|
II.知的で安全・安心な生活を実現するための高度情報サービスを創出する研究開発
知的生活を安全かつ安心して送るための高度情報サービスを創出するには、意味内容に基づく情報処理により知的活動を向上させる情報サービスを提供する技術、情報機器を活用して生活の質を高める生活創造型サービスを提供する技術及び情報化社会における安全かつ安心な生活を支える信頼性の高い情報基盤技術が必要である。これらの技術により、ネットワーク上の大量のデジタル情報などの意味をコンピュータが取り扱えるようにし、利用者ニーズに適合した情報サービスを提供して人間の知的生産性を向上させるとともに、ロボット及び情報家電の統合的利用により、人間が社会生活を送る上で必要な情報サービスを提供して生活の質を向上させる。さらに、情報のセキュリティやソフトウェアの信頼性を向上させ、提供される情報サービスを安全かつ安心して利用できる情報基盤を構築する。また、新たな情報技術の創出に向けた先端的情報通信エレクトロニクス技術の開発を行い、革新的情報サービス産業の創出に貢献する。
1.知的活動の飛躍的向上を実現するための情報サービスの創出
情報化社会において人間の知的活動を飛躍的に高度化するためには、すでにネットワーク上などに存在する大量のデジタル情報を効率的に利用することに加えて、デジタル情報化されていない人間社会のデータをデジタル情報として蓄積し、新たな情報資源として活用することが必要である。このために、利用者毎に異なる多様な情報ニーズに対して、蓄積された情報及び情報ニーズの意味内容をコンピュータが理解し、的確な情報提供ができるよう知的活動支援技術を開発する。また、地球規模で蓄積されているソフトウェアを含む膨大なコンピュータ資源を容易に利用できるようグローバルな意味情報サービスを提供する技術を開発する。さらに、人間生活に関わる情報のデジタル化を行い、人間の行動や社会活動の支援など、多様なニーズに応える情報サービスを提供する技術を開発する。
1-(1) 意味内容に基づく情報処理を用いた知的活動支援技術の開発
人間に分かりやすく有用なサービスを即座に提供するためには、大量のデジタル情報の意味を理解して体系的に扱う技術と、それをユビキタスに提供する技術の開発が必要である。このために、身の回りに存在する物やシステム等の役割や機能等を体系的に構造化して記述することにより、意味を含めたデジタル情報として取り扱う技術を開発するとともに、人間の位置や行動パターンに適応した情報を提供するユビキタス情報サービス技術を開発する。
1-(1)-<1> 知的生産性を高めるユビキタス情報支援技術の開発
【中期計画(参考)】
- デジタル情報をその意味内容に基づいて構造化して利用するプラットフォームを構築する。その上で、ニーズに合致した総合的な情報として提供し、知識の検索、人間の位置や嗜好に応じたサービスなど、人間の思考や行動を支援する技術を開発する。
《平成17年度計画》
- ユビキタスサービス連携の枠組みを用いて、大規模な公共空間における異種サービス(コンテンツ配信、データマイニング等)の統合システムを実稼働させ、その有効性検証のための実世界のセンシングデータの蓄積と分析を行う。
- 意味構造の利用によって、オーサリング、情報検索、ワークフロー管理等の効率を向上させる技術及び空間や人間関係などの状況に応じた情報提供技術を開発する。
- 利用者行動の意味の定義を直接解釈・実行できる実世界ミドルウェアの設計を行い、そのプロトタイプ実装を通じてオフィス環境をより知的にできる機能の有用性を実証する。
- 新しい入力デバイスの利用により、誰もが効率的にユビキタス環境において情報検索及びコミュニケーションを行なえるシステムを実証する。
- 超低消費電力光・RFIDのハイブリッド情報通信端末の開発や単眼測距通信カメラなどで構成される基地局装置の開発を通して、利用者の位置と方向や属性に対応したセマンティックコンピューティング環境のデバイス開発、ユーザインタフェース技術及び高性能化技術の検証実験を行う。
- 工学的な問題解決のための、推論に関するさまざまな知識処理手法を系統的に整理し、相互に利用可能な機能を抽出すると同時に、理論に基づいて問題解決に必要な基本機能をソフトウェアモジュールとして作成する。
1-(2) グローバルな意味情報サービスを実現する技術の開発
意味内容に基づく情報処理プラットフォームをネットワーク上に分散したコンピュータで利用することにより、世界規模の大量のデータを意味構造に基づいて統合的に運用する技術等を開発する。また、意味情報サービスを提供する応用ソフトウェアの開発、運用を世界中の開発者が連携して安定的に行うための基盤技術を開発する。
1-(2)-<1> 世界中に意味情報サービスを安定して提供するグローバル情報技術の開発
【中期計画(参考)】
- 意味情報サービスをグローバルに展開し、普及するためのソフトウェアのオープン化技術を開発するとともに、その自律的発展を実現するための各国で共通利用可能な各種ツール及びソフトウェアの開発、検査、改良、運用を世界中の開発者と連携して安定的に行うためのソフトウェア開発運用支援技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 多言語化情報技術の研究では、Linux 上の主なグラフィカルユーザインタフェースツールキットから多言語化ライブラリ the m17n library を利用する機能を実現する。またLinux上の主なスクリプト言語から多言語化ライブラリを利用する機能を実現する。
- ソフトウェア開発運用支援技術の研究では、
1)ソフトウェアの開発を支援するために、ソフトウェアのバグレポートを活用するシステムの公開と改良を行う。
