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発表・掲載日:2012/12/06

国内の地質図を誰もが簡単に利用できるウェブサイトを提供

-「地質図Navi」を公開-

ポイント

  • 国内の地質図や様々な地質情報を快適な操作で高速に表示可能
  • 地図利用に標準的な形式の地質図データ配信によりデータ活用が容易に
  • 企業や教育現場における詳細な地質情報の利用を促進

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)地質情報研究部門【研究部門長 牧野 雅彦】シームレス地質情報研究グループ【研究グループ長 斎藤 眞】内藤 一樹 主任研究員は、インターネット環境において産総研の持つ地質情報を誰もが閲覧できるウェブサイトを作成し、2012年11月1日より「地質図Navi」として公開を始めた。地質図Naviは、http://gsj-seamless.jp/geonavi/ から利用できる。

 地質図Naviは、産総研がこれまでに整備してきた数多くの地質図を表示するとともに、活断層第四紀火山などの地質情報を地質図と合わせて表示することが可能である。これまで産総研が公開してきた統合地質図データベース(GeoMapDB)と比べて、表示可能な地質情報の種類が増加し、地質図の表示速度と操作性が向上した上、PCやタブレット端末などの多くの情報機器から利用できるようになるなど、利用者の利便性が大幅に向上した。

 また、地質図データは標準的な形式で配信されるため、利用者は一般的な地図アプリケーションで地質図データを活用することが可能となる。

 地質図の利用が容易になることで、企業や教育現場で詳細な地質情報の活用が増え、建設や防災、自然教育など地質と関わる活動の質が向上することが期待される。

地質図Naviでの地質情報表示例の画像
図1 地質図Naviでの地質情報表示の例
地図上をクリックすることで地質図が表示される。活断層や第四紀火山などの情報を表示することもできる。PCやタブレット端末などで利用できる。

開発の社会的背景

 東日本大震災を経て多くの人々の中で、地盤の安定性や活断層の評価、地層に含まれる化学成分など地質に対する関心が高まっている。産総研では20万分の1スケールで日本全国の地質を表現した日本シームレス地質図を2005年よりインターネットを通じて公開しており、地盤調査や土地評価など様々な場面で活用されている。しかし、20万分の1スケールでは十分ではない細かな地域の詳しい地質や、断層、地盤の化学成分など更に詳細な地質情報を知りたいという要望もたびたび寄せられてきた。

 産総研では、地質図として日本全国の詳細な地質情報の整備を進めている。地質図は、産総研地質調査総合センターの前身である旧地質調査所により明治期から長い年月をかけ整備され、現在も最新の地質学の知見を反映し発行・改訂が続けられている国土の基本情報である。しかし、これらのほとんどが印刷による出版物であるため、地質情報を利用するためには書庫の膨大な資料から地質図を探し出す必要がある。また地質専門家以外の一般の人にとっては多数の地質図にアクセスすること自体が難しい状況であった。そこで、インターネットを通じて産総研の地質情報を利用できるシステムを整備することで、誰もが自由に地質情報を活用できる環境の構築を目指した。これにより、業務や研究で地質情報を扱う利便性が向上するのみならず、各地の自然教育活動や学校教育の場での地質情報を活用した活動などの品質の向上も期待できる。

開発の経緯

 産総研は、これまで発行してきた全国の地質図をもとに主要な地質図をウェブブラウザーで表示可能な統合地質図データベース(GeoMapDB)を2006年に公開した。

 GeoMapDBでは、それまでインターネットでは未公開であった20万分の1や5万分の1地質図幅の画像の閲覧が可能になった。しかし、地質図の付属情報の閲覧機能が不足する点や、地図画像の品質、表示速度などに不十分な点があった。地質図では、地域による地質の特徴の違いや、作成当時の地質学の考え方の違いなどにより、地質図毎に地層の分類や地質構造の解釈などが異なる。そのため、それらの情報を示した地質凡例地質断面図などの付属情報は、地質図に表現された情報を読み取る上で欠くことのできない情報であり、付属情報もあわせて扱うことのできる地質図表示システムが必要だった。

 昨今、インターネットでの地図利用の普及とともに地理空間情報配信の標準化や、ユーザーの利用する地図表示ソフトの高機能化も進んでいる。そこで産総研では、地質図表示に適した表示機能を持ち、多種の情報を表示可能な新たなシステムを構築することとした。

開発の内容

 今回、試験公開されたウェブサイト「地質図Navi」は、情報端末とインターネット環境さえあればどこからでも快適に様々な地質情報を表示可能な地質情報閲覧システムとして作成された(図2)。

 従来のウェブサイト(GeoMapDB)では、PCのウェブブラウザーでの表示にしか対応せず、表示可能なデータの種類も限定されていたが、地質図Naviでは、PCだけでなくタブレット端末やスマートフォンなど多様な情報機器のウェブブラウザーで利用することが可能となり、国際規格であるWMS配信データとして提供される重力図や地球化学図などの様々な情報が表示可能となった(表1)。

 マウス操作による地質図や付属情報の直感的な表示を実現し、快適に複数の地質図の情報を切り替えて閲覧することができる。

「地質図Navi」公開サイトの表示画面例の画像
図2 「地質図Navi」公開サイトの表示画面の例
地図上をクリックすることで地質図が表示されるなど、直感的で快適な操作を実現。

表1 地質図Naviで表示可能なデータ一覧
地質図Naviで表示可能なデータ一覧の表

※1 従来のウェブサイトでは地質図画像のみ表示できた。
※2 従来のウェブサイトでは一部機能のみ利用できた。

 地質図Naviの機能は、地質図データ配信サービス、地質図データ利用ライブラリ、地質図Navi本体プログラムの3つの要素を組み合わせることで実現した(図3)。

地質図Naviを構成する3つのコア技術の図
図3 地質図Naviを構成する3つのコア技術
地質図データ配信サービス、地質図データ利用ライブラリ、地質図Navi本体プログラムの3つの要素を組み合わせることで地質図Naviが構築される。

