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お知らせ

2007/08/30

共有する知的財産権の活用方針を緩和
-企業との連携を加速し、研究成果を活用したイノベーションを促進-

ポイント

  • 共同研究による共有知財に関して、不実施補償料を請求しない共同研究契約も可能に。
  • 共有知財の非独占自己実施において、対価の支払い方法を多様化。
  • 共同研究を通じた企業との連携を加速し、イノベーションを推進。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、産学官連携の一層の推進とその成果の活用促進を通じてイノベーションの推進を加速するため、企業との共同研究で創出された共有の知的財産権(以下「共有知財」という)の取扱について、一部変更を行うこととしました。この変更は平成19年9月1日より適用いたします。

 主な変更点は、共有知財の自己実施に関し不実施補償料を請求するという従前の原則を、次の条件を満たす場合においては、不実施補償料を請求しないこととする点です。

 1)共同研究によって創出された共有知財であること。

 2)実施の際、非独占で、かつ自己実施であること。

 3)共同研究の実施に際し、企業から一定額以上の研究資金の提供があること(「一定額」については下表参照)もしくは国が推進する研究開発プロジェクトの下での共同研究であること。

 ただし、上記3)以外の共同研究であっても、創出された共有知財の不実施補償料の支払い方法に、いくつかの選択肢を設けました。また、別途、権利の移動により、知財の単独での権利化も可能にしました。

 これにより、共同研究相手企業による研究成果の事業化が促進され、イノベーション創出が加速されることが期待されます。

 なお、共有知財の独占実施の場合は、従前どおりの不実施補償料を請求します。

 

表 共同研究により創出される共有知財の取り扱い

共有者による選択
旧制度
新制度
非独占的に
自己実施
不実施補償料
の請求あり
1.不実施補償料を請求しない条件
 1)共同研究契約期間が1年以内で資金提供額が600万円以上
 2)共同研究契約期間が3年以内で資金提供額が2000万円以上
 3)国が推進する研究開発プロジェクト
産総研研究成果活用製品マークの図2.不実施補償料の支払方法を多様化
 1)実績に基づく支払
 2)一括金での支払
 3)「産総研研究成果活用製品マーク」の表示による減免(可能な場合のみ)
独占的に
自己実施
不実施補償料
の請求あり
(変更なし)

社会的背景と経緯

 現在、産学官連携を基軸とした知的創造立国への取り組みの必要性が叫ばれ、共同研究の効果を高めるための様々な立法措置や公的資金による支援が行われています。こうした動きに呼応して、産総研もイノベーション推進の主体となる企業との広範な連携と、連携の成果である共有知財の活用が重要であるとの認識のもと、企業との連携による共同研究を推進してきたところです。

 一方、産総研は平成13年6月に策定した「産総研技術移転ポリシー」の中で、「産総研は、知的財産権について不実施機関であり、自らの知的財産権を実用化・事業化することはないので、実施をする者から実施料を原則徴収することにより、利益の還元を図る。」と定め、共有相手方か第三者かを問わず、すべての知的財産権の実施者に対して実施料を請求するものとし、共同研究の成果である共有知財についても、共有相手方にいわゆる不実施補償料を請求することを原則として参りました。

 しかしながら、共同研究先企業からは、特に契約内容の調整局面において、共有知財のより柔軟な取扱いが要望されていました。

 そこで、産総研はイノベーション推進の主体となる産学官連携の一層の推進と、産学官連携の成果の活用を加速するため、共同研究の成果として創出される共有知財の取扱に関して見直し、その活用方針を緩和することといたしました。

内容

 今回の見直しでは、企業との連携強化によるイノベーション推進の視点、および相応の対価を獲得する視点を設け、両者を矛盾なく両立させるための新しい仕組みについて検討しました。

 その結果、産総研が企業と共同研究契約を締結する際に、次のいずれかの条件を満たす場合には、その成果として創出された共有知財を共有相手企業が非独占的に自己実施しても、産総研は不実施補償料を請求しない取り決めとすることとしました。

 1)企業から一定額以上の研究資金の提供があること(「一定額」については表を参照)

 2)国が推進する研究開発プロジェクトの下での共同研究であること

 なお、上記1)の研究資金は、共同研究により強い特許を創出するために十分な研究推進体制を構築するため、との趣旨で受領するものです。

 また、上記以外の共同研究であっても、創出された共有知財の不実施補償料の支払い方法に、いくつかの選択肢を設けました。

 さらに、共有知財の出願に際し、権利の移動により、単独での権利化を可能としました。

 なお、本制度の運用は、平成19年9月1日から開始します。

共同研究によって創出された知財の取り扱いのフローチャート図
図 共同研究によって創出された知財の取り扱いのフローチャート

期待される効果

 今回の共有知財の取扱方針の緩和によって、共同研究契約がより迅速に締結されることとなり、企業と産総研の連携が容易になると期待されます。その結果、共同研究によって得られた研究成果の産業界への移転が促進されるだけではなく、企業との連携が強化されることで、産総研の研究成果の社会への還元と、これらによるイノベーション推進が加速されることが期待されます。

 また、社会ニーズに対応する知財の創出の活性化が期待されることから、産総研が提唱する本格研究の発展が促進されるものと期待されます。

用語の説明

◆自己実施
特許の所有者が、その特許を自ら実施して製品の製造、販売等を行うこと。 [参照元へ戻る]
◆不実施補償料
自ら製品を製造せず、特許等の知的財産権を実用化・事業化しない機関(不実施機関)は、製品の製造販売等により利益を得ることができない。そのため、企業側がその共有特許等を用いて事業を行った場合、不実施機関は不実施補償料として、当該特許を実施した共有企業から徴収している。[参照元へ戻る]
◆共有知財の非独占/独占
特許の所有者は、その特許を実施する権利を有しているが、その特許の所有者以外の第三者に対してもその特許を実施することを認める場合を「非独占的実施」と呼ぶ。逆に、第三者による実施を認めない場合を「独占的実施」と呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆産総研研究成果活用製品マーク
産総研研究成果活用製品マークの図 産総研は組織のロゴマークのほか、研究成果が使われている製品向けのマークとして、「産総研研究成果活用製品マーク」を商標登録し、実施契約締結済みの企業へ使用の許諾を行っている。
なお、組織のロゴマークは産総研自らの活動にのみ使用し、他者の使用を禁じる扱いとしている。[参照元へ戻る]
◆産総研技術移転ポリシー
技術移転も組織のミッションの一つとして宣言し、職員が行うべき研究成果の移転姿勢を具体的に定めたもの。特徴としては、技術移転活動を特定の部署の責務とはせず、全職員個々の責務と定めたことや、TLOの活用、ベンチャー設立への支援などが盛り込まれている。[参照元へ戻る]
◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像に至るシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research」と呼ぶ。[参照元へ戻る]

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