産総研:ニュース

お知らせ記事2007/12/26

産業技術総合研究所と東京都立産業技術研究センターが協力協定を締結
-産学官連携により地域産業への貢献と人材育成を目指す-

ポイント

  • 産総研と都産技研が、ナノテクノロジー産業等先端技術を活用した事業に取り組む中小企業の振興のために、広範な連携・協力関係を構築
  • 微細加工設備等の相互利用及び人材交流を通じて、世界、我が国、地域の産業に貢献できる産業技術人材育成・研究開発を共同して推進
  • 産総研と公設試の間の初めての協力協定
  • 中小企業の技術開発レベルの向上及び中小企業への技術移転と製品開発の強化

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター【理事長 井上 滉】(以下「都産技研」という)は、両機関の連携・協力を促進し、ナノテクノロジー産業等先端技術を活用した事業に取り組む中小企業の振興を図ることを目指して、協力協定を、平成19年12月26日(水)締結した。なお、産総研と公設試の間での協力協定は、本件が初めてである。

 本協定の下、産総研と都産技研は、微細加工設備の相互利用、微細加工に関する人材の派遣と受け入れ、ナノテクノロジー産業振興に関する人材育成、講座及びセミナーの実施に係るカリキュラムの策定並びに講師の相互派遣、研究発表・成果普及等の広報、共同研究の推進等を促進し、ナノテクノロジー産業振興に向けた技術交流のハブ拠点の形成を目指す。

協力協定概要図

調印式の写真
吉川 産総研理事長(左)、井上 都産技研理事長(右)

背景

 ナノテクノロジーは産業技術分野全般に革新的進展をもたらしうるキーテクノロジーといわれ科学技術基本計画の中でも国家戦略の重点推進4分野の一つに指定されている。一方、この技術はあまりに高度という印象から中小企業には困難に見える技術課題とも見られてきた。中小企業は自社でナノテクノロジーによる独創的な高付加価値の製品の開発ができれば、独自技術によるオンリーワン企業として発展することが可能になる。公設試験研究機関がナノテクノロジーによる積極的な中小企業への技術支援を通じて産業の発展に寄与していくことが求められている。

経緯

 産総研は、ナノテクノロジーや標準計測技術をはじめとする幅広い研究開発を推進している。また、都道府県の公設試験研究機関(以下「公設試」という)との連携を推進しており、公設試とのネットワークである産業技術連携推進会議(以下「産技連」という)の活動に積極的に取り組んできた。

 都産技研は、独自にナノテクノロジーセンターをはじめとして中小企業のニーズにあった技術支援の活動を行ってきた。

 産総研と都産技研は、平成19年4月よりナノテクノロジー加工技術、MEMS技術に関する産業技術人材育成、産業界への技術移転活動を先導する形で実施してきている。これは産技連に組織された各技術部会の将来方向の模範を与えるトップランナーとなる活動と位置づけられる。

協定の締結

 産総研と都産技研は、両機関の保有する装置や技術を補完し協力する形で、上記活動を推進するための協力協定を締結することに合意した。

 この活動は、産技連の各技術部会活動の活性化のモデルケースとして位置づけられることから、両機関の単なる契約ではなく、これにより、産技連活動の推進にも結びつくものと期待される。

提携の内容

  • 微細加工設備の相互利用
  • 微細加工に関する人材の派遣と受け入れ
  • ナノテクノロジー産業振興に関する人材育成
  • 講座及びセミナーの実施に係るカリキュラムの策定並びに講師の相互派遣
  • 研究発表・成果普及等の広報
  • 共同研究の推進等を促進

今後の予定

 また、産総研の人材育成スクール(人材育成カリキュラム)での協力、都産技研のナノ加工製造技術研修での協力、MEMSファウンドリー支援分野での協力に関し連携を促進する。

用語の説明

◆ 産業技術連携推進会議
産業技術連携推進会議(産技連)は、公設試験研究機関(公設試)相互及び公設試と産総研との協力体制を強化し、これらの機関の総合能力を最高度に発揮させ、機関相互の試験研究を効果的に推進し、もって産業技術の向上を図ることにより、我が国の産業の発展に貢献することを目的として運営しているもの。[参照元へ戻る]
◆ MEMS
微小電気機械システム(micro electro mechanical system)。電気回路(制御部)と微細な機械構造(駆動部)を1つのSi基板上に集積させた部品をいい、半導体製造技術やレーザー加工技術など各種の微細加工技術を用いて製造される。情報通信、医療・バイオ、自動車など多様な分野における小型・高精度で省エネルギー性に優れた高性能のキーデバイスとして期待されている。[参照元へ戻る]
◆ MEMSファウンドリー
経済産業省が推進する「中小企業産学連携製造中核人材育成事業(平成19年度:テーマ名:マイクロナノ量産技術と応用デバイス製造に関する新事業開拓イノベーション人材育成)」にも採択され、MEMS、精密ナノ加工、設計シミュレーション、評価技術についての実習を中心に、エレクトロニクスやIT、ビジネスにも精通した起業や新事業開拓を目指す国際人材を育成していく。[参照元へ戻る]
◆ 人材育成カリキュラム
経済産業省が推進する「産学官連携製造中核人材育成事業(平成17年度及び平成18年度:テーマ名:ナノテク製造中核人材育成事業)」に採択され、産総研が事業実施場所として選定され事業を実施してきたもので、平成19年度から産総研の自主事業人材育成カリキュラムとして、自ら本事業を推進するもの。我が国が優位性を有する情報家電、燃料電池、ロボット、医療機器、バイオ等の応用分野において、その産業の基盤と創出を支える中小企業を対象に、「基礎加工技能・技術特殊な要素技能・技術に習熟し、製造技術の高度化を図る人材」及び「豊富なナノ加工プロセスの知識や先端機器を使いこなすノウハウ等を習熟し、製造現場の技能・技術を統括できる人材」の育成を行う。[参照元へ戻る]