「地質図データ配信サービス」:
 地質図データをインターネット配信するサービス。産総研の整備する多数の地質図データを、インターネットを通じて利用者が取得することが可能となった。多くの地図表示ソフトが対応するTMS (Tile Map Service)形式での配信のため、利用者が独自のソフトに地質図データを読み込み利用することもできる。

「地質図データ利用ライブラリ」:
 地質図データ配信サービスのデータをウェブアプリケーションで利用するための機能をまとめた補助プログラム。複数の地質図の重なりとグループ操作を管理する機能、地質図の地質凡例や地質断面図などの付属情報を検索・表示する機能などを持つ。これを利用することで、ウェブサイト制作者は地質図を表示するウェブサイトを簡単に作成することができる。このライブラリは、試験公開の結果をもとに改良を加えた後に一般公開される予定である。

「地質図Navi本体プログラム」:
 地質図データ利用ライブラリを利用して作成されたウェブアプリケーション。産総研の整備する活断層データベースや第四紀火山データベースなどの地質系データベースを利用し、活断層や第四紀火山などの情報を利用する機能を持つとともに、インターネットを通じて配信される様々な地理空間情報を利用する機能を持つ。利用者は、多数の地質図を快適に表示し、活断層を始めとする様々な情報を地質図と重ね合わせて閲覧することができる。

 地質図Naviの利用場面の例として、以下の様な用途が挙げられる。

  • 地質図と地すべり地形情報などを重ね合わせることで、防災上の注意の必要な地域の検討に利用する。
  • 道路など建設工事の計画の初期段階で地質情報を確認することで、計画作成の効率が向上する。
  • 自然教育活動の現場において、地域の地質の特徴を調べ自然観察の教材として利用する。
  • 博物館などのウェブサイトに掲載された周辺地域の案内マップに「地質図データ利用ライブラリ」を追加することで、わずかな作業で地質図表示を追加できる。

今後の予定

 今回の試験公開の後、利用者からのご意見・ご要望などをもとに機能の追加と改良を行うことで、2013年3月に地質図Naviの正式版を公開する予定である。

 また、地質図Naviは、地図に表示される様々な情報を柔軟に扱えることを目指して開発を継続し、公開が予定される産総研の各種地質系データベースの利用や、様々な機関から配信される地理空間情報の利用を進めることで表示可能な情報を順次追加し、地質情報利用の利便性を向上していく予定である。

問い合わせ

独立行政法人 産業技術総合研究所
地質情報研究部門 シームレス地質情報研究グループ
主任研究員 内藤 一樹  E-mail:内藤連絡先


用語の説明

◆地質図
植生や人工構造物、土壌の下にどのような岩石や地層が分布するかを示した地図。[参照元に戻る]
◆活断層
新しい時代(約10万年前以降)に地下の岩盤に加わる力によってずれ動いた形跡があり、近い将来も動くことが推定される地層や岩盤のずれ。[参照元に戻る]
◆第四紀火山
第四紀(地質時代の一つで約180万年前から現在までの期間)に活動した火山。2009年、国際地質科学連合(IUGS)によって第四紀の始まりが約180万年から約260万年に変更されたため、現在、第四紀火山データベースの改訂作業が進められている。[参照元に戻る]
◆統合地質図データベース(GeoMapDB)
産総研地質調査総合センターが2006年から公開してきた地質図を閲覧・検索できるウェブサイト。2012年3月末に運用は終了した。[参照元に戻る]
◆日本シームレス地質図
通常の地質図では地図幅毎に作成年代が異なり、その当時の学問的解釈により地質の分類が異なることから、地図幅同士のつぎ目で地層境界などもつながらない。そこで、全国の地質図の地質分類を統一し地層境界線の接合処理も行うことで、つぎ目のない連続した地質図として20万分の1日本シームレス地質図が作成された。日本シームレス地質図は【http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db084/】で公開されている。[参照元に戻る]
◆地質図幅
5万分1地形図や20万分1地勢図などの国土地理院発行の地形図枠に従って発行された地質図。[参照元に戻る]
◆地質凡例
地質図の中で色分けされて示された地質の説明。岩石・地層のできた時代、種類、名称などを示す。[参照元に戻る]
◆地質断面図
地質図上に引かれた断面線の位置の地下地質を示した図。[参照元に戻る]
◆地理空間情報
地図や位置情報を持って地図上に示される情報。[参照元に戻る]
◆WMS(Web Mapping Service
インターネットを通じて地図を配信するサービスの国際規格。[参照元に戻る]
◆配信サービス
データサーバーから通信ネットワークを通じて利用者のコンピュータへデータを提供する機能。[参照元に戻る]
◆ライブラリ
汎用性の高いプログラムを他のプログラムでも利用可能な形でまとめたプログラム。[参照元に戻る]
◆TMS (Tile Map Service)
OSGeoThe Open Source Geospatial Foundation: オープンソース地理空間ソフトウエアの支援と構築を目的とする団体)により策定されたインターネットを通じて地図情報を配信するための規格。WMSよりもサーバー負荷が少なく、航空写真などのデータを効率よく配信することに適し広く普及している。[参照元に戻る]
◆ウェブアプリケーション
ウェブブラウザー上で処理を行うプログラム。利用者の端末に特別な追加ソフトが不要で、多様な利用環境に対応するプログラムを作ることが可能。[参照元に戻る]



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