2)システム監視を支援するために、トラブル情報の集約を行うシステムを開発する。
3)システム運用を支援するために、システム運用情報を活用するシステムを開発する。
- 要素技術としてc0de blogの研究開発を行い、ソフトウェアの解説と査読のシステムを実証する。
- LinuxのディストリビューションとしてKNOPPIXを取り上げ、多言語対応、ネットワークブート等の機能拡張を行うと共に、プリンタ制御アーキテクチャ等の標準化作業(日中韓標準化WG等)を行う。
- 添付ファイル、プラグインなどの動的に実行するソフトウェアが望ましくない動作をする可能性があるかどうかを実行せずに検知するシステムを開発する。そのための仮想実行環境の強化及び望ましくない動作を指定するポリシー記述言語処理系の実装を行い、実環境での検知能力を検証する。
1-(2)-<2>広域分散・並列処理によるグリッド技術の開発
【中期計画(参考)】
- 地球規模で分散して存在する大量の情報や計算資源を有効に利用した高度情報サービスの基盤システムを構築するために、コンピューティング技術と通信ネットワーク技術を融合して、情報資源が分散していることを利用者が意識することなく利用するためのソフトウェアコンポーネント、また利用者間で協調して情報処理を行うためのソフトウェアコンポーネント等を開発する。さらに、科学や工学分野あるいは社会における具体的な利用技術をこれらの基盤システム上で開発し、開発した技術の国際標準化を目指す。
《平成17年度計画》
- 大規模科学技術アプリケーションの実装・実行を支援するソフトウェアを開発する。Ninf-Gの頑強化、機能追加、性能改善を行いながら適宜新バージョンのリリースを行い標準ミドルウェアとして世界的な利用を促進する。Global Grid Forum(GGF) GridRPC WGにおいては、GridRPC APIの標準化を進める。GridMPIの開発では、 MPI-IO、リモート書きこみ、動的プロセス生成等の機能をMPI-2.0標準仕様に準拠させて普及を目指す。
- グリッドにおける計算サービス提供を一元的に提供するGridASPの実現を目指す。実証実験の枠組みを構築し、アプリケーション提供者、ポータル運営者、計算資源提供者を募りGridASPのモデルを試行する。
- 3,000プロセサ規模のPCクラスタシステム「AISTスーパークラスタ」の構築技術を確立、安定運用技術を提供する。TeraGridとの連携により、広域のグリッド環境構築し、世界最大規模のアプリケーションを実行する。
1-(3) 人間に関わる情報のデジタル化とその活用技術の開発
人間社会のデータをデジタル情報として蓄積し、新たな情報資源として活用するためには、人間そのものをデジタル情報化する技術と、人間が生活する上で遭遇する様々な情報をデジタル情報化する技術が必要である。そのために、人間の身体機能や行動を計測してデジタル情報化を行い、ソフトウェアから利用可能な人間のコンピュータモデルを構築するとともに、それを活用した応用システムを開発する。また、人間を取り巻く大量の情報を観測、蓄積及び認識して情報資源化し、それに基づいて分析及び予測を行うことにより、過去から未来へ繋がる人間の行動や社会の活動を支援する情報技術を開発する。
1-(3)-<1> 人間中心システムのためのデジタルヒューマン技術の開発
【中期計画(参考)】
- 人間機能を計測してモデル化し、人間特性データベースとして蓄積するとともに、それをもとにコンピュータ上で人間機能を模擬するソフトウェアを開発する。このために、人間の形状、運動、生理、感覚及び感性特性を自然な活動を妨げずに計測する技術を開発し、それを用いて年齢等の異なる1,000例以上の被験者の人体形状をmm級の精度で計測し、個人差などを表現できる計算モデルを開発する。さらに、これらの技術を機器の人間適合設計、製品の事前評価、映像化及び電子商取引などに応用する。
《平成17年度計画》
- 人体寸法200体及び頭部形状モデル100体、全身形状モデル50体のデータベースを構成し、RIO-DBを通じて公開する。
- 人間の形状と特性データに基づく着装品設計技術と、自動車・住宅設計のための全身デジタルマネキン技術を開発する。
- 人間の全身形状、運動モデルをもとに、自動車乗降を具体例とした運動戦略類型化技術の開発、乗降動作生成技術の開発を進める。
- 手の詳細機能モデル「デジタルハンド」の開発を進める。平成17年度では、把持動作時の指先反力配分を計測し、操作つまみなどのシリンダー状の対象物把持姿勢と把持力配分を再現する計算モデルを開発する。
【中期計画(参考)】
- 壁や天井などに取り付けた非接触型センサによって人間と機器の動きを数cmの精度で計測するとともに、人間密着型のセンサによって、血圧や体温等の生理量を計測することで、生理量と心理・行動の関係をモデル化し、起こりうる行動を発生確率付きで予測できる技術を開発する。これにより、高齢者や乳幼児の行動を見守るなどの人間行動に対応したサービスを実現する技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 壁や天井などに取り付けた非接触型センサの信頼性や運用性を向上させる技術を開発し、具体的事例として高齢者見守りサービス技術を開発する。
- 家庭内事故防止のための乳幼児行動モデルの研究として、非接触型センサで実験室内での乳幼児行動データ50例を蓄積し、医師と協力し家庭で起きた乳幼児事故データ200例を蓄積する技術を開発する。これらのデータと確率ネットワーク技術により0-3歳の乳幼児が起こしうる行動を模擬し、CG表現する技術を開発する。
