産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2003/12/08

日仏ロボット工学共同研究ラボラトリー(ISI/AIST-DSTIC/CNRS JRL)の設立
-人間型ロボットHRP-2 Prometを共通実験プラットフォームとして導入-

ポイント

  • 日本(AIST)とフランス(CNRS)が、ロボット技術に関する共同研究所を設立
  • AISTとCNRSの包括的研究協力協定の下、個別研究分野の研究協力の一環
  • ISI/AIST-DSTIC/CNRS JRLは、すべてにおいて日仏二極研究体制で実施
  • 人間型ロボットHRP-2 Prometを共通実験プラットフォームとして導入
  • 日仏双方の研究者のポテンシャルを融合させてロボット技術の発展に貢献
  • より知能や自律性の高いロボットシステムを構築する技術の確立を目指す

概要

人間型ロボットHRP-2 Promet(プロメテ)の写真 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「AIST」)知能システム研究部門【部門長 谷江 和雄】(以下「ISI」)は、フランス国立科学研究センター【理事長 Bernard Larrouturo(ベルナール・ラルチュルー)】(Centre National de la Recherche Scientifique 以下「CNRS」)情報・コミュニケーション科学技術部門【部門長 Francis Jutand(フランシス・ジュタン】(The Department of Sciences et Technologies de l'Information et de la Communication以下「DSTIC」)と、ロボット技術に関する共同研究所「 日仏ロボット工学共同研究ラボラトリー(ISI/AIST-DSTIC/CNRS Joint Japanese-French Robotics Laboratory以下「JRL」)を設立する。

 AISTとCNRSではすでに包括的研究協力協定を締結(2001年11月22日) しているが、今回のJRL設立は、この包括的な研究協力協定下での個別研究分野の研究協力の一環となる。

 JRLは、すべてにおいて日仏二極研究体制で実施する。日本側研究拠点(つくばラボ)は、AISTつくばセンター内オープンスペースラボ(OSL)のISI内に、フランス側研究拠点(パリラボ)は、パリのCNRS-ベルサイユ大学ロボット研究所(LRV)内に設置される。それぞれの研究拠点はISI /AISTとCNRSの共同出資で運営され、双方に日仏混合の研究チームを構成し研究に従事する。また、運営と活動評価のために、フランス側からCNRS、INRIA(フランス国立コンピュータ科学/制御研究所)、ツールーズ大学などの研究者、日本側からAIST、東京大学の研究者で構成される運営委員会を設置する。

 さらに、日仏研究者の個々の研究成果を効果的に融合させるための共通実験プラットフォームとして、経済産業省・NEDOプロジェクト「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発(1998-2002)」でAIST・川田工業(株)他が開発した人間型ロボットHRP-2 Promet(プロメテ) を導入し、各研究の成果はすべて、HRP-2に実装してデモンストレーションすることを義務付ける予定である。ロボットの知能や自律性を高めるには、個々の研究者が作り出す研究成果を個別に使うのではなく、いかに一つのシステムに融合させて活用するかが重要である。共通の実験プラットフォームを定め、それに個々の研究者が生み出した成果を搭載し相互利用できるようにすることで、日仏研究者が生み出す個々の成果を効果的に融合することができる。これによって、より知能や自律性の高いロボットシステムを構築する技術の確立を目指す。

 今後、ISI/AIST-DSTIC/CNRS双方ともさらに研究者を増員し、研究拠点も将来的には日仏国内複数箇所に増やし活動を拡大する予定である。また、日仏以外の国からも広く人材を受け入れ、国際ラボとして体制を充実させていく予定である。

補足説明

 JRLの本格稼動は2004年1月からを予定している。設立期限は、4年ごとの見直しがあるが、双方での合意が続く限りとなっている。

 双方に日仏のディレクターと研究者を配置する。設立時は、つくばラボにISI/AISTから4名、CNRSから5名、パリラボにISI/AISTから2名、CNRSから4名の研究者を配置して活動を開始する。つくばラボのディレクターには、横井 一仁 主任研究員(ISI/AIST)、A. Kheddar教授(CNRS研究員、Evry大学)、パリラボのディレクターには、P. Brazevic教授(CNRS研究員、ベルサイユ大学)、吉田 英一 主任研究員(ISI/AIST)が就任する。

 JRLは、ISI/AISTの一部およびCNRSの国際連携研究所(The Associated International Laboratory)の一つとして運営される。日本におけるCNRSとの共同ラボとしては、マイクロマシン分野で設置されている東京大学生産技術研究所-CNRS共同ラボ(LIMMS)に続き2件目である。しかし、今回の共同ラボは、日仏双方に研究拠点を置き、日仏双方の研究者を双方に配置して研究を行うことに特徴があり、この特徴を持つCNRSとの共同ラボは日本では初めてである。

 JRLのミッションは、古くからロボットの研究を活発に推進しているヨーロッパのロボット先進国フランスと、ロボットに関し高い技術力をもつ日本とが双方の研究のポテンシャルを融合して、ロボットの知能や自律性を高めるさまざまな研究、例えば、ロボットのための人工知能、行動計画、学習、視覚・触覚などのセンサ技術などに関する研究を推進し、ロボット技術の発展に貢献することである。

JRL設立に係る調印式について

 JRL設立に係る調印式は、パリのCNRS本部で2003年12月8日9時(フランス時間)から行われる。調印式には、日本側の責任者であるISI/AISTの谷江 和雄 部門長が出席、フランス側の責任者であるDSTIC/CNRSのFrancis Jutand(フランシス・ジュタン)部門長との間で協定書への署名が行われる。その模様は、駐日フランス大使公邸で開催される来日中のClaudie Haignere(クローディ・エニュレ)仏国研究・新技術大臣の記者会見(2003年12月8日18時(日本時間))において同時中継されるとともに、駐日フランス大使公邸において行われるJRLの共通実験プラットフォームとして導入されるHRP-2 Prometを使用したデモンストレーションの模様もCNRSパリ本部に同時中継される(二元中継の式典として執り行われる)予定である。