の物差しを半導体産業等に提供する。 ・材料の表面をナノメートルレベルで均一に削りとるための新型イオン源を開発し、半導体デバイスの深さ10nm以内に存在する不純物を1011個/cm2レベルで分析できる技術を開発する。また、その計測手法の標準化を行う。 ・ナノ物質に結合するマーカーとして極安定ラジカルを合成し、そのマーカーを磁気計測方法によって検出することによりナノ物質の挙動を精密に計測し、生体影響評価に資する。 ・数10Daの原子から1MDaを越えるタンパク質のような巨大分子までの広い質量範囲において、タンパク質を構成するアミノ酸の違いを識別できるレベルの質量分解能で分子量分布計測が行える飛行時間型質量分析装置を開発する。 ・半導体検出器のエネルギー分解能と検出効率を1桁以上改善した超伝導検出器を開発し、生体用軽元素のエネルギー分散分光分析を可能にする特性X線検出システムを開発する。 1-(1)-<2> 光・量子ビームを利用した動的現象の可視化技術の開発 ・産業現場に導入可能な大きさで3-30keVのX線エネルギーと109photon/s以上のX線収量を有する、生体高分子の立体構造解析や可視化への適用が可能な単色硬X線発生システムを開発する。 ・ビーム径を100µm以下に絞り込める陽電子マイクロビーム源を開発し、材料中のナノメートルレベル以下の空孔・欠陥の3次元分布や動的変化を計測するシステムを開発する。 ・既存の偏光変調素子が使用できない40nm-180nmの真空紫外領域において、生体分子の立体構造の決定が可能なS/N比10-5の測定精度を持つ高感度円偏光二色性測定装置を開発する。 1-(1)-<3> 実環境下での圧力、振動の計測技術の開発 ・発電用ガスタービンの状態診断等への応用を目指して、ピーク時800℃、常用500℃以上の高温、25MPa以上の高圧下で0Hz〜数MHzの広帯域圧力変動を実環境下で計測する高耐熱性の圧力、振動薄膜センサデバイスを開発する。 ・在宅医療用の生体情報センサやヒューマノイドロボットの触覚センサ等への応用を目指して、150℃以上の温度に耐え5mmピッチ以下の応力分布分解能を持つ、柔らかい高分子やゴム質表面に形成可能な箔状圧力センサシステムを開発する。 ・材料の高精度劣化モニタリングなどへの応用を目指して、応力分解能が既存の歪ゲージと同等以上の数nN/粒子かつ空間分解能の目安となる数百nm以下の応力発光体ナノ粒子を合成する技術、粒子を配列、分散及び固定化する技術並びに応力発光体を用いた遠隔応力計測システムを開発する。 1-(1)-<4> 横断的な計測評価手法の構築に向けた先端的計測評価技術の開発 ・次世代の衛星として期待されている準天頂衛星システムによる高精度な位置情報システムのコスト低減、長寿命化及び信頼性向上を目指し、地上局の原子時計と準天頂衛星に搭載された水晶発振器を無線により同期させる技術(擬似時計技術)を開発し、同期精度10ns 以内、100,000秒以上における長期安定性10-13 以内の擬似時計システムの実現を目指す。 1-(1)-<5> 患者の負担を軽減する高精度診断技術の開発(I.2-(1)-<1>を再掲) ・診断及び治療に伴う患者の肉体的負担を軽減できる低侵襲検査診断システムを構築するため、心拍動等の動画像を連続計測可能な超高速MRI技術及び微小電極を用いた低侵襲計測技術等の要素技術を開発する。 ・個々人のゲノム情報に基づいた高精度診断を実現するため、1分子DNA操作技術や1分子DNA配列識別技術等の個々人のゲノム解析に必要な要素技術を開発する。 ・疾患に関係する生体分子等の細胞内における存在を検知して診断に役立てるため、単一細胞内のタンパク質を一分子レベルでリアルタイムイメージングする技術を開発する。 ・同定された生活習慣病のタンパク質マーカーを簡便に解析して疾患の早期診断に役立てるため、極微量の血液からマーカーを数分以内で解析できるデバイスを開発する。また、遺伝情報の個人差を解析して罹患の可能性や薬効を診断するため、注目する遺伝子について個々人の配列の違いを数分以内に解析できるデバイスを開発する。 