- 手術中の患者や医師の血圧や心拍などの生理量を人体密着型センサで計測し、生理量と心理反応の相互関係を確率ネットワーク技術でモデル化し、可視化することで手術トレーニング(局所麻酔下手術のトレーニング、医師と患者の心理的インタラクションを考慮した手術のトレーニング)のためのシステム開発を行う。
1-(3)-<2>大量データから予測を行う時空間情報処理技術の開発
【中期計画(参考)】
- 人間が生活する実環境に多数配置されたセンサ等によって、音や映像等のデータを長時間にわたって多チャンネルで収集し、大規模な時空間情報データベースを構築するとともに、そこからデータの内容を意味的に表現したテキスト情報や3次元的な空間情報を自動的に抽出する技術を開発する。これによって得られた時空間情報を、その意味内容に基づいて圧縮・再構成し表現する技術の開発を行うとともに、行動や作業を支援するシステムなどを開発する。
《平成17年度計画》
- 小規模の会議を、マイクアレイとカメラアレイを用いてディジタルアーカイブとして収録し、これを構造化して効率よく再生する技術を開発する。平成17年度は、小型入力デバイスの開発、状態推定アルゴリズムの確立、トピックの分類技術の開発を行う。
- 独自の符号化技術やAR-HMMなどの信号処理技術及び記号列からのマイニング技術により、不明瞭音声及び雑音環境などにおける音声認識の性能の検証を行う。
- 実環境の広い空間に対するステレオカメラを用いた時空間情報技術において、人などの形状や動作表現法のソフトウェア開発と実時間データ収集におけるハードウェア安定性の検証実験を行い、人などのトラッキングによる安全性向上支援技術、周囲情報理解技術、ロバストなユーザインタフェース技術を開発する。
- 3Dモデルを使用するコンテンツの作成支援及び実空間における非接触非拘束インターフェース実現のための3次元データ処理技術、自由形状・柔軟物を対象とする視覚情報処理技術、二値化などの基本的画像処理技術の開発を行う。
- 実世界に密着したインタラクション技術に関して、環境に配置したセンサ及び人体に密着したウェアラブル機器のセンサ情報からユーザの位置、向き等を推定するデバイス及びソフトウェアの開発、実証実験を行う。
2.ロボットと情報家電をコアとした生活創造型サービスの創出
個々の生活状況に応じた情報サービスを提供して、生活の質(Quality of Life、QoL)を飛躍的に向上させるために、人間活動を代行、支援及び拡張する生活創造型サービスを実現する。そのために、人間を中心としてロボットと情報家電を有機的かつ協調的に機能させ、統合的で創造的な生活空間の実現を目指し、人間と物理的・心理的に共存・協調するロボット技術、人間と情報家電の双方向インタラクションを支援するインターフェース技術及びこれらを構成するハードウェアを高機能化、低消費電力化するデバイス技術を開発する。
2-(1) 人間と物理的・心理的に共存・協調するロボット技術の開発
人間と共存・協調して、人間の活動を支援するロボットを実現するために、人間と空間を共有しつつ、人間の行動や状態に適応、協調して機能するロボット技術を開発する。そのために、生活空間をロボット化する技術、人型(ヒューマノイド)ロボットの運動機能を人間と同程度に向上させる技術及び人間と情報を共有するために必要な視覚認識技術を開発する。
2-(1)-<1> 屋内外で活動できる社会浸透型ロボット技術の開発
【中期計画(参考)】
- ロボットの行う複雑な作業を構成する要素機能を共通仕様に基づいてモジュール化し、異なるロボットシステムで利用可能にする。また、開発したモジュールを生活空間に分散配置して、それらが人も含めて有機的に協調して機能する技術を構築し、生活支援型ロボットシステムのプロトタイプを開発する。
《平成17年度計画》
- 人間の操縦データからの技能トランスファーを行い手法の有用性に関して実証実験を行う。書棚からの本の取り出しなどの物体の把握過程を制御する手法の開発を進める。ユビキタスロボティクスとしての環境インフラとして、人間、ロボット、物などに微小モジュール (軽量、コンパクト、安価)を簡易に貼り付けることにより、お互いの情報をやり取りすることを可能とすると同時に、精度1cm程度の絶対位置計測機能を有するセンサシステムの開発に着手する。
【中期計画(参考)】
- ロボットシステムを人間の生活空間に安全に導入するために、利用者や周辺の人間の行動を実時間でモニタリングする技術及び類似状況における過去の事故事例等からのリスクアセスメントを効率的に行う手法を開発し、それらをロボット要素モジュールとして利用可能にする。
《平成17年度計画》
- 光通信式人間運動計測システム構築のため、超高速ビジョン内部FPGAの再設計及びこれに対応するソフトウェアの設計を行う。リスク事象予測のための人間-環境系運動パターン生成器を開発する。ヒヤリハットテキストの前処理フィルタを開発しその評価を行う。Skill-Assist等のコントローラの機能安全化を図り、JISの耐故障性の指標のカテゴリーの3に基づき評価する。
【中期計画(参考)】
- ロボットの自律的な探索により環境や地形に関する情報収集や異状発見を行う技術及び複数のロボットを協調動作させることによって、より広範囲な状況の認識を行う技術を開発する。これらの技術を用いて、環境を改変して有効に利用する方法を開発し、自律作業ロボットによる100m3程度の砂利堆積の移動や再配置等の実証実験を行う。
《平成17年度計画》
- 屋外自律作業システムについて以下の研究を行う。
1)2種以上の計測装置を組み合わせて移動体の位置姿勢認識を安定に実現する。
2)移動ロボット間の情報交換ネットワークの方式を検討し、基礎的な交信実験を行う。
