産総研:ニュース

お知らせ記事2003/02/06

産総研、平成15年度経済産業省委託事業「エネルギー・環境技術標準基盤研究」のテーマを決定
-「産総研・工業標準化戦略」に基づき、研究開発と標準化の連携を目指す-

ポイント

  • 産総研は、「 産総研・工業標準化戦略 」に基づき、産総研が取り組むべき工業標準化分野として4分野を選定している((1)ナノテクノロジー・材料 (2)環境・エネルギー (3)バイオテクノロジー (4)消費者保護/高齢者・障害者配慮 )
  • 平成15年度は、社会的ニーズや行政からの要請が高い「環境・エネルギー」分野を重点分野として、本格的に工業標準化に取り組むこととした
  • 平成15年度経済産業省委託事業「エネルギー・環境技術標準基盤研究」の実施10テーマを決定した
  • 本件による成果を日本工業規格(JIS)や国際規格(ISO,IEC)へ提案し、世界標準としての採用を目指す

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)成果普及部門【部門長 古橋 政樹】工業標準部は、産総研の研究成果の普及を促進するとともに、我が国産業の国際的な競争力強化に資する工業標準化を戦略的に推進するため、昨年11月に「産総研・工業標準化戦略」を策定した。その中で産総研が取り組むべき工業標準化分野として、ナノテクノロジー・材料、環境・エネルギー、バイオテクノロジー、消費者保護/高齢者・障害者配慮の4分野を選定しているが、特に平成15年度においては、社会的ニーズや行政からの要請が高い「環境・エネルギー」分野を重点分野として選定し、平成15年度経済産業省委託事業「エネルギー・環境技術標準基盤研究」により標準化研究を実施することとしている。

 この度、平成15年1月24日(金)に開催された産総研幹部会において、本「エネルギー・環境技術標準基盤研究」における実施10テーマを決定した。

※実施テーマは以下のとおり

1.新エネルギー・省エネルギー関係

  • ハイブリッド自動車の燃料消費率試験方法(ステップ2)
  • 燃料用ジ・メチル・エーテル(DME)の品質基準
  • 環境調和型建材
  • 簡易型水素センサー
  • 超電導フィルター用薄膜材料の表面抵抗測定方法
  • 微細結晶粒制御の軽量金属材料の評価方法
    (以上、6件)

2.環境対策関係

  • 生分解性高分子材料の標準物質
  • 温室効果ガスの発生源インベントリー計測方法
  • 石炭中微量元素の分析方法
  • フィルターの耐久性能試験評価方法
    (以上、4件)

 今後、選定されたテーマについて、標準化を行う上で必要となる実証試験データの取得・分析、ラウンドロビンテスト(回送試験)等を実施し、日本工業規格【JIS】や国際規格【ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)】への提案を行って行く予定である。

エネルギー・環境技術標準基盤研究の図

標準化の必要性( 例示 )

 新エネルギー・省エネルギーに係る標準化テーマの一例としては、「ハイブリッド自動車の燃料消費率試験方法(ステップ2)」がある。ハイブリッド自動車は、通常の自動車に比べて燃料消費率が良く環境負荷が少ないため、その普及が望まれている。また、この分野は我が国が国際的に最も進んでおり、国際貢献の意味からも国際標準化を進める意義がある。

 環境対策に係る標準化テーマの一例としては、「生分解性高分子材料の標準物質」がある。地球環境保護の観点から、現在膨大な量が使用されている化石燃料を原料としたプラスチック材料を、生分解性プラスチック材料に転換する必要があり、生分解性を正確に判定するための標準物質の開発・標準化を行うものである。

今後の予定

 2月中に各テーマの研究実施者を所内公募し、3月中に標準基盤研究審査委員会(仮称)を開催・研究実施者を決定する。4月以降、経済産業省との委託契約締結後に標準化研究を実施する。

 なお、プロジェクトの評価については、毎年度ごとに中間評価を行い、標準化研究の進捗状況および規格原案作成見込みについて成果普及部門工業標準部が適切に把握し、プロジェクト終了までに規格原案作成の見込みが立たないと判断されたテーマについては、当該年度をもって終了させることとしている。

「 産総研・工業標準化戦略 」とは

 近年、工業標準への取り組みに関する産総研への期待が増大している。特に、我が国の産業競争力強化の必要性が叫ばれる中で、研究開発成果の実用化の観点から、工業標準への取り組みの強化が求められている。【 関係府省庁が平成14年度中に作成予定の「産業発掘戦略」においても「標準化」を市場化のためのツールとして位置付けている 】しかしながら、産総研における工業標準に対する取り組みは、旧国立研究所の時代以来、特定の分野を除くと未だ充分とはいえない。所内における工業標準への認識不足やインセンティブの低さに加えて、具体的な標準化ニーズが明らかでないことが、その要因であると考えられる。そこで昨年11月、産総研の役割と今後取り組むべき重点分野を明らかにするとともに、予算面、制度・インフラ面等の具体的な課題を提示する「産総研・工業標準化戦略」を策定した。今後は、この戦略に基づき、消費者団体、産業界、学会等の標準化ニーズを捉えた標準化研究を実施していく予定である。