1-(1)-<6> 超伝導現象を利用した電圧標準技術の開発(II.4-(2)-<1>を再掲) ・独自に開発したNb系ジョセフソン素子大規模集積技術を用いて、1〜10 V出力の直流電圧標準システムを開発し、ベンチャー企業等に技術移転することにより世界的規模での普及を行うとともに、高精度な交流電圧標準等に用いる次世代の計測・標準デバイスを開発する。 1-(1)-<7> 高度ナノ操作・計測技術の開発(III.4-(1)-<1>を一部再掲) ・加工と計測との連携を強化するための、プローブ顕微鏡等を応用した複合的計測技術を開発する。また、計測データの解析を支援するナノ構造体のシミュレーション・モデリング法、高精度計測下での生体分子のその場観察と操作技術等の新手法を開発する。 1-(1)-<8> 環境診断技術の開発(IV.1-(3)-<1>を一部再掲) ・高感度な水晶振動子センサを有害物質検出技術へ適用させるため、センサ間で相互干渉しない基板及び回路を開発し、応答速度を既存の1/2以下にした複数同時測定により、数十試料の分析を数時間で完了できる全自動センシングシステムを開発する。 1-(2) 計測評価のための基盤技術の開発 構造物の損傷の診断・予測を目指して、構造物内部の損傷や劣化を非破壊で構造物全体に渡って遠隔監視できる技術を研究開発する。また、材料・部材に影響を及ぼす局所領域の物性、材料内部の原子・分子の移動拡散現象及び微量の不純物等の計測評価技術の研究開発を行うともに、標準測定法、解析手法、技術資料(TR、TS等)及び物性データ集等として整備し、評価手法の標準化への貢献や標準物質の開発を合わせて行う。さらに、生体分子やナノ物質等の信頼性の高い計測・分析技術及びそれらとITを組み合わせた計測評価システム技術などの開発を行うことにより、産業と社会の信頼性確立に向けた計測評価技術基盤の構築に資する。 1-(2)-<1> 構造物の損傷診断技術の開発と標準化の推進 ・プラントでのパイプ等の損傷の診断を可能にするために、FBG (Fiber Bragg Grating) 光ファイバセンサを用いて、100MHzまでの高周波歪とき裂を同時に1mm以下の分解能で50m2に及ぶ広域を監視する計測技術を開発するとともにその標準化に貢献する。 1-(2)-<2> 原子・分子の移動拡散現象の計測評価技術の開発と標準化の推進 ・燃料電池に適用できる固体電解質材料のプロトン移動機構を解明するために、固体NMR法等を用いて10-9m2/s までの範囲のプロトン拡散係数を測定する技術を開発するとともに、拡散係数等の物性と構造との相関を明らかにする。 ・燃料電池自動車の70MPa級高圧水素貯蔵を可能にするために、ステンレス鋼等の金属材料の水素脆化評価方法の開発を行うともにその技術基準の策定を行う。 1-(2)-<3> 材料プロセスの信頼性に関わる評価技術の開発と標準化の推進 ・排ガス浄化用マイクロリアクタの10nmレベルの微小空孔を対象に、磁気共鳴法を用いた空孔の形状や寸法の不均質性評価方法や標準材料の開発を行い、その標準化に貢献する。 ・局所領域の力学物性とマクロな部材の力学物性との関係の解明を目指して、通常の硬度計では評価が困難なコーティング膜等の機械的特性を、100µm3程度の微小領域における変形特性を用いて定量的に評価する手法を開発し、その標準化に貢献する。 ・ファインセラミックス焼結体製品の機能や性能に大きく影響する原料微粉体中に含まれる微量成分に対して、信頼性の高い定量方法、分析値の不確かさ評価方法及び均質性評価手法等の開発を行うとともに、分析方法の標準化と2種類の窒化ケイ素の国家標準物質の作製を行う。 1-(2)-<4>生体分子の計測技術に関する国際標準化への貢献(I.5-(3)-<1>を再掲) ・バイオチップや二次元電気泳動の標準として利用するための標準タンパク質を作製する。また、臨床検査などで検査対象となっているタンパク質について高純度の標準品を作製する。 ・バイオテクノロジー関連のSIトレーサブルな測定技術を整理して標準化のための課題を明らかにする。また、新規DNA計測手法について国際標準制定に貢献する。 