3)環境改変を目的として建機の改造を行い、計算機制御によって安定した移動と操作を実現する。
2-(1)-<2>作業支援を行うヒューマノイドロボット技術の開発
【中期計画(参考)】
- 人間の作業を代替し、人間と共存して働くために、人間の通常の生活空間内を自由に移動する機能と基本的な作業機能を開発する。具体的には、人間と同程度の速度での平面の歩行、滑り易い路面の歩行、移動経路の自律的な計画及びハードウェアの高度化によるIEC規格IP-52程度の防塵防滴処理並びに簡単な教示による指示通りの運搬等の機能を開発する。
《平成17年度計画》
- スリップオブザーバの検出精度の向上、狭隘部の認識に必要な視野の制御機能の実現、脚と腕を併用した作業技術の統合理論の確立、転倒制御技術の実験のために等身大ロボットを改造・拡張し転倒実験の実施、転倒状態認識機能及び動作計画機能の実装、足部にスプリング要素を持つハードウエアの開発とこれに対応した安定化制御系の開発、コンプライアンス制御などを用いた安定把持の理論解析及びシミュレーションの実施、実時間歩容生成技術の開発、環境知覚記憶法、行動教示記憶法、行動選択法について基礎検討を行う。
【中期計画(参考)】
- ヒューマノイドロボットの安全性と可用性を人間と共存できる程度に高めるために、コンピュータ上に構成した人間型構造モデルで人間の動きを合成する技術、人間の運動機能を規範としてロボット全身運動を生成する技術及びロボットが人間を認識し、人間と対話することで協調的に作業するロボット技術を開発する。
《平成17年度計画》
- ロボットに適用可能な人間の運動機能モデルを開発するために、人間の運動中の床に働く力を運動する場所に制約されることなく計測する技術として、人間密着型の6軸力センサと、床一面に設置できる圧力センサを開発する。
- 視覚により運動すべき環境から平坦な部分を認識し、マップとして構成する技術を開発すると共に、マップ中での自在な経路と全身運動を計画する技術を開発する。それをコンピュータ上で模擬確認すると共に、ヒューマノイドロボットで実際に運動させることにより実動性を検証する。
- ロボットの3次元視覚で得られた情報と人間の寸法・形状モデルとを照合させることで人間を認識する技術、スピーカ・マイクアレイによる対話技術などを開発する。
2-(1)-<3> 環境に応じて行動ができるための高機能自律観測技術の開発
【中期計画(参考)】
- 家庭内や屋外環境において人の作業を支援、代行するための共通機能として、人と同等以上の視覚的な認識、理解が可能な3次元視覚観測技術を開発する。この技術に基づき、3K(きつい、汚い、危険な)作業の代行や医療現場の過失事故を防止する多種物体の自動認識技術、プライバシーを守りながら高齢者や入院患者の異常事態を検知する技術及び番犬や介助犬を代行するパーソナルロボット技術並びに広域環境のリアルタイム立体測量と危険地帯の監視や災害時の状況把握を可能にする自律観測技術等を開発する。
《平成17年度計画》
- 1)誰でも簡単に使えるユニバーサルな3次元視覚センサとして、小型(約10cm)軽量(約100g)のステレオカメラシステムを開発する。
2)視線方向に依存しない面の不変特徴である3次元曲率線による任意曲面の認識法を開発する。
3)パーソナルロボットの4輪による平地走行実験(前後進、前輪・後輪・右輪・左輪操舵、横行、全方向斜行、任意旋回、その場旋回)を行う。
4)遠隔操縦無人ヘリコプターの空撮シミュレーションシステムを使い、注視観測による逐次的な3次元環境モデルの自動作成実験を行う。
2-(2) 情報家電と人間の双方向インタラクションを実現するインターフェース技術の開発
ユビキタスネットワークに接続された情報家電による多様な情報サービスの提供を実現するために、日常的な動作や言葉を用いて情報家電を容易に使いこなすための実感覚インターフェース技術、多くの機能を低消費電力で提供するシステムインテグレーション技術及び高機能でフレキシブルな入出力デバイス技術を開発する。
2-(2)-<1> 実感覚ユーザインターフェース技術の開発
【中期計画(参考)】
- 利用者の意図に応じて日常的な動作や言葉による対話的な操作を可能にするユーザインターフェース及び複雑な接続設定を必要とせずに異なる規格間の機器連携を可能にするプラグアンドプレイ機能を開発する。
《平成17年度計画》
- プラグアンドプレイミドルウェアと音声対話インタフェースを統合し、実機に搭載して実際に人間と動作や言葉による対話を試み、実作動環境下でスムーズなインターフェースが行われるか、その有用性を実証する。
- 音声を含むマルチメディアコンテンツの検索技術や音声対話技術を用いて、企業への技術移転等により情報家電としての実用可能性を実証する。
- 大容量で高性能な論理プログラマブルデバイスを搭載したボードを用いて、入力形式が柔軟でユーザの意図で表示の精度、サイズや位置などが変更可能で、更に、複数の表示装置を容易に組み合わせて一体的に用いることのできるスマートな表示装置の実用化のためのプロトタイプを開発する。
- 従来は不可能であったJava等オブジェクト指向言語でGCを起こさずにリアルタイムな通信を行う技術を組込み機器とデスクトップPC上で実装する。
- 高品質な分散アプリ開発時に必要な機能検証を効率よく行う分散テストツールを開発する。
- HORBのIIOP実装を改良し最新仕様に準拠させる。
- ロボットや宇宙応用に使用可能な分散プロトコルエンジンのハードウェア化の検討を開始する。
2-(2)-<2>システムインテグレーション技術の開発
【中期計画(参考)】
