産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2014/10/14

産業技術総合研究所と奈良県立医科大学が連携・協力の推進に関する協定を締結
-医工連携技術の研究開発を推進-

ポイント

  • 共同研究などの研究協力、人材交流・育成、健康社会構築に向けた活動などを推進
  • 本連携により、医療現場や日常生活の中での健康維持・増進に貢献
  • 当初は、特に健康デバイスの開発と医療現場などでの実証研究を強力に推進

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)と公立大学法人 奈良県立医科大学【理事長 細井 裕司】(以下「奈良医大」という)は、研究開発や人材育成の連携・協力に係る協定を平成26年10月14日に締結した。本協定に基づいて、産総研と奈良医大は、共同研究などの研究協力や人材交流・人材育成を推進することにより、医療や看護の現場、日常生活場面における課題解決に向けて、相互の知見・技術を活用し、個別に進めてきた研究開発を融合して、健康に関わる研究開発の更なる促進と成果の創出を目指す。

連携内容概要図

 

協定締結のねらい

 産総研では、「健康を守る技術」や「健康的な生き方を実現する技術」をライフサイエンス分野の重点課題として取り組んでおり、情報通信・エレクトロニクス分野では、ITのユビキタス化を利用して健康的な生活を支援する生活見守り技術や生活サービス提供技術の研究開発を進めている。このような研究開発には、技術が目指している健康維持・増進のために、健康状態を客観的に評価することが重要であり、医療現場でしか得られない特有のニーズ把握や生体サンプルなどの入手、さらには実際の患者や生活者による実証研究の機会を確保していくことが必要であり、そのためには医療機関との連携が必須となる。

 一方、奈良医大は、大学院(医学研究科と看護学研究科)と医学部(医学科と看護学科)を持つ医学系大学であり、学生の教育と併せて、医療や看護の現場にあるさまざまな課題の解決に向けた研究開発を進めている。このような課題解決を進める上で、医学部にない工学的な知識や技術を融合した研究開発が重要との考えから、他の研究機関との連携の輪を広げて、総合大学に匹敵する機能を持った大学を目指している。また、近々予定されている大学のキャンパス移転に伴って、移転先の地域と一体となった健康的な「まちづくり」を目指した活動を推進しており、医療現場以外にも日常生活の中での健康維持・増進に関わる取組みを行っている。

 このように、産総研と奈良医大は、健康に関わる研究開発を進める上で、相互の知識・技術を融合して、それぞれが目指す研究開発を一層促進することができる関係にある。このような観点から、両者で連携・協力の推進に関する協定を結び、研究開発の促進を図る。

具体的な連携・協力内容

 協定に基づく連携・協力事項として、共同研究を推進するとともに、人材交流・育成や健康社会構築に向けた活動などを進める。

 (1)共同研究の推進
  産総研が持つ材料・デバイス技術、計測技術、健康支援技術と医療現場などを持つ奈良医大の技術開発課題を共有化し、連携研究課題を発掘し両者の強みを生かした課題解決に取り組む。特に奈良医大が持つ医療現場などでの実証研究を推進する。具体的には、下記の技術分野での研究開発を行う。

  • 骨導超音波補聴器や感染症診断用の高速遺伝子検査システムの実用性の向上に向けた研究開発の加速。
  • がん細胞検出用デバイスをはじめとする健康デバイスの医療現場での実証研究の加速。
  • 産総研が進める見守り住宅技術と、奈良医大が進める健康まちづくりを連携した実証研究。
  • 産総研のセンサー技術を活用して、奈良医大が課題として持つ無拘束生体計測技術や診断技術の共同開発を加速。
  • 産総研が進めるサービス工学的研究アプローチの医療関連技術(健康食、院内サービス、遠隔健康モニタリング)への応用。

 (2)人材交流・育成
 円滑な共同研究を推進するために、相互の研究人材の派遣・交流を進めるとともに、相互の知見を活用した教育、人材育成の活動を行う。

 (3)健康社会構築に向けた活動
 研究成果の社会還元の活動として、自治体・産業界と連携したプロジェクト事業などの提案・実施、および国や自治体などに対する健康社会構築に関わる提言活動を積極的に行う。

用語の説明

◆ユビキタス化
米国ゼロックス研究所のマーク・ワイザー博士が提唱した新しいコンピューター・情報環境の概念の1つ。家庭・都市・社会環境などに多種多様なコンピューターが組み込まれ、センサー情報をもとに様々な情報サービスが提供されるような次世代の情報環境と情報処理技術のこと。[参照元へ戻る]
◆骨導超音波補聴器
骨導(音を発生する振動子を頭蓋骨や頸の筋肉に接触させて音を聞く方法)で呈示された周波数 20kHz 以上の高周波(骨導超音波)は、従来型補聴器の使用が困難な重度難聴者にも知覚されるが、この現象を利用した全く新しい仕組みの補聴器。[参照元へ戻る]
◆高速遺伝子検査システム
遺伝子情報に基づく投薬・治療を行うテーラーメード医療が開始され、今後、臨床現場などにおいて迅速な遺伝子検査技術の重要性が増大すると考えられる。遺伝子検査において不可欠なPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法は、従来1~2時間を要するために、迅速に遺伝子情報を調べることは不可能であった。高速遺伝子検査システムは、PCR法におけるサーマルサイクルの工程を、微小流体デバイス化により極限まで高速化したシステムである。[参照元へ戻る]