1-(2)-<5> バイオ・情報・ナノテクノロジーを融合した先端計測・解析システムの開発(I.5-(2)-<1>を一部再掲) ・レーザによる生体高分子イオン化ならびに光解離を利用した高分解能質量分析と微量試料採取を融合した生体分子の網羅的計測・解析システムを開発し、細胞モデルを構築する。 1-(2)-<6> ナノカーボン構造体の構造制御技術と機能制御技術の開発(III.2-(2)-<1>を一部再掲) ・ナノカーボン構造体及びそれに含有される金属元素等を単原子レベルで高精度に分析できる高性能透過型電子顕微鏡及びナノカーボン構造体等の高精度な分光学的評価法を開発する。また、ナノカーボン技術の応用として、基板に依存しない大面積低温ナノ結晶ダイヤの成膜技術を開発するとともに、機械的、電気化学的及び光学的機能等を発現させる技術を開発する。 1-(2)-<7> 安全・信頼性基盤技術の開発(III.4-(1)-<4>を一部再掲) ・MEMS技術を利用して、通信機能を有する携帯型のセンシングデバイスを開発し、センサネットワークのプロトタイプとして実証する。 2.産業と社会の発展を支援するデータベースの構築と公開 研究開発に関係する様々な現場から膨大なデータが取得・蓄積されているが、多くのデータは異なる観点からの解析により新たな研究開発成果を生み出す可能性を常に持っており、一般性のあるデータは共通の財産としてデータベース化して公開することが重要である。そこで、先端産業技術の開発と安全な社会の実現のために、産業技術の基盤となる物質の物性等のデータベースや環境、エネルギー、安全性等に関するデータベースを構築し、Web等を利用して産業界と社会の利用に広く提供する。 2-(1) 産業技術の基盤となるデータベースの構築 産業技術の基盤となる物質・材料のスペクトル特性や熱物性等を測定、評価、蓄積し、データベース化するとともに、Web等を利用して公開し産業界と社会の利用に広く提供する。スペクトル特性に関しては、危険物や添加剤など社会ニーズの高い化合物群のデータ蓄積を重点的に行う。熱物性データベースに関しては、各種データベースと共同運用することから、それぞれのデータの信頼性を評価するガイドラインを整備する。 2-(1)-<1> 物質のスペクトル特性及び物性等のデータベースの構築 ・有機化合物のスペクトルデータベースに関して、新たに6,000件のスペクトルを測定して解析及び評価を行いWebに公開する。 ・同データベースにおいて、ユーザの利便性を高めるため、構造式検索機能やIR(赤外)スペクトルピークの検索機能の追加及びスペクトル表示機能の強化などを行う。 ・固体や流体の熱物性データベースに関して、新たに1,000種類以上の物質・材料について3,000件以上のデータを収録するとともに、データの不確かさと信頼性を評価するためのガイドラインを整備する。 ・製造業において求められる熱設計のためのシミュレーション技術の定量性と信頼性の向上に寄与するために、標準データを含む広範な熱物性データをWeb等を介して提供する。 2-(2) 社会の安全・安心に関するデータベースの構築 燃焼・爆発事故災害、火薬類の物性、環境中の微生物、エネルギー消費量、環境影響排出物質等に関して計測評価データを蓄積し、データベース化するとともに、Web等を利用して産業界と社会に広く提供する。 2-(2)-<1> 爆発の安全管理技術の開発(IV.1-(1)-<2>を一部再掲) ・火薬類や高圧ガス等の燃焼・爆発の影響の予測及び評価のために、構造物や地形等を考慮した周囲への影響を予測する手法を開発し、燃焼・爆発被害を最小化するための条件を明らかにする。また、海外事例を盛り込んだ燃焼・爆発事故災害データベース及び信頼性の高い煙火原料用火薬類等の物性データベースを整備・公開する。 2-(2)-<2> バイオマス利用最適化のための環境・エネルギー評価技術の開発(IV.5-(2)-<1>を再掲) ・バイオマス利用技術の経済性と環境負荷を評価するために、システムシミュレーションに基づく総合的なプロセス評価技術及び最適化支援を行う技術を開発する。また、バイオマスの利用促進を図るため、バイオマス利用形態とその環境適合性及び経済性に関するデータベースを構築する。 |