- 情報機器とユーザとのインターフェースデバイスあるいは情報機器とネットワークとのインターフェースデバイスの小型化、低消費電力化及び高機能化を両立させる技術を開発する。具体的には、自発光型平面ディスプレイに駆動回路等を内蔵させ、1,000cd/m2以上の高輝度を低消費電力で実現するディスプレイ技術を開発する。また、多機能な集積回路チップを積層し、チップ間を50Gbps以上の超広帯域信号で伝送してより高度な機能を実現するシステムオンパッケージを作製するための3次元実装技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 自発光ディスプレイ技術について、低温ポリシリコンTFTを電界放射型ディスプレイと融合する技術を構築し、ディスプレイメーカへ技術供与可能なレベルのデバイス作製技術を開発する。
- 微細多層配線インターポーザを用いた3次元高密度実装技術について、システムレベルでの実証研究を進め、毎秒10Gビット以上のチップ間高速信号伝送を実証する。
2-(2)-<3> フレキシブル光デバイス技術の開発
【中期計画(参考)】
- 次世代のユビキタス情報社会に資するために、印刷塗布プロセス等により高機能かつフレキシブルな光デバイスを実現する。具体的には、新規な有機・高分子材料等を用いて、移動度0.5 cm2/Vs以上で動作するp型及びn型トランジスタや外部量子効率10%以上で発光する高輝度発光素子を開発するとともに、有機・無機材料を用いた独自のプロセス技術による光回路素子を開発する。また、その高性能化や素子の一体化を促進することにより、モバイル情報端末への応用に向けたフレキシブルなディスプレイや光回路等を開発する。
《平成17年度計画》
- プリンタブル有機TFTにおいて、閾値電圧の変動要因を解析し、デバイスとしての信頼性向上要因に関する知見を得る。また、溶液プロセスで作製し、抵抗率1015Ωcm台を示す有機TFT用金属酸化物絶縁膜を開発する。
- 塗布法による製膜が可能なp及びn型有機半導体・導電性高分子の設計・合成及び薄膜デバイス化を行い移動度 0.1 cm2/Vs 以上を達成すると共に、有機CMOS(p及びn型TFT)及び有機ELと光センサを一体化した受・発光可能な光入出力素子の開発を行う。
- 石英ガラスなど難加工材料表面への高性能レーザ微細加工法の開発と応用、ナノスケール分解能でセンチサイズに及ぶ表面修飾微細加工法の開発を行うと共に、 フレキシブル基板への金属酸化物の低温製膜技術(製膜温度:100℃以下)を開発する。
- 色素蒸気輸送法により、光の波長オーダー(0.1〜1µm)の色素の微細構造を高分子中に作り込むことによってフレキシブルな光導波路、ディスプレイ用光学素子を試作する。また、ナノオーダーでの光物性やスピン・磁気物性・化学種のイメージングが可能な新しい近接場光顕微鏡、NMR顕微鏡を開発する。
2-(3) 電子機器を高機能化・低消費電力化するデバイス技術の開発
モバイル情報機器及びロボットに搭載されるCPUや入出力デバイスの機能向上とバッテリーによる長時間駆動を目指し、集積回路の性能向上に必須な半導体デバイスの集積度及び動作速度を向上させ、国際半導体技術ロードマップで2010年以降の開発目標とされる半導体技術を実現する。また、新デバイス構造を用いた集積回路の性能向上と低消費電力性を両立させる技術及び強磁性体や強誘電体等の半導体以外の材料を用いた新デバイス技術を開発する。
2-(3)-<1> 次世代半導体技術の開発
【中期計画(参考)】
- 半導体集積回路用トランジスタを極微細化、高性能化及び超高密度集積化するために必要な技術を開発する。具体的には、高移動度チャンネル材料及び高誘電率絶縁膜等の新材料技術を開発し、それに関連する新プロセス技術と計測解析技術及び要素デバイス技術並びに回路構成技術を基礎現象の解明に基づいて開発する。
《平成17年度計画》
- シリコン酸化膜換算膜厚1.2nmの高誘電率ゲート絶縁膜を用いたトランジスタにおいて、0.1 A/cm2以下のゲート漏れ電流と通常シリコン酸化膜を用いた場合の80%以上のキャリア移動度を達成する。高誘電率ゲート絶縁膜に適合し、トランジスタのしきい値電圧制御が可能なメタルゲート電極の材料開発を行う。特にフェルミレベルピニングの影響を低減する電極材料と高誘電率ゲート絶縁膜との界面制御技術を開発する。また、高誘電率ゲート絶縁膜を用いたMOSトランジスタの絶縁破壊寿命推定法などの信頼性保証技術を開発する。
- 比誘電率2以下のポーラスシリカ膜の構造強化技術を確立して、超低誘電率層間絶縁膜としての実用性を実証する。また、ポーラスシリカ膜の気相成長を実証する。ポーラス低誘電率材料に対するプラズマプロセスやウェットプロセスによるダメージの評価とメカニズム解明を進め、課題を解決する。ポーラス低誘電率絶縁膜の分析評価技術を高精度化し、ポア径分布計測のin-line測定装置を開発する。
- ひずみSOI CMOS構造と製造工程の最適化を進め、ゲート長50nm以下の微細トランジスタにおいて高性能・低リーク電流特性を実現する。このため、200ミリ径のひずみSOI基板の品質を改良し、欠陥密度を低減する。高Ge濃度のSiGeチャネルSGOI(SiGe-on-Insulater) MOSFETやGeチャネルGOI(Ge-on-Insulater)MOSFETに適したゲート絶縁膜及びソース・ドレイン構造を開発する。
- 走査型プローブ技術を用いて、10nmの空間分解能で不純物ドーピングプロファイルを計測する技術及び50nmの空間分解能でSiの応力分布を計測する装置を開発する。
