産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2017/11/17

ガラス物性測定コンソーシアムの設立
-高機能ガラス部材の成型加工に関する基盤技術の普及を目指す-

ポイント

  • 高機能ガラス部材を開発・製造するための情報交換を目的としたコンソーシアムを設置
  • ガラス部材の成型加工時に重要なガラス物性の測定についての情報提供、情報交換を行う
  • 光学部品などに適用可能なガラスの精密プレス成型の普及を目指す

概要

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)無機機能材料研究部門【研究部門長 淡野 正信】は、難加工材料であるガラス部材の成形の高度化のために、当部門で蓄積してきたガラスの物性測定技術や精密成型技術の普及と情報交換を目的とした新たなコンソーシアム「ガラス物性測定コンソーシアム」を平成29年11月17日に産総研関西センターに設立しました。

 このコンソーシアムでは、ガラス部材の製造やそれを利用している民間企業、大学、公設試験研究機関(公設試)と産総研が情報交換を行うことにより、新しいガラス精密成型部材の開発やガラス製品の製造時に発生する課題の解決に寄与し、ガラスのより広範な利用とそれによる最終製品の性能向上につなげることを目的とします。

 また、ガラス物性測定コンソーシアムでは、ガラス成型やガラス成型品の利用に係わる企業、研究者の皆様のご参加をお待ちしております。

ガラス物性測定コンソーシアムの概要図
ガラス物性測定コンソーシアムの概要

社会的背景

 ガラスは、耐久性や耐熱性に優れるとともに、光透過性や高屈折率などの性質を有しており、これらの性質を生かして、光通信用のレンズや撮像系レンズなど、高い信頼性を必要とするデバイスへ広く活用されてきました。また、これからのIoT時代においては、従来の情報通信のみならず、産業・運輸などさまざまな分野での光学センシングなどにガラス部材の利用が広がることが期待できます。

 しかしながら、ガラスはプラスチックに比べて成形や加工が困難なため、高い耐久性や光透過性などのガラスの持つ利点が十分に生かされてきませんでした。この難点を克服することができれば、ガラス部材の活用の制限を大きく突破することができます。そして、ガラスの利用が拡大すると同時に素子やデバイスなどの最終製品の性能向上につながることが期待できます。

 産総研では、これまでにSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)革新的設計生産技術「ガラス部材の先端的加工技術開発」などのさまざまな研究開発プロジェクトなどを通じて、ガラスの精密プレス成型や成型にかかわる粘弾性、粘性などのガラスの基礎物性測定に関わる研究を行ってきました。今回、その知見をより広く活用していただくための情報交換の場として、企業、公設試、大学とのコンソーシアムを設置することとしました。

コンソーシアムの活動

 ガラス物性測定コンソーシアムでは、産総研で培ってきた、ガラス成型の際に重要な物性の測定技術や精密成形技術の普及を図るとともに、ガラスの物性や成型などを主軸とした情報交換を図り、企業側が抱える課題にもこたえることを目的とします。

 具体的には、以下の事項を行います。

1. ガラス物性を中心とする情報交換
・ ガラス成型に必要な、高温のガラス物性を中心とする講演会の開催
・ ガラス物性測定の実際、測定と解釈についての講習会の開催
産総研には、粘性、粘弾性、弾性率、表面張力などのガラスの精密成型時に重要な物性の評価装置の集積、評価技術の蓄積があり、それらの知見の普及を図っていきます。
ガラス物性についての測定技術や新しい解釈などについて講師を招き講演会を行うことにより当該分野の理解を深めることを図ります。

2. ガラス成型を中心とする情報交換
・ ガラス成型を中心とする講演、成型装置の情報交換、精密成型の実際についての講習
産総研では、精密成型によるガラス表面の微細加工の研究を行っており、そこで得られた知見の普及を行います。
ガラスの精密成型に関する新しい技術について講師を招き講演会を行うことにより当該分野の発展を図ります。
成型で問題となる事項について新しい課題の抽出と検討を行います。

3. 人材育成
・ ガラスの科学、物性測定についての基礎講習
本コンソーシアムの参画企業を対象に、ガラスの製造や利用を行う上で理解しておかなければならない基本的な知識についての初歩的な講習会を開催するなど、人材育成に努めます。

○ガラス物性測定コンソーシアムを推進する産総研の研究部門
 無機機能材料研究部門
○事務局 無機機能材料研究部門 高機能ガラスグループ

用語の説明

◆粘弾性
弾性(力を加えるとそれに応じて変形し、力を取り除くと基の形に戻る性質)変形と、粘性(流体の流れる方向にすべらせるように働く力(ずり応力)を加えた際に、流れることに対して抵抗する性質)流動が重なって現れる現象。通常、液体と固体は、それぞれ粘性と弾性だけを示すが、溶融したガラスは粘弾性を示す。[参照元へ戻る]