- 原子間力顕微鏡を用いた測長技術開発では、パターン寸法計測精度0.5-0.3nmを達成するためのプローブ制御技術及び寸法算出技術を開発する。また、エッジラフネス0.8nm以下の基準パターンをシリコンウェハに形成できるナノインプリント技術を開発する。大口径ウェハの局所組成分析が可能な、短距離飛行管群方式の飛行時間型EUPS(極紫外光電子スペクトル)測定装置を開発する。
- 適応型クロック調整による低消費電力化技術を商用レベルのLSIに適用し、有効性を実証する。
- LSIの製造後調整技術を実用化するための支援設計ツール及びLSIが自律的にクロック適応調整を行う技術を開発する。
- 高速データ転送技術を用いた世界最高速動作(2.4GHz目標)の信号処理LSIを開発し、LSI間の高速データ転送技術を実証する。
- MOSトランジスタモデル(HiSIM ver.2)の高精度パラメータフィッティング技術を開発する。
2-(3)-<2>低消費電力システムデバイス技術の開発
【中期計画(参考)】
- ユビキタス情報ネットワークの中核となる、低消費電力性と高速性を両立した集積回路の実現を目指して、回路機能に応じたデバイス特性の動的制御が可能となるダブルゲート構造等を利用した新規半導体デバイス及び強磁性体や強誘電体等の不揮発性を固有の物性として持つ材料を取り込んだ新規不揮発性デバイスを開発する。併せて、これら低消費電力デバイスをシステム応用するのに不可欠な集積化技術に取り組み、材料技術、集積プロセス技術、計測解析技術及び設計技術並びにアーキテクチャ技術等を総合的に開発する。
《平成17年度計画》
- 従来MOS技術を用いてFlexPowerFPGAの高速低消費電力性能を実証するチップの世界初の試作を行うと共に、XMOSデバイスモデルについて、AC解析が可能なモデリング技術を確立する。
- MgO障壁MTJ素子に関して、MRAM応用に向けて室温磁気抵抗比300%を目指すと共に、全積層プロセスによりナノ寸法のTMR素子及びGMR素子を試作し、動作実証を行う。さらに、MgO障壁MTJ素子によるスピン注入磁化反転を実現する。
- エッチング加工後の側壁の保護や劣化部分の回復手法等作製プロセス上の課題に取り組み、自己整合ゲート構造を有する強誘電体ゲートFET作製技術を開発し、np両チャネルの強誘電体ゲートFETを作製する。
- 計測解析技術においては、不純物分布測定技術について、プロービング制御系の高度化と測定試料の前処理方法の開発を行い、5nm空間分解能の定常的達成を目指す。
- 低損失高速大容量オンCPU電源に有効なスイッチング素子や一体型回路、チップ実装法を想定して、素子構造設計、電源回路設計、素子作製プロセス並びに各種の実装技術の開発を進める。
- 微細XMOSデバイスに必要な作製プロセスを、最適材料、評価計測及び独自の設計技術を含めて開発し、それらを駆使してXMOSデバイスでなければ実現できない動作を、回路機能レベルで実証する。
3.信頼性の高い情報基盤技術の開発による安全で安心な生活の実現
知的生活を安全かつ安心して送ることができる、信頼性の高い情報通信基盤を確立するためには、ネットワーク、ソフトウェア及びハードウェアの各々の要素の信頼性を高めることが重要である。ネットワークに関しては、様々な情報資源に対するセキュリティ技術を開発しネットワークそのものの信頼性を高める。ソフトウェアに関しては、その信頼性の向上に有効な検証技術を確立する。ハードウェアに関しては、増大する情報量に対応するために、大容量かつ高速に処理し得る通信技術及び情報蓄積技術の高度化を図る。さらに、信頼性の高い情報基盤技術を利用して自然災害の予測や被害軽減に資することにより、安全かつ安心な生活の実現に貢献する。
3-(1) 情報セキュリティ技術の開発
信頼性の高いネットワークの構築に向けて、情報セキュリティで最も重要なネットワークの利用における情報漏洩対策及びプライバシー保護に資するために、暗号、認証及びアクセス制御等の情報セキュリティに関する基盤技術及びそこで用いられる運用技術を開発する。
3-(1)-<1> 情報セキュリティ技術の開発と実用化のための検証
【中期計画(参考)】
- 情報漏洩対策及びプライバシー保護を目的として、暗号、認証、アクセス制御及びそれらの運用技術を開発する。また、量子情報セキュリティに関する基盤的研究として、情報理論や物理学の知見を用いたモデル解析及びその実証実験を行う。さらに、OSから実装までの様々な技術レベルにおいて総合的に研究を行い、セキュリティホールの防止、迅速な被害対応及び製品が安全に実装されているかどうかの検証等の技術を実用化する。
《平成17年度計画》
- ディジタルコンテンツへの適切なアクセス制御を実現する電子透かし技術について、実用性を高めるため不正行為の詳細な分析を行うことで不正者追跡手法の効率化を実現する。鍵情報の漏洩や安全性仮定の突然の崩壊にも耐性を持つ方式について、その構成方法のモデル化を行い、有用性について理論的な検討を行う。暗号技術が適切に利用されているかを評価する手法を実装し、実行時間やメモリ使用量等により有効性を評価する。
- ハードウエアに対する物理的攻撃を体系化し、各技術の能力について比較を行う。量子鍵配送プロトコルについては、販売、あるいは計画されている製品について企業と協力し、運用時の効率と安全性について調査、検討を行う。さらに、通信長距離化に向けた基礎的な技術提案を行う。
- 不正なプログラムが実行されても、システムに異常を起こさない技術の開発をシステムの複数段階で行うことにより、安全なシステム構築を目指す。具体的には、安全なコードを効率的に生成するCコンパイラの研究及び実装、機械語レベルでプログラムの安全性保証技術の開発、アプリケーションによる対処技術等である。その他Webシステムの脆弱性分析を自動化する手法の開発、RFID情報の追跡によるプライバシ侵害被害の評価とその対処技術の開発、ホストサイドの侵入解析技術に関する研究開発等を行う。
3-(2) ソフトウェアの信頼性・生産性を向上する技術の開発
利用者が安全に安心して使用できる信頼性の高いシステムソフトウェアの開発とその生産性向上に資するために、様々な数理科学的技法を活用してシステムソフトウェアの動作検証を総合的に行う技術を開発する。
3-(2)-<1> 数理科学的技法に基づくシステム検証技術の開発
【中期計画(参考)】
- モデル検査法やテスト技法等のシステム検証の要素技術とその数理的基盤の研究を行い、システム検証ツールの統合的利用を可能にするソフトウェア環境を構築する。また、システム検証の数理的技法をシステム開発現場に適用するための技術を開発する。
《平成17年度計画》
- ポインタ処理プログラムの自動抽象化支援系を試作する。また上記支援系はじめモデル検査器やプログラミングシステムを対話型定理証明支援系Agdaから呼び出しその結果を取り込むplug-in機構を開発する。さらに、これまでおこなってきた、対象システムのデータ構造に関する抽象化の数理モデルを、システムがもつ性質の記述に関する抽象化に一般化し、より広範囲の応用を得る可能性を考察する。
3-(3) 大容量情報の高速通信・蓄積技術の開発
動画コンテンツ等により増大する情報量に対応した通信の大容量化及び高機能化を実現するためには、光の高速性等を最大限に利用した大容量高速通信技術及び情報蓄積技術の確立が必要である。そのために、次世代の光通信ネットワーク用の高速光デバイス及び光信号処理技術、従来のルータ及びスイッチなどを用いない超広帯域通信網の利用技術等の基盤技術を開発する。また、近接場光等の新たな原理に基づいたテラバイト級大容量光ディスクを実用化する。
3-(3)-<1> 大容量光通信技術の開発
【中期計画(参考)】
- 半導体ナノ構造を用いた160Gbps以上で動作する光スイッチデバイスと光信号再生技術を開発する。また、量子ドット、量子細線及びフォトニック結晶等のナノ構造を用いた光集積回路及び超小型光回路を開発する。さらに、光の位相情報等の精密な制御による量子情報通信技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 160Gbps光デジタル信号に対する3R再生技術を開発する。また、偏光もつれ合い状態を用いて、伝送距離10kmの量子暗号鍵配布技術を開発する。
- 極低消費電力量子ドットレーザ光源、100GHz超の超高周波ナノトランジスタを開発・試作する。また、超高速OEデテクタ及び量子論理ゲートを開発する。
- 半導体量子井戸サブバンド間遷移を用いた5 pJ以下の低エネルギーで動作する全光スイッチを開発する。
- 周期300nm以下、直径4インチ以上のモールドを用いたインプリント法によって偏光分離素子を試作する。また、亜鉛をベースにした無毒のナノ粒子蛍光や、シリコンナノ粒子と希土類イオンを分散した光導波路(増幅器)を試作する。
【中期計画(参考)】
- 160Gbps以上で動作する大容量光通信の実用化に向けて、波長の動的制御に基づく超高速データ転送を実現するトラフィック制御方式及びミドルウェアからのネットワーク資源動的確保方式を開発する。
《平成17年度計画》
- ネットワーク資源と計算機資源を協調して予約確保することで効率的に遠隔地の計算機を複数同時に利用することを実現し、アプリケーションを用いて基本的な資源スケジュール機能の予備的評価を行う。
3-(3)-<2>光ストレージ技術の開発
【中期計画(参考)】
- テラバイト級超大容量光ディスクの事業化に向けて、第1期で開発した近接場光、局在光及び薄膜の熱光学非線形特性を用いた光ディスクの信号光を増幅する技術を発展させ、製品化へ向けた問題点の抽出と改良を企業と連携し、技術移転を行う。
《平成17年度計画》
- ジッター及びアイパターンを、映像が再生できる段階まで低減するための技術を開発し、スーパーレンズディスクとシステムのデモンストレーションを行う。
3-(4) 自然災害予測のための情報支援技術の開発
信頼性の高い情報通信基盤を活用した自然災害の予測及び被害低減により安全かつ安心な生活を実現するために、多様な地球観測データの処理、分析対象の適切なモデリング及び地球規模での大規模シミュレーションを統合して、短時間で確実に災害及びその被害状況を予測するための情報支援技術を開発する。
3-(4)-<1> 防災のための地球観測支援技術の開発
【中期計画(参考)】
- 災害予測及び被害軽減に資するために、地球観測衛星及び地上観測センサ等から得られる多様な観測データを処理する技術と、大規模数値シミュレーション技術を統合した新たな情報処理支援システム技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 地球観測衛星等データに関するメタデータの基本仕様及び分散メタデータベース技術、データ統合技術に関する基本アーキテクチャの設計を行う。
4.次世代情報産業を創出するためのフロンティア技術の開発
新たな電子技術及び光利用技術を開発することにより次世代の情報サービス産業の創出を目指す。そのために、新機能材料及び新物理現象に基づいた革新的ハードウェアの構築を目的とした電子デバイス技術、バイオや医療と光情報処理との分野融合的な新しい光利用技術及び超伝導を利用した電子デバイス技術を発展させた次世代の電子計測・標準化技術等のフロンティア技術を開発する。
4-(1) 電子・光フロンティア技術の開発
次世代産業創出の核となる情報通信のフロンティア分野を確立するために、新規材料、新物理現象に基づいた革新的電子デバイス技術及び光情報処理技術のバイオや医療分野との融合による光フロンティア技術を開発する。
4-(1)-<1> 新機能材料や新物理現象に基づく革新的電子デバイス技術の開発
【中期計画(参考)】
- 量子閉じ込め状態や超伝導状態において顕著となる電子の磁性や波動性に起因して、電気的または磁気的特性が劇的変化を示す新機能物質を対象として、物理現象の探索、解析及び制御に関する研究を行う。これにより、量子効果や超伝導効果を示す新しい電子材料の開発、コンピュータの演算速度及び消費電力を飛躍的に改善できる革新的な情報処理ハードウェア応用のための要素技術を開発する。
《平成17年度計画》
- HDD磁気ヘッド応用に必要なMgO系MTJ素子の5Ω(µm)2以下の超低抵抗化を実現すると共に、強磁性半導体を用いた新型MTJ素子の開発を行い、スピン依存伝導機構を解明する。また、半導体光デバイスと集積可能な新構造アイソレータを実証する。
- 透明な太陽電池の試作に取り組むと共に、熱線制御(反射・透過)機能の付加と大面積化技術の開発を行う。また、優れた特性のpn接合を形成するために、透明酸化物半導体の物質合成、成膜、pn接合制御技術を開発する。
- 臨界電流の変調度(自然超格子部と人工部の臨界電流の比)が5を越える人工・自然超伝導超格子を作製する。
- Bi系、頂点F系、Tl系などの超伝導体において、組成や結晶構造の精密制御と物性測定を行い、Tcの世界記録更新、多層型銅酸化物における新現象の開拓と電子状態の解析、新高温超伝導体の探索を行う。また、新現象や新材料の高度情報処理・通信応用に向けた単結晶や薄膜の開発を行う。
- 銅酸化物超伝導体キュービットの構造、設計パラメータ等を明らかにし、銅酸化物超伝導体によるキュービットの設計指針を確立する。また、Nb系などの金属超伝導体の微小ジョセフソン素子を用いて、I-V特性等の各種素子パラメータが量子摩擦に与える影響を明確にする。
- 強相関系フェルミ液体状態の普遍性の解明及び金属酸化物における特異超伝導の内部自由度問題、層状遷移金属酸化物の電子バンドキンク現象の機構を明らかにする。
- 酸化物(Na,K)NbO3に金属元素を添加した物質系で非鉛系圧電材料の開発を行い産業化に向けた技術を確立すると共に、低酸素分圧技術に関して、低酸素ポンプの能力を向上させ次世代LSI技術への適用可能性を示し、さらに、新現象・新材料の研究開発を行う。
4-(1)-<2>光フロンティア技術の開発
【中期計画(参考)】
- フェムト秒パルスの光波内位相制御技術を確立するとともに、アト秒領域での超短パルスの発生、計測及び制御のための技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 複数波長光波位相同期レーザーの短パルス高出力化を行い、2波長(830nm、1250nm)同時に50fs以下100mW以上の平均出力を達成する。また、10fs以下光パルスの高繰り返し(1kHz)増幅と10fs台増幅出力の達成、位相制御された増幅光パルスによる100nm以下の短波長コヒーレント光パルスの波長変換を行う
【中期計画(参考)】
- タンパク質やDNA等の配列集積化技術と光計測技術との融合による高感度、高速かつ高密度集積型バイオセンシング素子の開発及び補償光学技術と三次元分光技術を駆使した眼底カメラ等の高分解能3次元機能イメージング技術を開発する。
《平成17年度計画》
- 生体イメージングに適した補償光学システムとして、強度に基づく波面計測と液晶デバイスによる波面制御を融合したシステムを構築する。これを2次元の顕微画像分光技術と融合することにより、顕微鏡下で生体試料の分光情報を高分解能で取得する世界初の技術を開発する。
- 検出点サイズ10µm以下のDNAマクロアレイを作製し、分子認識反応のその場観察を実現する。
- バイオチップ用センシングデバイスを試作し、バイオ分析に使われる標準的な色素であるフルオレシンの濃度で20nM以下の検出感度を実現する。
【中期計画(参考)】
- 第1期で開発した10nmオーダーの近接場光微細加工による光ディスク用原盤(マスタリング)の高度化技術及びナノ粒子を応用した光による高感度分子センサのバイオや医療分野への応用技術を開発する。
《平成17年度計画》
- ナノ粒子構造膜と光ディスク技術を融合したバイオ光ディスクの技術検証を行う。特に、ディスク基板構造からの光学的位相差を技術を用いて抗原抗体反応を高速で検出できるかを検証し、また次の段階として、ナノ粒子を組み込んだプラズモン光増強によるバイオ分子同定法の開発を実施する。
4-(2) 超伝導現象に基づく次世代電子計測・標準技術の開発
絶対的な高精度性を必要とする先端計測及び標準化に関する技術の実現に資するために、超伝導現象の特性を活用した電子計測デバイス及びそれを用いた標準システムの確立と普及を図る。
4-(2)-<1> 超伝導現象を利用した電圧標準技術の開発
【中期計画(参考)】
- 独自に開発したNb系ジョセフソン素子大規模集積技術を用いて、1〜10 V出力の直流電圧標準システムを開発し、ベンチャー企業等に技術移転することにより世界的規模での普及を行うとともに、高精度な交流電圧標準等に用いる次世代の計測・標準デバイスを開発する。
《平成17年度計画》
- 1Vの出力電圧を有するプログラマブル・ジョセフソン(PJ)電圧標準素子チップの30%以上の作製歩留まりを実現すると共に、PJ電圧標準素子を交流電圧標準に応用するための方法を提案する。
- 単一磁束量子回路を利用した高精度D/A変換器システムの開発を行い、プロトタイプとしての10ビットD/A変換器を設計・作製し、その出力電圧レベルの不確かさを100ppmオーダの精度で評価する手法を構築する。
|